セミコンポータル
半導体・FPD・液晶・製造装置・材料・設計のポータルサイト
セミコンポータル

パナソニックがテレビ事業を大幅縮小するものの成長のエンジンが見えない

|

先週は、パナソニックがプラズマテレビ事業から撤退を決め、液晶テレビを外部から調達するといった、テレビ事業大幅に縮小する計画を3月18日の日本経済新聞が明らかにした。今年1月のInternational CESにおいてパナソニックは民生機器から産業機器へのシフトを発表していた。アップルやグーグルがテレビ事業に参入する中、パナソニックはどこへ行くのか。

パナソニックのテレビ事業は2009年度に1兆円を超え、ピークとなったが、15年度にはその半分以下に縮小する見通しだ、と日経は伝えている。プラズマテレビの新規開発はすでに中止しており、現在の生産も14年度をメドに徐々に中止していくという。液晶については自社生産を減らし、外部調達比率を7割に高め、韓国のLG電子などからの調達を増やしていくとしている。

パナソニックはソニーと同様、テレビ事業に力を入れてきた。デジタルテレビ時代になると、もはやデジタル放送受信機の生産では韓国のサムスンやLGに対してコスト競争力がなくなっていた。日本組は赤字の連続で、業績はみるみる落ちてきた。その一方で、アップルやグーグルは独自にテレビ事業へ乗り出す構えを見せており、テレビが大きな市場になりうる可能性も秘めている。「近未来のテレビは、スマートフォンやタブレットと同じコンテンツを楽しめるようになり、携帯端末との違いは単にスクリーンの大きさだけになる」、というトレンドが世界的に出てきており、テレビ事業を持ち時代に対して速く変化でいる組織こそ、近未来の勝利者になり得るのである。

いわばファブレスのアップルやグーグルがスマホの機能を採り入れたテレビを設計しEMSが生産することは時間の問題である。米国にはビジオ(Vizio)やコビー(Coby)といった新しいファブレスのテレビメーカーが伸びてきている。テレビに織り込む機能、後から機能を追加できるアプリとその入手しやすさ、そのビジネスモデルなど、これからのデジタルテレビは、スマホやタブレットに近い様相を見せてくる。この市場をパナソニックはみすみす手放そうとしている。

新聞ではパナソニックがこれからどこに進もうとしているのか明確ではない。とにかくテレビ事業を縮小するとしか伝えていない。また半導体やリチウムイオン電池などの成長産業も縮小すると18日の日経は伝えている。「半導体は国内5工場のうち、赤色レーザーなどを手掛ける岡山工場(岡山県備前市)での生産を終了する。発光ダイオード(LED)用半導体を生産する鹿児島県日置市の工場を14年に閉鎖するほか、大規模集積回路(システムLSI)の設計開発を富士通と統合するなど、事業縮小にかじを切っている」と伝えている。

その一方で、19日の日刊工業新聞によると、パナソニックはGaNパワートランジスタを開発し、高効率パワー半導体市場に乗り出すという。SiのIGBTでは実現できない、低オン抵抗と高耐圧、高速性能が得られるGaNやSiCの小さな市場にプレーヤーがたくさん集まっている。先行するインフィニオンやローム、三菱電機、デンソーに加えて、パナソニックや東芝、シャープもGaN・SiCパワー半導体市場に乗り出す。ここはしょせんパワートランジスタの市場にすぎないため、数1000億円を超える市場にはなりにくい。

先行するSiC・GaNパワー半導体メーカーの問題点はまだ安く作れないことだ。だからこそいまだにSiCのMOSFETやJFETはSiのIGBTに替わるパワートランジスタにはなりきれていない。低コスト技術の勝算がなければ、この市場では成功しない。残念ながら新聞報道では、SiC・GaNパワー半導体を安く製造する方法については全く触れていない。この市場にパナソニックが参入してもどうやって市場を勝ち取れるかの道筋が全く見えない。パナソニックは迷走し続けているようにしか見えない。

迷走はシャープも同じだ。シャープがクアルコムから「次世代ディスプレイ量産技術の確立」というテーマで100億円の出資を受けるという計画だった。出資額は当初50億円、2回目に残りの50億円が支払われるはずだった。ところが、19日の日経によると、この払い込みが当初の3月29日から遅れるらしいのだ。次世代ディスプレイの量産技術のメドがたたないばかりか、業績が低迷していることも関係しているようだ。シャープは新技術を確立するという当初の約束で出資を受けたのであり、クアルコムの資金がそのテーマに使われているはずである。クアルコムとしては新技術を量産に使いたいから出資したのであり、万が一そうではないのなら2回目の出資はおろか、1回目の資金の返却を求めるかもしれない。

資本を増強したいからといって、出資を仰ぐだけで当初の目的に使わないのであれば詐欺行為と受け取られる恐れがある。シャープがそのようなことをしているとは思わないが、次世代ディスプレイの量産技術に進展がないのであれば、クアルコムにとっては投入した資金が無駄になる。なぜ、どのように量産技術が確立できなかったのか、シャープはそれをクアルコムに示す必要がある。

(2013/03/25)

月別アーカイブ

Copyright(C)2001-2024 Semiconductor Portal Inc., All Rights Reserved.