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JEITAがTPPへの交渉参加表明を歓迎すると発表

JEITAは、環太平洋経済連携協定(TPP)への交渉参加表明を歓迎すると3月15日に発表した。これは安倍内閣がTPPへの交渉参加を表明したことに対する、JEITAの姿勢を示したもの。先週のニュース関係では、ルネサスモバイルについても触れる。

JEITAのTPP交渉参加表明について新聞はほとんど採り上げていなかったが、業界メディアであるTech-On!やマイナビニュースはこのニュースを掲載した。これまで国会内外では、TPP交渉へのテーブルにつくことに反対する報道が多かった。特に自民党の票田である農協団体からの突き上げ(デモや陳情のシーン)がテレビ・新聞でも大きく報じられた。しかし、このグローバル時代に外国と交渉の話し合いをせずにどうやってこれからの日本を成長させていくのであろうか。

ともかく話合いの場につくことがまず重要であり、当然だが日本の国益にかなった主張をしていくことになる。反対勢力は農協だけではない。これまでグローバル化の意識がほとんどなく「TPP反対」を表明してきた所は、TPP交渉の場に加わることに反対してきたのである。テーブルについて話し合いをすることは、大人の社会としてはごく当たり前のことではないだろうか。

JEITAの中鉢良治会長が交渉参加表明を歓迎したことは、日本は成長していくという意思を示したことでもある。日本からの輸出品に関税を掛けることのないように政府はしっかり交渉に臨んでほしい。自由貿易を促進することで企業が強くなり、経済も国も豊かになることは、これまでもサッチャー首相やレーガン大統領などが証明してきた。米国の自動車産業は日本のTPP交渉参加にむしろ反対する姿勢を見せている。これまで日本製自動車に2.5%の関税をかけてきたが、これを撤廃させられることを懸念して反対しているのである。しかし、GMがかつて倒産したように米国の自動車は競争力を失ってきている。

日本では自動車に関税がかかっていないため、海外勢は非関税障壁を問題視してきた。日本はむしろ、米国や欧州、アジア諸国の輸入関税を取り払う方向で話を進めていくべきであろう。JETROによると、日本ではテレビにも関税はかかっていないため、韓国勢のテレビが入ってきやすい環境にある。日本は全ての国々へ、テレビの競争力を取り戻すためにもエレクトロニクス製品の関税撤廃をTPPテーブルで訴えるべきであろう。

欧米がよくやる手ではあるが、もし安売りの製品が輸入されることがあれば、不当なダンピングであることを証明し訴えて関税をかければよい。この手法は欧米を見習うべきだ。関税をゼロにする場合には引き換え条件が必ず国益に合致するように提案すべきであり、相手国から言われたままでは国益に反することが多い。日本がグローバル化をさらに進めて行く上で、政府には国益を第一に考えた交渉を望む。

先週、ルネサスからルネサスモバイルの売却を含む「検討」に入ったというニュースリリースが流れた。新聞はこれを採り上げたが、産業革新機構の元で再建することが決まった以上、利益の出ていない所は売却ないし閉鎖される。革新機構は目先の利益でしか判断しないが、LTEモデムを開発しているルネサスモバイルは、デザインインをすでに十数件も持ち、そのうちの6〜7割が海外からの受注だとセミコンポータル主催のセミナーで述べていた。日本も含めて四カ所のデザインセンター間の公用語は英語。文字通りグローバルな企業である。ところが、新聞は違った報道をしている。13日の日経は「内需が減る一方、海外でも受注を獲得できず約2年間で合計450億円の赤字を出していた」とし、14日の日刊工業新聞は「最大の膿がルネサスモバイルであることだけは確かだ」と断定している。

ファブレスというルネサスモバイルは、デザインインという開発案件がある以上、最初の数年間は赤字になるはずだ。デザインインからテープアウト、さらに量産へと進んで初めて収入が入るのがファブレスビジネスである。デザインインからテープアウトまでは収入がないことはファブレスビジネスの常識であろう。収入が入るのはこれからである。今このファブレス事業を売却あるいは閉鎖するのは、ファブレスビジネスを全く理解していないとしか思えない。

さらにLTEは世界で40以上もの異なる仕様が存在する。このため、効率よく設計するためのモデムにはプラットフォーム戦略が必要だ。これを構築するためにも時間がかかる。LTEは米国、日本、韓国が先進国だが、欧州やアジア、中南米などはこれから始まる。LTEモデム開発が出遅れている訳ではない。筆者は、LTEモデムのファブレスメーカーから、来月取材提案をもらっている。

ただし、ルネサスは迷走しているともいえる。LTEなど通信技術は、受信(LNA+ミキサー)から、ベースバンド(モデム)、送信機(ミキサー+パワーアンプ)という大きく分けて3つのブロックからなるが、ルネサスはそのうちの送信機を村田製作所へ売却した。LTEで世界を制覇しようとすれば、受信・送信(RF)回路を持つことは必須であろう。クアルコムもブロードコムも元々はモデム技術の企業だったが、RFも持つようになり、世界をほぼ制覇している。

最後に、日本市場に期待するというニュースも相次いでいる。フリースケールセミコンダクタの日本法人の社長が韓国法人社長も兼ねることになった。エリクソンの日本法人社長も北東アジアを日本から管理することになった。またSTマイクロエレクトロニクスのCEOカルロ・ボゾッティ氏は「日韓の売り上げを2018年までに倍増させたい」と日本市場に期待していることを12日の日経産業新聞が伝えている。

(2013/03/18)
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