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ゲーム/デジカメ専用機からスマホへのメガトレンドを捕まえた好調ムラタ

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先週は、国内部品メーカーがスマートフォン市場に向け積極的な攻勢に出ているニュースが目立った。しかも、その動きはスマホ/タブレットの成長という大きな流れに乗っているように見える。

2月13日の日本経済新聞は、デジタルカメラ、ゲーム機、パソコンの販売台数が減り、スマホが伸びていることを伝えた。富士フイルムホールディングスや、ソニー、パナソニックはデジカメの販売台数を下方修正している。富士フイルムは2013年3月期(今期)のカメラ販売台数を1月末に1100万台から1000万台弱に修正した。特に昨年の10月以降からの販売が厳しくなっているという。ソニーは今期3回、パナソニックは2回、それぞれ下方修正している。デジカメ部品のシャッターを製造している日本電産コパルは需要減で12年10〜12月期は営業赤字に転落したという。

ソニーでは携帯ゲーム機の販売台数が期初計画の4割にとどまり、12年10〜12月におけるゲーム事業の営業利益は前年同期比86%減と落ち込んだとしている。任天堂も携帯型ゲーム機の販売台数を引き下げ、今期は2期連続の営業赤字の見通しだという。アルプス電気は、パソコンやゲーム機向け部品の減少は底が見えない、とまで言っている。

これに対してスマホは好調で、コンデンサをアップルとサムスン両方に納入している村田製作所(ムラタ)や、タッチパネル向け光学フィルムを出荷している日東電工は、12年10~12月に大幅増益を生み出したとする。ムラタは、スマホなどのデジタル製品に欠かせない、コイル生産の東光と、水晶振動子生産の東京電波の2社を傘下に収めると発表した。東光にTOB(株式公開買い付け)を実施、東京電波には株式交換で子会社化する計画だ。

ムラタは12年3月に、ルネサスエレクトロニクスのパワーアンプ事業部門とルネサス東日本セミコンダクタ長野デバイス本部を買収しており、ワイヤレス技術の全てを握ろうとしている。単なるスマホやタブレットの通信モジュールだけではなく、M2MやIoT(Internet of Things)など将来性のある市場に向けた通信モジュールに力を入れ、成長戦略を明確に打ち出している。これによって、スマートホームやスマートシティ、ヘルスケア、IoT、電気自動車など将来性にあふれた応用分野全てに使える通信モジュール技術をソリューションとして提供できる。ムラタは単なる「部品屋」の視点ではなく、将来システムをにらんだ視点を持ち、B2B向け通信モジュールで未来社会を支配しようとしていると言っても過言ではない。

また、スマホやタブレットが好調で、デジカメや携帯ゲーム機などの専用機がスマホに食われるというメガトレンドが明確になってきており、セミコンポータルが13年2月に発行した「エグゼクティブサマリーレポート」においても、この潮流を紹介している。

スマホやタブレットのアプリケーションプロセサには、薄い高密度実装の半導体パッケージが使われている。薄型のノートパソコンにおいても、樹脂基板のパッケージが使われており、この市場に京セラが本格参入すると15日の日経が報じている。生産子会社の京セラSLCテクノロジー(本社は滋賀県の野洲市)の京都府綾部工場の敷地内に建設する。この樹脂基板はこれまでイビデンの一人勝ちだった。イビデンはインテル向けに樹脂基板をプロセッサのパッケージ用として納入してきた。京セラは、パソコン用の樹脂基板パッケージよりもさらに薄い、フリップチップのCSPパッケージ基板を提案することで、スマホやタブレットのアプリケーションプロセッサへのパッケージ基板としてのシェア獲得を目指す。アプリケーションプロセッサの設計・販売はクアルコムやサムスン、アップル、nVidiaなどが成功を収めており、こういったプロセサメーカーが顧客になる。

17日の日経にはロームの沢村諭社長とのインタビュー記事が掲載されている。かつては営業利益率で2桁を誇っていたロームが、2013年3月期には2期連続の最終赤字を計上する。アナログ技術は開発と製造との擦り合わせが重要で垂直統合モデルが優位だ、と同氏は述べており、アナログ部分の重要性がなくならない、としている。ただ、国内電機にフォーカスしてきたことが裏目に出て、グローバル化が遅れたことが敗因だと分析している。すでに韓国や台湾に技術拠点を置き、彼らとの深い関係を築く努力をしているが、アナログ半導体での成果が目に見えるまでに時間がかかりそうだ。

(2013/02/18)

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