パソコンからスマホ/タブレットへの大潮流、企業業績に大きく反映
先週は、海外企業の決算(2012年第4四半期:10〜12月)の発表が相次ぎ、エレクトロニクス業界はメガトレンドの潮流そのものが業績として表れた。すなわちパソコンや従来型の携帯電話(フィーチャーフォン)から、スマホやタブレットへの転換が遅れた企業の業績が悪かった。
アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)は4四半期連続の減収であり、MPUの売り上げは37%減、GPU(グラフィックプロセッサ)の売り上げも15%減少という結果になった。パソコンが主要な市場であるDRAMメーカーも軒並み業績が悪化している。台湾のDRAMメーカー、南亜科技は6四半期連続の赤字を計上、エルピーダのパートナーだった力晶科技(Powerchip)は債務超過に陥り株式上場廃止に追い込まれた。2012年における南亜の最終赤字額は360億台湾元(約1100億円)だった。今後はマイクロンの支援を受けるというが、パソコン事業の成長が止まっているため、脱コモディティDRAMをどういう形で図っていくか、知恵の絞りどころだろう。
パソコンメーカーのデルに、マイクロソフトが出資するという米国メディアの報道を24日の日経産業新聞が流した。マイクロソフトがデルに10〜30億ドル出資し、株式非公開(上場廃止)にする可能性があるとしている。マイクロソフトは、デルのCEOであるマイケル・デル、投資会社のシルバーレイクと話し合いに入っていると報じられた。
一方で、スマートフォンは好調だ。半導体購入額ではサムスンがアップルを抜いて2012年はトップに躍り出た、と市場調査会社のガートナーが発表した。アップルはiPhone5のおかげで購入額は13.6%増の214億ドルに増えたが、サムスンはそれ以上に増えた。サムスンの半導体購入額は28.9%増の239億ドルにも達した。パソコンメーカーのヒューレット・パッカードやデルはどちらも購入金額が昨年より13%も減少したとしている。
ウェーハからチップに切り出すダイシング機械やブレードの大手、ディスコの売り上げは2012年10~12月期には、前年同期比3%増の157億円、利益は同20%増の4億円という結果だった。スマホ向け半導体の需要拡大を受けたものと、25日の日経は報じている。
携帯電話業界は、フィーチャーフォンからスマートフォンへの乗り換えに遅れたテキサス・インスツルメンツ(TI)が7四半期連続の減収になった。TIはこれまでノキアにモデムチップを納めていたが、スマホに出遅れたノキアに引きずられた格好になった。2012年第4四半期(10〜12月)に主力のアナログ半導体が前期比2%減の16億6900万ドルにとどまり、組み込み用半導体が同6%増の4億6900万ドルと好調だったが、通信用半導体の売り上げは同56%減の3億1700万ドルに急落した。スマホではクアルコムやサムスン、アップル、nVidiaのアプリケーションプロセッサが強く、TIのOMAPプロセッサの存在感が薄れている。
国内半導体の工場閉鎖などにより、半導体製造装置の中古取引が活発になっている、と23日の日経が報じた。半導体生産ラインを一括処分し、数100台単位で売りに出す例が増えているという。ただ、中古装置市場は一過性のものではなく、新規の装置が高額商品であるだけに、今後も引き続き中古ビジネスは堅調に推移すると見られている。
最後に、ボーイング787機、愛称ドリームライナーのバッテリ事故が相次いでいる。原因究明にまだ時間がかかりそうだ。航空機や自動車向けのリチウムイオンバッテリは、スマホ向けとは違い、多数直列接続により昇圧して使うため電子回路による充放電制御が強く求められている。充放電を繰り返すうちに直列接続されたセル1個1個の電荷がバラつくため、セルの電荷を均一にするような制御が欠かせない。これまでは充電の遅いセルに合わせて、先に充電が終わったセルから電荷を捨てることでバランスをとってきた。このセルバランスに問題があるのでは、と疑う半導体関係者は多い。もちろん、セル自体の問題も否定はできない。逆に、半導体産業にとっては、バッテリが壊れないようなセルバランス技術を開発するチャンスでもある。