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アドバンテスト、攻めの経営で増収増益、受注減も認識

アドバンテストが脱DRAMテスターへ積極的に動いている。フォトマスク欠陥検査SEMのE5610や測長SEM E3310といった電子顕微鏡を利用した装置を相次いで発表している。11月15日、19日の日経産業新聞が報じた。

アドバンテストはかつて、DRAMテスターを主力製品として販売してきたが、DRAMの未来が先細ることから、脱DRAMを掲げて、SoCテスターメーカーだったVerigyの買収や、テラヘルツやバイオの計測器の開発などを手掛けてきた。今年のアドバンテスト展ではDRAMテスター以外の技術をさまざま展示していた。DRAMには32ビットの壁(4GB以上はアドレスできない)があるため、32ビット組み込みシステム向けのDRAMビジネスはあまり期待できない。もちろん、64ビットパソコンやサーバなどには依然としてDRAMの容量増加が求められるが、これまでの32ビットシステムと同じような大きな市場は期待できない。

アドバンテストの未来に向けた攻めの経営戦略には目を見張るものがある。先月発表された、第2四半期の業績は増収増益だった。売上額は392億円となり、前期比17.5%増、前年同期比12.6%増と好調だった。

さらにアドバンテストは、スマートカードICやマイコン向けのテスターT2000を12月5日から幕張メッセで開かれるセミコンジャパンで展示すると発表している。日経産業で採り上げられた上記の2機種以外にも20nm未満のデザインルールの半導体チップを描画できる電子ビームリソグラフィ装置F7000を発表している。

一方で、第2四半期における同社全体の受注額の落ち込みが大きく、前期比45.2%減と、テスター市場にブレーキがかかっていることも認識している。セミコンジャパンでさまざまな電子ビーム応用テスターやリソグラフィ装置を発表するのは、こういった一時的な不況に対処するためのテクノロジーのデモンストレーションといえる。すなわち、不況後の成長をにらんだ攻めの手といえる。

もう一つ攻めのニュースとして、シャープがスマートフォンやタブレット向けのカメラモジュールを月産2000万個、と供給能力を25%上げることを15日の日刊工業新聞が伝えた。日刊工業によれば、供給能力は、数十億円を投資してベトナムにおける工場を増強することによって上げるという。シャープの開発工場は福山事業所にあり、生産委託先としてベトナムおよび中国に工場を持つ。組立産業は製品原価に占める人件費比率が比較的高いため、できるだけ人件費の低い地域で生産したい。主力工場をベトナムに持っているのは、チャイナリスクをうまく回避しながら人件費を抑えるという面白い戦略といえよう。シャープは、開発に専念し、次々と先端テクノロジーを開発すると同時に国内でパイロット生産、少量生産に徹することで、量産の得意な地域とコラボレーションしようとしている。

最後に、富士通(富士通セミコンダクター含む)とNTTドコモ、NECの3社が共同出資するアクセスネットワークテクノロジがベースバンドチップを開発した、と14日の日本経済新聞が報じた。このチップはLTE(ドコモのFD-LTE方式)とW-CDMA(いわゆる従来の3G)、さらには中国やインド、ソフトバンクが利用するTD-LTE方式のモデムにも対応するというマルチなベースバンドチップである。これまでのチップよりも2~3割消費電力が少ないとしている。LTEはデータ通信のみの規格であり、音声通信には3G(回線切り替え方式)を利用するため、ベースバンドチップとしては3GとLTEを当面共存させる必要がある。来年夏の富士通製の端末に、この開発したチップを搭載していく計画だという。

LTEのさらに先には、かつてドコモが4Gと称したLTE-Aや、LTEに音声を載せるVoLTE(Voice over LTE:ボルテと発音)技術へ向かう。すでにエリクソンやノキアシーメンスなどはVoLTEに向けた開発を行っている。この時代には、携帯電話の通話方式がVoIP方式だけになりそうだ。

(2012/11/19)
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