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ソフトバンクの米通信企業買収の分析記事相次ぐ

先週のニュース解説で、ソフトバンクが米国通信オペレータ第3位のスプリント・ネクステル社を買収するという第一報を伝えたが、先週の新聞はその買収について分析議論する記事が相次いだ。国内では、GaN化合物半導体結晶をLEDやパワーデバイス向けに生産するニュースが相次いでいる。

日経産業新聞は16日の朝刊で、孫正義ソフトバンク社長の米国企業買収が3度目の正直になるかという記事を掲載した。日刊工業新聞は同日、国内のスマートフォンメーカーの米国進出やLTEの事業規模拡大により、インフラ系ネットワーク機器のコスト削減を図れるというメリットを紹介した。

日経産業では、かつて孫氏はIT系の見本市「コムデックス」事業、出版のZiff-Davis社の買収を行ったが、いずれも失敗に終わった、という苦い経験や、ヤフーへの投資で大きく稼いだ経験など、米国における同氏の足跡を追った。同氏は英国の通信オペレータであるボーダフォン日本法人を買収、ソフトバンクとして通信事業に参入した。

ソフトバンクの他国ビジネスへの参入は、日本の通信オペレータとしては初めての試みに見えるが、世界ではそれほど珍しいことではない。かつて英国の通信オペレータのボーダフォンが日本市場へ参入したことがあったが、彼らは日本だけではなくドイツやイタリア、スペインなど多数の国に進出している。ドイツのT-モバイルも英国、米国へ進出している。ソフトバンクがスプリント・ネクステルを買収することは米国では日本ほど大きな話題にはなっていない。米国1位のベライゾン・ワイヤレスの親会社ベライゾン・コミュニケーションズが業界にとってむしろ好ましい、と言ったコメントを、20日の日経新聞は載せている。米国では、1~2社だけが市場を独占することを嫌い、独占禁止法を守ることが市場経済を発展させる上で重要との認識がある。このため、いろいろな企業が参入することは歓迎されている。

日刊工業は、日本のスマホメーカーが米国で販売するという展開をソフトバンクに期待している、という記事を載せているが、ソフトバンクが米国の通信オペレータになったからといって、日本製スマホが米国で売れるかどうかは別問題。日本製スマホに魅力がなければサムスンのギャラクシーやiPhoneなどに勝てるわけがない。

一方、アップルがiPhone販売を機にiTunes StoreやApp Storeなどの新しいビジネスモデルで通信オペレータのネットワークを利用し、音楽や書籍など商品をネット販売しているが、通信オペレータにとってこのことは面白くない。「われわれはドカン屋にはなりたくない」、と通信オペレータは事あるごとに述べており、ネットワークの使用料を取るだけではなく、自らもサービスを提供しようと考えている。

欧州の通信オペレータが「脱ドカン屋」を見据えて、RCSe(Rich Communication Service)と呼ぶサービスを行うための規格作りに動いている。これは、アップルがアプリでビジネスを拡大していることに対抗するもの。この規格に基づいて、ビデオ共有・ファイル転送・グループチャットをアプリなしで携帯やスマホの基本機能に加えることを、携帯電話メーカーに要求している。日本のスマホメーカーがRCSe規格を備えた機能を搭載することが、欧州の通信オペレータに採用される点で有利に働く。いずれ米国の通信オペレータが搭載する可能性もある。このようにグローバルな視点で規格を見ない限り、日本の携帯・スマホメーカーはガラパゴスから抜け出せない。

もう一つ先週のニュースで気になった記事は、GaN半導体基板の量産をベンチャーのAEテックと、三菱ケミカルホールディングスが相次いで発表したもの。19日の日経産業では、AEテックは従来のサファイヤ基板ではなくGaN結晶を一つの工程だけで製造できる技術を持つという。東北大学の八百隆文名誉教授から得た特許を元に製造装置を開発した。LED用にGaNを成長させる場合、サファイヤ基板を使うことが多いが、その上にバッファ層やGaNアクティブ層をエピタキシャル成長しなければならない。これまではLEDメーカーがサファイヤ基板からGaNを成長させるが、GaN基板であればLEDやパワーHEMTの製造工程は短くなる。22日の日経によると、三菱ケミカルは水島事業所において4インチGaN結晶基板を2013年4月から月産1000枚の生産能力の設備で試験生産するという。2013年秋までに同じ生産設備を1台追加導入し、能力を2倍以上に引き上げるという。

(2012/10/22)
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