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iPhone 5が予定通り発表され、サムスン製部品が減少

先週は12日(日本時間13日)にアップルのiPhone5が発表されたというニュースが世界中を駆け巡った。日本ではあまり批判記事を見ないが、期待はずれという声は海外では多い。iPhone4Sまでは、アプリケーションプロセッサや、液晶パネル、メモリなどサムスンの部品が大量に使われていたが、iPhone5ではサムスン依存が薄れてきた。

図 発表されたiPhone 5はアイコン1列分画面が長い

図 発表されたiPhone 5はアイコン1列分画面が長い


14日の日経産業新聞や日刊工業新聞では、今後アップルがサスムン製部品を外すのではないか、という推測記事が立て続けに出た。サムスンがアップルに和解金を支払うことで米国内での裁判は決着した。この裁判に嫌気をさしたのかどうかわからないが、アップルはサムスンから部品を調達することを避けようとしているようだ。iPhone 5用のアプリケーションプロセッサA6は設計に2~3年要するため、当初設計・製造を依頼したサムスンを替えるわけにはいかない。液晶やメモリなどのコモディティ商品は、サムスン以外から調達したもようだ。液晶は、LGディスプレイやジャパンディスプレイなどから調達し、DRAMメモリはエルピーダとSKハイニックス、NANDフラッシュメモリは東芝とSKから調達したと日経産業と日刊工業は報じた。

チップコンデンサやチップ抵抗、フィルタなどの受動部品に関しては、村田製作所やTDKなどの部品メーカーが強く、iPhone 5にも部品を納入していると日経産業は述べている。村田は最近、0201部品を新製品として発表した。チップ部品の大きさが0.25mm×0.125mmとこれまで最小の0402部品の1/3程度のサイズになった。スマートフォンメーカーは、バッテリーを少しでも長持ちさせたいために基板に搭載する部品の小型化要求を限りなく続けてきた。世界一の最小部品は、次のiPhoneやスマホに採用される可能性が高い。もちろん、部品をハンドリングする、マウンターなどの実装機をその前に揃える必要はある。

14日の日経によると、iPhoneの前機種である4Sは、発売された2011年10月から2012年6月までの9ヵ月間で9700万台を売り上げたという。月産1000万台以上のペースである。iPhoneはこれだけの量を生産しなければならないため、1000万個量産に見合った技術でなければ採用されない。シャープの液晶に開発された酸化物半導体IGZOは4つの元素からなる化合物半導体であるため、性能は良いが均一性、再現性、歩留まり、信頼性の点で量産することが極めて難しい。結局、iPhone5には採用されず、ビジネス機会を失ってしまった。

鴻海精密工業がシャープに出資することに対して、IGZOトランジスタを使う液晶技術が流出するのではないかという懸念があるが、シャープが量産できないのであれば、鴻海に委ねるしか生き延びる方法はないだろう。少なくとも鴻海は大量生産技術のエキスパートである。鴻海がIGZOの量産技術を開発してくれるのであれば、シャープは新技術の開発に専念できることをむしろ喜ぶべきではないだろうか。これこそ、復活へのビジネス役割分担した新しいコラボレーションになるかもしれない。

半導体分野で気になるニュースとして17日の日経に掲載されたが、ドイツのテレフンケンセミコンダクターズが、日本のファブレスおよびファブライト企業に対してファウンドリサービスを開始すると発表した。同社がルネサスの米国工場を買収し、ファウンドリビジネスを推進する。現在は、ルネサス向けにマイコンをファウンドリ生産しているが、ファウンドリとして独立することでビジネスを広げていく。東芝出身の川端章夫氏をCEOアドバイザーに迎え、日本での受注活動を任せるとしている。

新生ルネサスの新しい半導体製品として、NFCを内蔵したワイヤレス給電チップが発表された。NFCは個体の認証として使うため、スマホや携帯電話に組み込めば、自分の携帯電話だけを充電できる。他の製品が誤って充電されることはない。11月からサンプル出荷をはじめる。

(2012/09/18)
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