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KKRのルネサス出資、アップル-サムスン訴訟、富士通とJデバイスの取引

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先週は、米投資ファンドのKKR(コールバーグ・クラビス・ロバーツ)がルネサスに対して1000億円を出資して経営権を取得するというニュースが流れた。最近は、強引なファンドの手法を嫌い、半導体企業側が警戒していた。アップルとサムスンとの訴訟問題の影響、富士通・ジェイデバイスとの取引についても考察する。

これまでファンドが半導体産業に出資した例として、KKRによるNXPセミコンダクタへの出資がある。フリースケールにはブラックストーン・グループとカーライル・グループ、パーミラ・ファンズ、テキサス・パシフィック・グループ(TPG)が出資、東芝セラミックス(現コバレントマテリアル)にカーライル・グループが出資した。最近ではエルピーダに対して、TPGや中国政府系ファンドなどが再建提案を行っている。

今回のKKR・ルネサスのニュースの第1陣は8月29日の日本経済新聞に掲載されたが、中身が事実かどうだろうかと思案しているうちに、朝日新聞や読売新聞にも掲載された。KKRは、1000億円を本当に出資するのだろうか。金額を下げることはないだろうか。デューデリジェンスと称して、ルネサスの競合企業にも工場見学を誘わないだろうか。というのは、エルピーダの場合、当初買収の手を挙げていたSKハイニックスは広島工場を見ることが目的だったという見方もあったからだ。KKRは、ルネサスの企業価値をどのように見ているのであろうか。疑問は多い。

ルネサスにとっては、これまでの大企業同士の企業文化からファンドという全く異質な金融界文化が入ってくることになる。ファンドの要求は業界動向がどうであろうと毎年売上と利益を伸ばすことであり、ルネサス側としては半導体産業の動向や技術・製品の動向をどこまで理解してもらえるか不安であろう。筆者もファンドに経営権を握られた外資系出版社にいた経験から共感できる所が多い。ルネサスは成長戦略をもっと鮮明にし、インテルやクアルコムのような、独自の勝ち組半導体モデルを早く提示する必要がある。

もう一つ、日本の半導体にとってビジネスチャンスがやってくるかもしれないニュースがある。それはアップルとサムスンの特許訴訟である。アップルがサムスンに対して仕掛けている訴訟は世界各地で論点が違う。米国では主にデザインに関して、サムスンがアップルにお金を支払うという判決が出た。アップルの本当の敵はグーグルだと言われているが、現実のビジネスとしての敵はサムスンだろう。

しかし、アップルはサムスンから心臓部となるアプリケーションプロセッサやNANDフラッシュメモリ、液晶、電池など重要な部品を供給してもらっている。これらの部品供給元をいきなり替えるわけにはいかない。他のメーカーには供給能力という点で問題があるからだ。例えば、シャープの新しい酸化物トランジスタを利用したTFT-LCDは、次世代のiPhoneやiPadに使われるのではないかという期待を受けながらも、残念ながらアップルの要求する膨大な数量を作ることができない。アプリケーションプロセッサも同様で、アップルに合わせて大量に作り、さらに自社のスマートフォンにも組み入れて量産効果を得るというやり方をまねできる半導体メーカーは今のところ、サムスン以外ではTSMCくらいしかなさそうだ。日本の半導体メーカーは残念ながら攻めの投資を躊躇している。しかし、考え方を変えれば、これはチャンスにもなりうるだろう。今後の成長戦略の議論に載せる価値はあると思う。

最後に、富士通が半導体の後工程を手放すというニュースが流れた。これは富士通がプレスリリースとして31日にメディアに流したもので、これによると富士通は後工程の宮城工場、会津工場、九州工場を、大分県にあるジェイデバイスに売却することを表明した。ジェイデバイスは、東芝の資本が10%入った後工程の専業メーカー。

富士通セミコンダクターの後工程工場は、100%子会社の富士通インテグレーテッドマイクロテクノロジが所有している。プレスリリースでは、「富士通セミコンダクターは、(一部省略)ファブライト型事業モデルを追求することにより事業基盤の強化と経営体質の改善に努めており、その一環として経済環境・事業環境の変化に対応した製造体制の最適化に継続的に取り組んでいます」と述べている。日経は、「富士通はITサービス産業へ軸足を移し、部品製造は切り離す戦略を鮮明にしている」、と述べているが、この一文が事実ならIBMがサービスを重視した戦略とは全く違う。IBMは自社のハードとソフトの資産を生かしてサービスやソリューション事業を強化してきたのであり、ハードを捨てたわけではない。富士通がハードを捨ててサービスへシフトするのなら、何をサービスの価値として提供していくのだろうか。サービス産業だけならほかにも強いIT企業は大勢いる。

一方、富士通の工場を購入するジェイデバイスでは、東芝や日本TIなどの後工程業務が多かった。しかし、大分の東芝工場は縮小、日本TIは工場を閉鎖するなど、暗い材料が多くなっていた。そのような折、富士通の宮城、会津、鹿児島の工場を購入できることは、後工程の請負企業としては絶好のチャンスであり、後工程専業ビジネスとして今後、富士通セミコンダクターからの注文も受けられる可能性が高い。

(2012/09/03)

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