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日本の製造業、製造プロセス離れが気になる

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先週、日本の製造業離れのニュースが続出した。ビッグニュースはなかったものの、小さなニュースを寄せ集めると、そのような動きが見えてくる。特に、半導体製造は数年前からファブライト戦略と称してモノづくりをやめていく傾向が出ていたが、先週のニュースはそれを加速するような動きともとれる。

DRAMの唯一の国内メーカーであったエルピーダメモリが去り、製造業という看板が消えた。同社坂本幸雄管財人は、社長も兼ねるという方式の会社更生の仕組みで再建を図ってきたが、マイクロンからの出資が完了した後、退任する意向を固めたというニュースを22日の日本経済新聞が報じた。4000億円を超える債務を返済しながら再生の道筋を図ることが本来の会社更生法であるが、マイクロンからの出資が得られれば、そのメドがつくと判断したのであろう。

DRAMなどのメモリ事業は、量産できる程度のボリュームがあるため、垂直統合型のビジネスモデルが成り立つ。生産ラインに投資する企業はNANDフラッシュの東芝とエルピーダだけだが、今後は東芝だけになってしまうのか。DRAM専門のビジネスを手掛けてきたエルピーダの国内工場はどうなるのか、今後マイクロンに委ねられることになる。

HKMG(ハイkメタルゲート)プロセス向けの高誘電材料のHf有機化合物材料を生産しているADEKAは、日本での生産を韓国へ移管する。ADEKA Koreaの生産能力を3倍に増やす、と22日の日刊工業新聞は伝えている。日本の拠点は次世代材料の開発に力を入れる。高誘電材料はDRAMのほか、28nm以降のプロセッサにも使われるが、インテルは40nm世代から使っているとされる。ADEKAはまた、半導体用のパッケージ基板のフォトレジストも生産している。パッケージ基板では、回路線幅が一般のプリント基板(微細な線幅で100μm)よりもずっと細い20~30μm用で垂直に加工できる材料に力を入れており、半導体産業への係わりを深めているが、海外需要が多くなっている。

台湾のUMCの日本法人であるユー・エム・シー・ジャパンが解散し、千葉県館山市にある工場を閉鎖することになった。2011年12月期の純損益が35億7100万円で8期連続赤字となり、回復は見込めないと判断、解散を決めた。工場の従業員602名は解雇になる。ここでもモノづくりが一つ日本からなくなることになる。

国内の動きに対して、海外の製造工場での設備投資は活発だ。韓国のサムスンは、スマートフォン用のアプリケーションプロセッサを量産している米国テキサス州オースティン工場に40億ドルを投資すると22日の日経は伝えている。日経によるとNANDフラッシュのラインをプロセッサのラインに切り替えるという。国内の投資に関するニュースはほとんど流れないが、韓国、米国、台湾など海外の製造工場に対する投資のニュースは多い。

一方で、国内モノづくり拠点を支援する動きもある。みずほコーポレート銀行と三菱東京UFJ銀行がシャープに総額2300億円を融資すると日刊工業は報じた。今後銀行はシャープに再建策を求めていく考えだが、全く新しい再建策を打ちたてられるかどうかが正念場となる。

成長している分野では攻めていく。ソニーがスマホ需要を見込んで、CMOSイメージセンサを拡大する、と21日の日経は伝えた。面積を従来の3~4割小さくした新型イメージセンサを開発、製品化した。スマホは1台当たり2個のカメラを使う方向に向かっており、イメージセンサの需要は多い。ソニーは現在23%の世界シェアを30%に持っていく構え。

(2012/08/27)

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