Semiconductor Portal

HOME » セミコンポータルによる分析 » 週間ニュース分析

テクノロジードライバ、スマートフォンに力を入れる中国

今や、エレクトロニクス技術のテクノロジードライバがスマートフォンやタブレットになったことは誰も否定できないだろう。先週はこのスマホに関するニュースが相次いだ。しかも、その中心に位置する地域は中国だ。

図 民生エレクトロニクスショーのCESでも存在感を示した華為

図 民生エレクトロニクスショーのCESでも存在感を示した華為


中国の大手通信機器メーカー(日本のNECや富士通に相当する業種)である、華為(ファーウェイ)技術は、広東省深せん市においてスマホでサムスン、アップルに続き3強になると宣言した、と4月26日の日経産業新聞が報じた。もともと通信インフラに強い同社は、スマホに加えて、企業向けの情報システムにも力を入れていくとしている。ちなみに2011年における全社売り上げの74%が、基地局やルーター、バックボーンなどの通信キャリヤ向けの設備である。携帯端末の売り上げは22%しかないが、伸びは対前年44%増を示している。企業向け情報システム事業となると全社売り上げのわずか4%しかないが、この伸びも対前年57%増と著しい。華為は、クアッドコアアプリケーションプロセッサを独自設計できる実力もMobile World Congress 2012で示しており、実際プロセッサ製品を展示した。

スマホは中国に限らず世界的に成長している分野だ。従来の携帯電話機(フィーチャーフォンと呼んでスマホと区別することが多い)を手掛けてこなかったアップルやRIM(リサーチインモーション)、HTCなどのメーカーの業績は良い。中でもアップルが24日に開催した決算発表会で、中国における売れ行きの好調さには驚いたと述べたことを26日の日経産業が伝えている。アップルの1〜3月での売り上げは対前年3倍の79億ドルだという。アップルのiPhoneなどの製品は、台湾本社の鴻海精密工業の中国子会社フォックスコンで生産されているが、iPhoneは中国での販売も好調なようだ。米国に出張してきた中国人に取材すると、偽物機には見向きもせず本物のiPhoneを求めるという。一方で、1000元台(1元は約13円)の低価格スマホも大手が製品化してきている、と27日の日経MJが伝えた。華為、レノボグループ、中興、モトローラモビリティ、HTCなどの大手が1999元以下のスマホを提供している。

これからのスマホの成長を受けて、クアルコムやnVidia、テキサスインスツルメンツ(TI)、などのアプリケーションプロセッサメーカーが28nmプロセスの新製品を発表している。この需要を満たすためTSMCは28nm生産ラインを増強する。12年の設備投資額を当初予定よりも3〜4割も多い80〜85億ドルに引き上げると、27日の日経産業新聞が報じた。28nmラインに13〜15億ドルを充てるという。

生産基地中国における人件費の高騰から逃れるため、ベトナムへの生産シフトも見られる。ノキアはベトナムに工場を建設、13年から製造に乗り出す一方、サムスンは既存のベトナム工場を強化する、と26日の日経産業が伝えた。京セラもスマホ用の電子部品の生産工場を13年中に稼働させるとしている。パナソニックも携帯電話用のソフトウエア開発用のR&D拠点を設けたという。

最後に5月1日の日経新聞は、エルピーダの広島工場を中国ファンドが買収するという提案を持ちかけていると報じた。DRAMにおけるモバイルとパソコンの市場を比べると使用される量は圧倒的にパソコンの方が多い。パソコンは32ビット機から64ビット機へと移行しており、最新のパソコンでは64ビット機が増えている。32ビット機では4Gバイトしか使えないが、64ビット機だとテラバイトをはるかに超える大きなメモリもアドレスできる。このため64ビットパソコンではメモリ容量に制限がほぼないと考えてよい。これに対してモバイル市場では、ほぼ32ビットシステムでできており、4Gバイト以上は要らない。その上、4個ないし8個(9個)のNANDフラッシュに対してDRAMは1個しか使われない。このためモバイルDRAMの市場は小さい。先進国ではパソコン需要は飽和しているが、中国やインド、中東、アフリカではパソコン市場はこれから成長していくため、DRAMも成長する余地がある。中国ファンドがエルピーダの工場を買収することは極めてまっとうな納得できる戦略であり、日本企業がDRAMにこだわる方が不自然で、こだわり過ぎると世界から取り残されてしまう恐れがある。

(2012/05/01)
ご意見・ご感想