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東芝、携帯電話を整理する一方で四日市工場の建設など攻めに転じる

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先週のニュースとして、NTTドコモと5社のエレクトロニクスメーカーによる半導体ファブレス会社の清算、2008年に世界の太陽電池セル生産世界トップに躍り出たドイツのQセルズ社の破綻、東芝の携帯電話事業を富士通へ売却、エルピーダメモリへの支援企業を巡るうわさ話、といった後ろ向きの話が多かった。そのような中、東芝がフラッシュメモリの新工場を四日市に増設という明るいニュースがあった。

東芝に関するニュースは先週多く、東芝の名前は特にエルピーダを巡る支援企業の候補の中に連ねている。4月5日のロイター通信は、支援企業選定の第1次入札で東芝が候補から外れた、と伝えた。その翌日、東芝は韓国のSKハイニックスと共同で支援に乗り出すことを日本経済新聞が伝えた。日経は東芝が韓国を訪問し、両社の折半出資で経営権を握るプランを提示したと報じている。このニュースを同日の朝鮮日報が報じ、SKハイニックスは提案の受け入れをまだ決定していないが、前向きに検討しているとしている。

メモリメーカーのハイニックスも単独では事業が立ちいかず韓国の大手通信業者であるSKテレコムの出資を受け、SKハイニックスと名前を変えたばかりだ。SKハイニックスはDRAMとNANDフラッシュの両製品を生産しており、米国のマイクロンや韓国のサムスンと同じような立場だ。エルピーダだけがDRAMしか生産していなかった。

ただし、DRAM、フラッシュとも第1位のサムスンの牙城を何とか崩したいという気持ちは、SKハイニックスやマイクロンにはある。特に韓国の中で、サムスンに対するLGや他の企業が持つライバル意識は極めて強い。90年代の韓国でLGを取材したあとに業界筋から「サムスンは日本に魂まで売った企業だ」という恨みにも似た強い声を聞かされた。グローバル化の先頭を行くサムスンに対して、LGやSKハイニックスがサムスンと手をつなぐとは今でもとても考えられない。ハイニックスと東芝が組むならサムスンに対するライバル競争は激化することは十分に考えられる。東芝はそこでどう対処していくか、東芝はこのことを認識しておく必要がある。

東芝が携帯電話事業を富士通に売却したというニュース(4月3日付けの日経)は、両社の合弁開発会社の富士通東芝モバイルコミュニケーションズの株式の中で、東芝が持っていた株式を富士通がすべて買い上げたもの。ここ数カ月、東芝のスマートフォン「レグザフォン」をはじめとする携帯電話事業を東芝は富士通へ徐々に移転していた。富士通は、これまでNTTドコモだけの携帯電話に、auの携帯電話も加えることができるようになる。米国のファブレス半導体nVidiaの最新モバイルプロセッサ、Tegra-3を搭載したレグザフォンは間もなくauから発売される。

東芝は撤退や支援などの業務だけではなく、積極的な攻めも開始した。4月4日の日刊工業新聞が報じたところによると、東芝は今年の夏にフラッシュメモリの新工場建設に着手する。増強するのは四日市工場の第5製造棟の2期工事分だという。1期分の工事は11年に終え稼働済みだとしている。サンディスクと共同運営している四日市工場の第5棟全体の両社の総投資額は5000億円以上だという。12年度に経常する東芝の半導体全体の設備投資額は11年度見込みの1600億円よりも上積みされると見ている。

NTTドコモが中心となり、富士通と富士通セミコンダクター、日本電気、パナソニックモバイルコミュニケーションズ、サムスン電子の5社が手を結びファブレス半導体メーカーを設立しようとしたが、このほど3月末までの当事者間での合意に至らなかったという理由で、合弁を解消したとNTTドコモが発表した。その準備会社である「通信プラットフォーム企画株式会社」を、6月をメドに清算する。LTEやLTE-Advanced (日本で定義された4G) などの新しい通信方式のチップを開発しようとしたが、LTE以降の新しい通信チップを開発する企業として、すでに国内にはルネサスモバイルがあり、海外でもIPを売る英コグノボ(Cognovo:参考資料12)などのベンダーもいる。共同会社という仕組みでは動きの速いグローバル競争には対処できない。共同会社という発想はもはや時代遅れではないだろうか。

最後にQセルズ社の破綻にふれよう。太陽電池セルは、基本的にpnフォトダイオードであるから半導体製造の知識のある企業ならどこでも作れるといった参入バリヤの低いビジネスである。だから中国など安く作る名人が出てくれば価格競争力で負けてしまう。今や世界シェアトップになった中国のサンテックパワー社は、セルを作っているだけではない。セルを並べたモジュールも生産している。モジュールの25年保証をうたい文句として、中国から始まり世界中に販売している。Qセルズは欧州危機のあおりを受け欧州での補助金が減額になり、生産過剰となった。

参考資料
1. 並列プロセッサIPのソフトウエアモデムでLTE、WiMAX、LTE-Advancedで対応 (2010/07/02)
2. 英国特集2011・各国LTEに向けRFベースバンドまでソフトウエア無線活発1 (2011/03/25)

(2012/04/09)

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