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エルピーダが再建活動に着手、管財人の一人は坂本幸雄氏に

エルピーダメモリが東京地裁に申請していた、会社更生法の適用が3月23日に認められた、と24日の新聞各紙が報じた。これにより、エルピーダおよび子会社の秋田エルピーダメモリは再建手続きに入ることになる。

管財人には坂本幸雄元代表取締役社長と申立代理人の小林信明弁護士が選任された。従来の経営陣が管財人となる「DIP型会社更生」方式を採用、再生手続きを迅速にして再建を図ることになる。この方式を使わない場合には、更生法適用までに1年もかかる場合があるという(参考資料1)。

坂本社長が管財人となる場合には経営責任が曖昧になるという指摘が出ていたが、迅速にスポンサーを決めなければ、事業資金が枯渇し工場閉鎖や会社清算など2次破綻する懸念があったと、3月24日の日本経済新聞は指摘している。今後、更生債券などの提出をはじめとする一連の手続きを踏む計画だ。管財人の報告書(会社更生法84条1項)の提出期限を5月29日、管財人からの更生計画案の提出期限を2012年8月21日としている。

会社更生法の適用が決まる前の20日には日経新聞は推測記事を掲載、エルピーダを支援する企業の候補として、マイクロンやインテル、台湾プラスチック、TSMC、東芝などの名前を出していた。エルピーダはDRAM生産を続けているが、経営破綻後にDRAMの大口取引単価が1ドル台に回復したと22日の日経は伝えている。3月前半分でのDDR3の2G DRAMの単価が1.03ドル前後で2月後半分より4%高く、1Gビット品は同2%高い0.60ドルの水準になったという。

エルピーダの再建計画がうまくいってくれることを願うばかりだが、エルピーダ以外のニュースとして、アップルは株式の配当を1995年以来中止していたが、このほど再開すると発表した。アップルは、iPhoneやiPadの売れ行きが好調で、2011年第4四半期(10~12月期)だけで130億ドルを超える純利益を稼いだ。2011年末における手元資金は976億ドル(約8兆1000億円)にも及ぶ。この資金を元に企業買収や配当によって株主への還元を図っていく。

1990年代後半にスティーブ・ジョブズ氏がアップルの経営陣に戻り再建を図ってきたと同時にiMacをはじめとしてiPodなどのヒットを飛ばし、iPhone、iPadなどで確固たる地位を築いた。ジョブズ氏亡き後の新CEOのティム・クック氏は豊富な手元資金を有効に活用するため、配当再開と自社株買いを19日に発表した。

国内の明るいニュースとして、太陽光発電の導入量が年内に600万kW(6GW)近くまで伸びる見通しになった、と20日の日経が伝えた。これは原子力発電所6基分に相当するという。7月には国内で全量買取制度が始まる。これまでは家庭用のソーラーシステムに補助金が出るというだけだったが、企業が太陽光発電所を作り生産したエネルギーを全量、国が買い取るという新しい仕組みなので、メガソーラー発電所の計画が水面下で進んでいる。

公表されている計画では、ソフトバンクが20万kW(200MW)以上、住宅用太陽光発電施工大手のウエストホールディングス社も同量を目指し、用地選定を進めている。構想ベースの発電規模は150万kW(1500MW=1.5GW)以上に達するという。まず、ソフトバンクは4月から京都市内で4200kW(4.2MW)の建設を開始、7月をめどに運転を始める。三井化学は愛知県田原市にある自社の遊休地に東芝などと5万kW(50MW)のメガソーラーを建設し、2013年をメドに運転を始める計画だとしている。

日夜だけではなく曇りや晴れなどの天候によっても変動の大きなソーラー発電所の導入には、変動を吸収するための新技術(スマートグリッドやデジタルグリッド、蓄電池)の採用が欠かせない。6GWでさえも日本全体の発電容量の3%以下だというが、さらに増えることでデジタルグリッドの採用を進めなければ、生じた電力を捨ててしまうことにもなりかねない。節電、クリーン発電の視点からもグリッド間を結び電力の安定化を図るデジタルグリッドの早期実現を願う。

参考資料
1. 民事再生から、会社更生に回帰へ。倒産処理に変化を起こしたDIP型会社更生

(2012/03/26)
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