Semiconductor Portal

HOME » セミコンポータルによる分析 » 週間ニュース分析

エルピーダの会社更生法適用ニュースを総括する

エルピーダの会社更生法申請と受理のニュースは、この1週間ずっと新聞、TVなどメディアを賑わした。しかし、専門メディアは意外とおとなしい。記者会見報告でお終い、というメディアもある。新聞各紙とは違う、総括をしてみたい。

表1 エルピーダの半年間の動き 出典:プレスリリース、IRレポート

表1 エルピーダの半年間の動き 出典:プレスリリース、IRレポート


エルピーダメモリの財務状況はこの半年で一気に悪化した。リーマンショック後、ネットD/E比(自己資本に対する有利子負債の割合)は2008年度末(2009年3月末)の2.71から2009年度末には1.48、2010年度末には1.02まで下がり、財務体質は改善してきたかに見えた。これは、自己資本を増強することによって、ネットD/E比を下げたものであり、DRAMユーザーからの資本と、2009年8月に日本政府(正確には日本政策投資銀行)からの資本を株式に組み入れたことによる。

売り上げ、利益の増加によって改善されたものではない。いわば注入された資本を元手に企業運営を続けたが、市場はDRAMに対して冷たかった。今回、エルピーダは会社更生法の適用を認められたが、それまではDRAMを作れども売れず、在庫が溜まるという状況が続いた。DRAM市場が冷え切っていたのである。このことは、エルピーダだけではない。低コスト技術の天才と言われる台湾のDRAMメーカーさえも赤字を脱出できなかった。

技術的にはエルピーダは、この半年間に25nm品の開発、4GビットDDR3の開発、ReRAMの開発など、続々発表している。このことを株主に向けて発信したのが、表1のニュースリリースである。このことは、エルピーダには新製品を開発できる力があることを示している。エルピーダのエンジニアは技術への自負は大きい。

ただし、製品は技術だけで売れるものではない。良いものが必ず売れる訳ではない。市場が要求するものを適切に作れば売れるはずだが、特にこの1年はマーケットが非常に大きく変わった。低コスト技術で生産しても市場が受け入れる価格にはならないのである。DRAMメーカーの中で結局、利益を出せたのはサムスン1社のようだ。そのサムスンでさえ、利益は減少している。

巨人サムスンのメモリ部門は2011年第4四半期には利益が下がったとしており(参考資料1)、パソコン用のDRAMの需要は弱いがスマホとタブレット用のモバイルDRAMの利益は上がったという。同四半期におけるサムスン半導体の売り上げは9兆1700億ウォン(6818億円:82億ドル)、利益は2兆3100億ウォン(1717億円:20.6億ドル)となり売り上げは対前年比1%減になった。サムスンは2012年第1四半期に対してもDRAMの下降傾向は変わらないと見ている。

しかし、サムスンはこれまで巨額の投資を行ってきて、メガファブともギガファブとも呼ばれる巨大な生産工場を持つ。2番手以下のメーカーは生産数量ではサムスンにかなわない。資金力でサムスンに劣るエルピーダは、これまでとは違う方法で利益を生むようなビジネス戦略を創出し、再生して復活を遂げてくれることを願う。


参考資料
1. Samsung Electronics Announces Fourth Quarter & FY 2011

(2012/03/05)
ご意見・ご感想