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家電メーカー3社が巨額の赤字の通期見通しを発表、成長戦略いまだなし

先週は、家電3社の第3四半期の実績と共に2012年3月期(2011年度)の決算見通しが報告された。ソニー、パナソニック、シャープが大幅な赤字を発表、さらにルネサスも赤字見込みを報告した。週末には米DRAMメーカーのマイクロンのCEOが飛行機事故による訃報が流れた。

日本を代表する家電メーカーのビッグスリーが軒並み赤字。ソニーが2200億円、シャープは2900億円、パナソニックは7800億円と、各社が2012年3月期の赤字額(見込み)を発表した。

ソニーは、英国ロンドン在住のCEO兼会長のハワード・ストリンガー氏の辞任と新体制を発表した。ソニーの取締役全15名の内、13名が社外取締役という執行役・取締役分離の体制だ。4月1日付けで社長兼CEOに就任する平井一夫副社長が3月期の連結最終損益を発表した。2月3日の日本経済新聞によると、ソニーのテレビ事業部は12年3月期まで8期連続の営業赤字である。2005年に出井伸之前CEOからストリンガー氏が受け継いだ時から一度も黒字に転換していないことになる。平井氏は、テレビ事業の再建については2年後の14年3月期までに黒字化を目指すとしたが、これは従来の計画通り。同氏は改革のための4つの柱を打ちだした。デジタルイメージングとゲーム事業の強化、テレビ事業の再建、事業領域の改革、イノベーション加速、である。しかし、具体的な戦略はまだ発表されていない。

2月2日付けの日経産業新聞によると、シャープの2900億円の赤字は、液晶事業の不振が大きい。同社の片山幹雄社長は、テレビ事業の悪化と、中小パネル事業の遅れが原因だとしている。特に国内市場の急速な冷え込みだ。これは20011年7月から始まった地デジ放送による「地デジ特需」の反動がやってきたためだが、この市況を見誤った。さらに、テレビ用パネル生産の亀山第2工場を中小液晶パネルに転換する作業が計画より2ヵ月も遅れたというトラブルも大きい。携帯電話用のパネルでの2ヵ月遅れはビジネスチャンスを失うという意味に等しい。逆に言えば、ビジネス損失を生んだということになる。亀山第1工場の量産時期も今春から夏にずれ込むわけだから、基本的な生産計画に何か問題がある。スマートフォン向け部品の2~3ヵ月遅れは致命的だからである。根は深そうだ。

そして極めつけはパナソニックの巨額の赤字だ。2月6日付けの日経産業がその中身を解説しているが、テレビ事業の不振、リチウムイオン電池の採算悪化、三洋電機買収関連の損失、が要因だという。テレビ事業の改革や、リチウムイオンの収益力増強については、新聞情報を読む限り何が新しい方策なのかさっぱりわからない。従来と何ら変わらないのである。テレビ事業やリチウムイオン電池事業の環境がどのように変わってきているのか、という状況の把握や、何が付加価値でそれをどう提供することで顧客が喜ぶのか、という視点がない、という点はどの企業も似ている。赤字から脱出できるかどうかは予断を許さない。

半導体メーカーのルネサステクノロジもまた、570億円の最終赤字になりそうだと発表した。前期(2011年3月期)の赤字は1150億円であり、リストラを断行したことで赤字幅は前年度よりは小さくなったが、今年度は東日本大震災やタイの洪水の影響を受けたことに加え、欧州や中国の市況悪化のせいで赤字幅は当初計画の400億円から広がったと赤尾泰社長は記者会見で述べている。

ルネサス同様、大手メーカー同士の合併で生まれた、シリコンウェーハメーカーのSUMCOも不振を極め、生野工場の閉鎖と1300人規模の従業員削減を柱とするリストラ計画を発表した。これに伴う特別損失は2014年1月期までに総額955億円に上る。三菱マテリアルと住友金属工業が事業統合して1999年に設立されたSUMCOは世界第2位のシリコンメーカー。2月3日の日経新聞によると、不振の要因は、これら2社の間で経営責任の所在があいまいで、過剰投資などにより業績が悪化したため、としている。

マイクロン・テクノロジーはスティーブ・アップルトン会長兼CEOの訃報を2月3日(米国時間)に流した後、翌日には新しいCEOとしてマーク・ダーカン氏を指名したと発表した。アップルトン氏はマイクロンの『顔』として、長い間世界の半導体・エレクトロニクス業界で知られていた。ダーカン氏は2007年からCOO、その前はCTOを務めてきた。マイクロンの『顔』が変わったことで、エルピーダメモリとの交渉がどのようになるか、目が離せない。

(2012/02/06)
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