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TI日出工場閉鎖だけではなく、3D IC、BEMSなど前向きの記事も多かった先週

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先週は、テキサス・インスツルメンツ(TI)社が大分県にある日出工場を閉鎖すると23日(米国時間)に発表したことを受け、大分県が困惑した対応の記事が駆け巡った。TIはテキサス州ヒューストンにある工場も同時に閉鎖するが、共に設備の老朽化が閉鎖の理由だとしている。ただし、新規への投資は続け、アナログと組込プロセッサ、ワイヤレスに注力する。

日本法人の日本TIの和田健治社長は24日に日出町を訪れ事情を説明した、と25日の日本経済新聞が伝えた。18ヵ月以内に売却なり閉鎖なりを決める方針であるため、日本TIは半年以内に譲渡先を見つけたいとコメントしている。日出工場には500名の従業員がおり、工場の周辺には日本TIと取引のある工場が多いため、閉鎖の影響は大きい。ただし、日出工場とヒューストンの古い工場を合計してもTI全体の売り上げの4%にすぎないとしている。日本TI側はTI本社に、日出工場の閉鎖ではなく売却(500名の雇用の継続)を求めていくことになる。

先週比較的多かったニュースは3D ICの製造関係だった。東京エレクトロンは、TSV(through silicon via)形成するためのエッチングや成膜装置とウェーハ同士を張り合わせる装置など5つの製品を発表した、と日経産業新聞が26日報じた。エッチング装置では1分当たり従来の10μmから今回は15μmのシリコンを掘れるという。成膜装置では、有機材料のポリイミド膜を均一に形成できるとしている。ただし、このニュースは12月6日のプレスリリースで発表されたもの。

25日の日刊工業新聞によると、信越ポリマーが3D IC用に積層したチップを平面基板に搭載し安全に搬送できる治具を開発した。3D ICはまだチップ同士での接合あるいはチップとウェーハの接合しかできない。ウェーハ同士はチップ歩留まりが確実に落ちるため、今の段階では商業上できない。信越ポリマーが提案する治具は、平面基板上に接着剤を塗り、この上にチップを置くというもの。比較的簡単にはがせるというメリットはあるが、耐熱温度が100℃にとどまっており、搭載した基板の状態でリフローはできない。

ソニーでは裏面照射型のCMOSイメージセンサがヒット商品となっているが、このCMOSセンサICから画像処理回路を切り離し、積層する技術を開発したと発表した。従来、イメージセンサ上に集積されていた回路を別チップにすることで、イメージセンサの開口部をさらに広げ明るくすることが可能になる。プロセス上もセンサと回路部分をそれぞれ最適化できることで、性能や消費電力が改善される。ただし、TSVを使うのかどうかについてはプレスリリースを見ても掲載されていない。


図 回路基板を切り離したCMOSイメージセンサ 出典:ソニー プレスリリース

図 回路基板を切り離したCMOSイメージセンサ 出典:ソニー プレスリリース


もう一つ前向きのニュースを紹介しよう。日本におけるファブレスメーカーの一つ、メガチップスがBEMS(ビルエネルギー管理システム)向けの有線・無線用コンボ通信チップを開発したという記事があった。24日に日経産業が報じたものだが、ビルのエネルギー(電力)管理を見える化するためのチップで、BlueChipと名付けている。無線通信回路はARIB規格の802.15.4gに準拠しており、有線回路は電力線通信を利用する(参考資料1)。無線と有線の両方の通信で情報を飛ばし、通信状態の良い方を自律的に選び、このチップを搭載した機器から機器へと通信していく。通信規格以外にも各種のセンサインターフェースも集積しているという。ビル内の電力管理(BEMS)では、フロア内では無線、フロア間には電力線通信を使うことを提案している。

最後に、24日の日経産業の「眼光紙背」コラムで紹介された「サムスンの浸透戦術に学ぶ」という記事に触れる。この記事はサムスンがテレビで日本市場に再参入するというニュースを解説したもの。かつてサムスンは日本でもテレビを販売していたが、ほとんど売れなかった。量販店にも置けなかった。しかし、最近スマートフォンのギャラクシーが日本市場に浸透し、「ギャラクシーS」はすでに100万台を突破しているという。この記事にはないがサムスンを取材すると、同社の中国戦略は、まず韓流ブームを起こすことから始まった。中国人に韓国文化になじませるため、テレビドラマなどのコンテンツを無料で中国へ貸し出した。同じ東洋人である割に韓国に対して馴染みの薄かった中国人に、韓国文化を親しませることを数年かけて行った。この後サムスンの携帯電話機を中国へ輸出したところ、爆発的に売れた。日本でも中国戦略と似ており、韓流ブームを起こしギャラクシーで馴染みを浸透させ、今回テレビ市場へ再参入したという訳だ。

参考資料
1. メガチップ社ニュースリリース

(2012/01/30)

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