年明けの新聞は今年の抱負と未来への期待を込めたインタビュー記事で賑わう
新年のお慶びを申し上げます。
年始めの今回は、先週のニュースではなく、正月明け本日までのニュースを拾っていく。この三が日は大きなニュースもなく、平和な新年を迎えた。ニュースというより、新聞に掲載されたコラムからいくつか、今年の抱負、見通しについての記事を採り上げてみよう。
1月3日の日本経済新聞は、経済産業省の枝野幸男大臣が「子育て」、「医療・介護」、「省エネルギー」という三つの分野で新産業を創出するための新法を制定する方針を明らかにしたことを報じた。「医療・介護」ではヘルスケア用の半導体チップ開発が欧米で進んでおり、エレクトロニクス・半導体技術が「省エネルギー」を推進することは半導体関係者ならご存知だろうが、「子育て」分野での半導体ビジネスはこれまで聞いたことがない。
だからこそ、これは良いテーマだと直感した。すなわち、「子育て」分野でエレクトロニクスは、半導体は、何ができるだろうか、というテーマをブレストし、考え尽くし解を求めていくのである。マーケティングでは、保育園や幼稚園などの保育士や職員が何を欲しがっているのか、どういった道具やサービスがあればよいと思っているのか、ヒアリングに行くべきだろう。ここに日本独自のマーケットがあるに違いない。例えばヘルスケア分野では、海外企業は日本の高齢化に対処するという目的を真っ先に掲げる。高齢化の世界の最先端を行く日本独特の市場を海外企業が狙っているのである。今年は、「子育て」市場において半導体ビジネスは何ができるのか、という視点を持ち、この市場に使えるチップを開発することで日本が世界の先頭を狙える。
大手エレクトロニクスメーカー経営層のトップインタビューで未来を感じたのは、やはりスマートグリッドから広がるスマートシティ、スマートコミュニティ市場である。この市場はこれからの未来に向け世界同時に立ちあがり始めた。1月3日の日経に掲載された記事において、東芝の佐々木則夫社長は、パワーエレクトロニクスとITの分野に強い東芝のメリットを最大限に生かし、しかもグローバルな視点でスマートコミュニティに力点を置くことを強調したが、この姿勢は頼もしい。
1月1日の日刊工業新聞には、日立製作所、東芝、パナソニックの社長インタビュー記事を掲載した。日立の中西宏明社長は、世の中がシステムインテグレーションからサービス事業へ転換していることを踏まえ、IT関連が日立の成長の基盤になると述べている。パナソニックの大坪文雄社長は、テレビをやらなければエレクトロニクス企業としての存在意義はないと述べ、半導体事業の採算改善の道筋は?という質問に対して明確な答えを出していない。シャープの片山幹雄社長は、プラズマクラスターを中核とする白物家電や、LED照明、法人向け大型ディスプレイ、太陽電池事業へシフトする、と1月5日の日刊工業で述べた。
一方で欧州のエネルギー大手が太陽電池事業から風力発電へとシフトするというニュースを5日の日経が伝えている。中国勢との価格競争を避け、ドイツのエーオン社は風力発電に今後5年間で70億ユーロを投資し、英国BP社は太陽電池から撤退し、風力やバイオ燃料の開発、生産、販売に80億ドルを投資するとしている。欧州大陸では、南フランスやイタリア、スペインなどの地中海沿岸地域を除き、曇ったどんよりした天気の土地が多いため、太陽電池ビジネスは不利だ。日本とは違う市場である。
直近の大きな市場はスマートフォンやタブレットなどの携帯端末である。3日の日経でも電子部品市場をけん引すると予測している。国内携帯電話機メーカーの富士通やNECカシオモバイルコミュニケーションズは、携帯電話を従来のフィーチャーフォンからスマートフォンへシフトし、人員と品目を拡充するという。富士通は従来のNTTドコモ向けに加え、KDDIや海外通信機メーカー向けの機種を拡大する。NECカシオもスマホを昨年の1機種から6機種へ増やし、欧米へ販売を拡大させる。
国内の携帯電話市場には、世界大手のノキアもサムスンもかつては参入できなかったが、スマホになるといとも簡単に、サムスン、HTC、LGが入り込んできている。この勢いを生かし、サムスンは韓流ブームも味方に加えて、2013年をメドに日本のテレビ市場に本格的に参入すると3日の日経は伝えた。それも55型の有機ELテレビをはじめ大型テレビの販売を計画している。
タブレットは電子書籍という新市場を切り開いた。書籍取次大手のトーハンが、電子書籍の販促チラシを書店に配ってもらい手数料を支払うというビジネスモデルを導入すると5日の日経産業新聞が報じた。スマホやタブレットの電子書籍やコンテンツは、今やアップルやアンドロイドのネットストアに並ぶようになった。回線を貸しているだけの現状を打破しようと、NTTドコモやKDDIなどの通信キャリヤも独自にコンテンツ配信ストアを設けた。1日の日刊工業でも、KDDIの田中孝司社長のインタビュー記事を掲載、その中でブラウザのアプリを充実させる方針を述べた。ブラウザアプリの開発と独自決済の仕組みを導入することで、アップルからの脱却も視野に入れている。