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裏面研磨で削り取ったシリコンをリサイクルできる技術をディスコが開発

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来週の12月7日からセミコンジャパンが例年通り幕張メッセで開催される。今年は12月5日から7日までPVジャパンも併設される。この展示会を狙って新製品の発表が出始めている。先週、大きなインパクトのある製品の発表がディスコからあった。シリコンのリサイクルを可能にする技術である。クアルコムは無線充電技術もライセンスビジネス推進。

シリコンウェーハからチップに切り出す前に厚さが0.7〜0.8mmもある300mmウェーハを0.1〜0.2mmまで削ることが多い。ダイシングソーでカットする時の時間を短縮するためである。加えて、シリコンチップを薄くすれば熱抵抗が下がり、放熱が良くなる。3次元実装で重ねる時は100μmよりも薄く削る。シリコンをウェーハとして扱う場合は厚い方が扱いやすいが、チップに切り出して実装して使う場合は薄い方がメリットは多い。

しかし、シリコンウェーハの8割、スタックする場合は9割以上も削り取ってしまう。わずか1〜2割の厚さしか残さない。つまり、シリコンの8〜9割を捨てているのである。何とももったいない話である。シリコンを再生して使えないものか。今回、後工程の専門家集団ディスコがウェーハ裏面研磨工程でグラインダによって発生した廃水からシリコンスラッジ(水に混じったシリコン粉)を分離・回収する技術を開発した。このニュースを日刊工業新聞社が11月22日に報じた。純度99%以上、含水率50%以下でシリコンスラッジを自動的に回収するという装置である。

純度が99.9999%(9が六つあるのでシックスナインと呼ばれている)以上が要求される半導体製造では今のところ使えないが、太陽電池グレードでは十分使えるレベルである。太陽電池は純度よりもとにかく安さが一番だからだ。太陽電池のためにグレードの低いシリコンを生産することは普通しない。このため太陽電池用のシリコンが品薄になったことがかつてあったが、シリコンの大半が回収できるとあれば太陽電池グレードのシリコンはいつでも手に入れることができるようになり、シリコン太陽電池の低価格化を推進するようになる。これまでは単結晶シリコンインゴットの先端とテールの部分を太陽電池として使い、真ん中を半導体グレードとして使っていた。

太陽電池市場では来年7月から全量買取制度が始まる。太陽電池で発電した電力をすべて買い取るという新しい仕組みである。このため、太陽光発電システムへの参入がPVジャパンの開催と共に目立ってきた。太陽光パネル生産で世界トップの中国サンテックパワーに続き、第2位の中国JAソーラーが丸紅と組み住宅向けシステムの販売を開始すると23日の日本経済新聞が報じている。それによるとパワーコンディショナーの大手ドイツのSMAソーラーテクノロジーも来春をメドに参入する。国内の太陽光発電市場は狙い目となっている。国内産業機器の大手、安川電機も住宅向けパワコンに参入、さらにウエストホールディングスが台湾メーカーのOEM供給によりパワコンを販売するという。太陽電池のかつての世界トップにいたドイツのQセルズ社は、セル製造して手掛けていなかったが、このほど態勢を立て直し、パネルの販売も始めた。やはり狙いは日本市場である。24日の日経産業新聞は、カネカがQセルズにパネルの熱割れを防ぐ工法に関するライセンスを供与するというニュースを掲載している。

太陽電池は名前だけは、電池だが電気を貯める能力はない。光が当たっている時だけ電流が流れるフォトダイオードである。このため太陽光発電をスタンドアローンで作ろうとすれば電気(電荷)を貯める電池が欠かせない。電気自動車(EV)に使う電池を代用するだけではなく、積極的に家庭の電源として使うためのシステム開発の支援に国土交通省が乗り出すというニュースを25日の日経が伝えた。家庭用の電力使用量を見える化するHEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)にもクルマからの電力を使いEVの充電情報も見ることができる。

最後にEV関係で少し気になる動きについて触れておく。ファブレス半導体トップに君臨するクアルコムがEV向けの無線充電システムを開発、その技術を使った走行実験を英国ロンドンで始める。実験が成功すれば、クアルコムはこの技術を利用した無線充電装置を製造するのではなく、ライセンス供与するという。クアルコムはかつて携帯電話事業を持っていたが京セラに売った。モノづくりは全くせず、技術をライセンス供与するというビジネスモデルに転換した後、得意な無線技術を生かした新しい分野(無線充電)でも同じビジネスモデルに徹することになる。ファブレスとはいえ、自社では実験によって動作は確認しているようだ。出力3kW、7kW、18kWの無線充電出力が可能だとしている。電磁誘導(トランスの原理と全く同じ)か、電磁共鳴かは明らかにしていない。直線的にコイルを多数配置し、移動中でも無線で充電できる実験による確認も行っているという。

(2011/11/28)

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