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電気自動車の開発の中心はシリコンバレーになるか

2国間の自由貿易協定(FTA)を発展させ、環太平洋経済連携協定(TPP)としてアジア太平洋地域に属する9カ国が関税撤廃などをテーマにした経済連携システムへ日本が参加するかどうかにおいて先週、政治家が大きく揺れていた。貿易立国として、モノづくり立国として日本が生きていくのなら答えは一つしかないはずだが、与野党とも政治家は駆け引きに終始している。

本来ならこの話題が先週のトップニュースになるはずだが、政治の世界は全く別世界であるから議論する意味がないので、深入りはしない。それよりもエレクトロニクスメーカーが看過できない、気になるニュースは、電気自動車技術がシリコンバレーにシフトしつつあることだ。

11月11日の日本経済新聞は、トヨタ自動車が米インテル社とカーナビに代わる次世代の車載情報通信システムに関する技術の共同研究についてMOUを締結した、とニュースリリース(参考資料1)で発表したことを大きく採り上げた。ニュースリリースによると、車載情報通信システムを介したドライバーへの最適な情報提供手法、ならびに車載機本体とその周辺にある情報機器とのシームレスな情報通信技術についてインテルと研究する、とある。

最適な情報提供手法とはヒューマンマシンインターフェースのことを指すようだ。運転中にコンピュータとやり取りする方法としてタッチパネルはドライバーに余計な負担をかけるため実用的ではないが、有力な技術は音声認識である。最新iPhoneのSiriが備えている機能と同じだが、認識率を高めるのであろう。

車載機本体と周辺情報機器との通信技術とは、車内LANにほかならない。これまでのLINやCANは最高1Mbpsとデータレートが遅く、ドアミラーの開閉やワイパー制御などに使われていた。FlexRayでさえ、最新のv3.0でも最大10Mbpsどまりでビデオは伝送できない。おそらくそれ以上のデータレートを狙った通信方式であり、ニュースリリースでは明確に述べていないが、Wi-FiやUWBなど高速のワイヤレス技術を活用するものと想像できる。ただし、インテルは通信技術に関しては新参者だ。ドイツのインフィニオンから通信部門を買収したのは通信技術が欲しかったからだ。トヨタが組むべき相手はインテルでよかったのか、若干の懸念は残る。

日産自動車とフランスのルノーがシリコンバレーに自動車情報をITで閲覧・制御する機能を研究開発するために拠点を設けた、と日経は述べている。日産・トヨタともシリコンバレーにクルマの開発拠点を置くのは、クルマとITとが特に電気自動車時代には切り離せなくなるからだ。現に、日産の電気自動車リーフは、日産のデータセンターとクルマの間をつなぎ、クルマの電力情報を常にサポートし、あとどのくらい走れるか、何km先に充電ステーションがあるかといった情報を流している。

電気自動車の先駆けとなった米Tesla Motors社は、パソコンに使うリチウムイオン電池を何千個と並べてモーターを動かしている。電池の体積が大きすぎて今のところ2人乗りのスポーツカーしか販売していない。この米国メーカーは自動車メーカーのメッカ、デトロイトではなくシリコンバレーに拠点を置く。

日産とルノーがシリコンバレーに拠点を置くことは、これからの電気自動車にはIT技術が欠かせないということだ。トヨタも含め、どうやらシリコンバレーに電気自動車が集まるようになるかもしれない。


参考資料
1.トヨタ自動車、インテル社と次世代車載情報通信システムに関する技術の共同研究についてMOUを締結

(2011/11/14)
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