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成長しているスマホ市場を狙った半導体、製造装置に活路を見出す

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先週は大きなニュースがない中、半導体から電子機器、製造装置、次世代グリッド構想などの記事を眺めていると、それらが見事にリンクしている様子をうかがい知ることができる。本日(11月7日)の日本経済新聞朝刊に掲載された、「ザイン・エレクトロニクス、スマホ用半導体を強化」という小さな記事からその大きなトレンドを理解する。

その記事は、ザインがスマートフォン向けに画像処理用の小型半導体を開発した、というもの。これだけでは何のことやらわからない。しかし、重要な情報は、成長が見込めるスマホ向けの製品を強化する、という最後のくだり。これまで、LVDSをはじめとするディスプレイ用インターフェースICを得意としてきた同社が狙うのはやはりスマホという成長商品のディスプレイ周りだろう。同社はディスプレイ向けのSERDESや高速シリアルインターフェースは得意な技術であり、スマホがHD仕様だけではなく、フルHD、4倍のHDなどにも対応するようになると、高速インターフェース技術は欠かせなくなる。これからの成長分野はここ数年、スマホがキーワードになることは間違いない。

大手IT企業の決算を11月2日の日経産業新聞がまとめているが、それによると大きな流れは「スマホとクラウドが好調/サーバーは不調」という現在のITのトレンドをよく表している。実は、スマホはクラウドと歩調を揃えて成長する分野である。スマホのさまざまなデータをDropboxやEvernoteに保存、会社や自宅のパソコンからそのデータを利用することができる。持ち歩くにはスマホ、じっくり仕事するにはパソコン、というように業務を使い分けできるようになると仕事の効率は高まる。一方で、サーバーがさほど成長しない理由については過去にも述べてきたが、クラウド利用の高まりだけではなく、仮想化技術の普及によっても台数が伸びなくなる。

パソコンはここのところやや足踏みが続くと見られており、台湾企業のノートパソコン事業がやや減速気味であることを11月1日の日経が伝えている。特に第4四半期(10~12月)は売り上げが第3四半期よりも減少すると見ており、その要因を欧州経済の減速とタイでの洪水被害によるHDDの入手困難さを上げている。

スマホは、これからのスマートグリッドのセンサーとなるべきスマートメーターと接続するHEMS(家庭内エネルギー管理システム)やBEMS(ビル内エネルギー管理システム)から、電力量を見るのにも使われる有力な無線端末である。本日の日経に「次世代メーター、家庭の節電支援」という記事が掲載されているが、このHEMS/BEMSにディスプレイを搭載せず単なる電力ゲートウエイとして使い、ディスプレイに表示する機能をアプリケーションとしてスマホに持たせれば低コストで電力の見える化が可能になる。それに向けた通信規格を日本独自で標準化しようという話が本日の日経と日刊工業新聞に掲載されているが、HEMS/BEMSの通信規格で有力なのはZigBeeであり、Z-Waveである。すでに海外に有力な規格があるのだから、これを利用する方がメーカーにとっては製品をグローバルに輸出でき、新しい製品開発においても海外企業とコラボしやすい。なぜ日本独自の標準仕様が必要なのか、全く理解に苦しむ。

スマホという成長商品やスマートグリッドという長期的な成長分野に向け半導体の市場はますます拡大していく。それに向け、東京エレクトロン(TEL)が宮城県に持つ子会社、東京エレクトロン宮城が稼働を始めたと11月1日の日経産業が報じた。総額250億円を投じ、29万平方メートルの敷地にエッチング装置を生産する工場を建設、このほどTELが発表した。これまでのセル生産方式ではなく、流れ作業方式を採用する。装置の生産ラインを共通化する部分とカスタマイズする部分とを共存させ、生産効率を2倍に上げることができると見ている。TELの工場稼働は、周辺部品や材料などの調達も重要になるため、周辺部品・材料工場も潤うことになる。宮城県もサポートすると村井知事は述べている。

もう一つ、大日本スクリーンはスマホ用の半導体の回路基板に配線パターンを描画するLED直接描画装置を開発したというニュースを11月2日の日経産業が報じた。プリント回路基板の配線幅が数10μmと微細化する必要の用途は半導体チップのパッケージ用基板である。プリント(印刷)回路と言いながら、これほど微細な配線パターンは、印刷ではなくリソグラフィで描かれるようになっている。しかもその微細配線基板を数10個並べて大きなプリント回路基板(マザー基板)としてパターン上に描く。これまでは、生産枚数によってレーザー直描やプロジェクションリソグラフィが多く使われてきたが、今回の大日本はUV光のLEDを使う。単一波長のレーザーとは違い、光スペクトルがブロードなため感光レジストの選択範囲が広い。理由はわからないがLEDは描画精度も高いと新聞では伝えている。

(2011/11/07)

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