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パナソニックがリストラ方針をテレビ、パネル、半導体で続々発表

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先週は、残念ながら、パナソニックの事業縮小のトピックスが続出した。まずテレビ事業を縮小する方針を発表した後、魚津工場をはじめとする半導体生産5工場において1000人規模の従業員を削減すると、日本経済新聞が10月23日の第1面で報じた。

10月21日の日経は、パナソニックのテレビ事業に関して、1)2010年に稼働したばかりの尼崎第3工場のプラズマパネルを今年中に生産停止、2)液晶パネルを生産していた茂原工場を売却、3)今後50インチ以上の大型テレビに絞る、という3点を報じている。日経によるとパナソニックの大きな誤算は、生産規模を拡大すればフラットパネルテレビ市場でリードできると思っていた点だ。

数年前からテレビ事業は、韓国や中国のメーカー、さらにEMSが低コストで進めてきており、数を増やしたところで世界と太刀打ちすることは無理な状況であった。数100万台規模で毎日携帯電話機を作っている、台湾のEMS企業、鴻海精密工業(フォックスコン)を見ていれば、そのようなことはわかっていた。経営トップが今になるまでわかっていなかったとすれば経営基盤そのものに問題がある。世界の産業情報を正確に把握していなかったからである。2006年5月から稼働していた茂原工場には1500人もの従業員がいるが、雇用を損なわずに他の液晶工場へ売却してくれることを望む。さもなければ、家族も含め数1000人規模が路頭に迷うことになる。

さらにパナソニックは、尼崎第1工場を2012年度に太陽電池工場へ衣替えする計画を立てていたが、この計画を撤回すると10月21日の日経が伝えた。太陽電池でも中国企業が生産上位にずらりと並んでいる。2009年の市場調査会社GTM Researchによると、トップの米ファーストソーラーに続き第2位のサンテックパワー、5位、6位にも中国メーカーが顔を出している。太陽電池はpn接合のフォトダイオードを直列に大量に接続したデバイスであり、設計製造することはVLSIに比べるとさほど難しくない。参入バリヤが低く、発展途上国にとって参入しやすい産業である。むしろ、ソーラー事業は、全体のシステムを製造・販売する方がより価値を生み出せる。このことも数年前からわかりきっていた。

パナソニックは半導体生産までも縮小する。前工程の工場は国内に魚津(富山)、砺波(富山)、新井(新潟)にあり、後工程の工場は海外に2社ある。従来、社内向けの半導体を中心に設計・製造・販売してきたが、最近では社内向け44%、外販が56%になっているという。社内向け市場(キャプティブマーケット)を中心に半導体を生産してきたパナソニックはIBMと似ている。IBMは、数十年培った半導体製造技術の歩留まり向上やノウハウのコンサルティング、さらに他の半導体企業を巻き込んだコモンプラットフォーム、というサービスビジネスへ5〜6年前から変身してきた。単なるリストラでは終わらず、それまでにIBMが持っていたハードやソフトを生かしたサービス事業を目指してきた。パナソニックは単なるリストラクチャ(再構築)に終わるようだ。

パナソニックの後ろ向きのリストラ方針とは対照的に、韓国のサムスンがスマートフォンの売り上げで世界のトップになったと20日の日経は伝えている。部門別の収益は未公表だが、7〜9月期にアップルの1707万台を超す2000万台後半のスマホを販売したとみている。アップルは新型スマホのiPhone4Sを発売3日間で400万台販売したといわれているが、この7〜9月期の台数は対前四半期比16%減となり、サムスンに抜かれたとしている。

最後にアマゾンが日本版のキンドルを発売すると20日の日経が伝えている。アマゾンは国内数社の出版社と話し合いを始めており、電子書店を揃える仕組み作りに入っている。キンドルはこれまでアルファベットをベースにした言語版しかなく、日本語版キンドルはこれが初めてとなる。

(2011/10/24)

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