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グーグルのモトローラ買収劇の真相を探る、電話会見・グーグルブログから

先週は、米グーグル社が米モトローラモビリティ社を買収するというビッグニュースに驚かされた。半導体業界の中でも、この話題で盛り上がっていた。このニュースの第1報を受けたのは8月15日の夜だった。その夜、ウェブ記者会見を行うという案内を受け取り、夜10時半からウェブで電話会見の様子を聞いた。案の定、翌16日の日本経済新聞の1面トップを飾った。

グーグルの狙いは何なのか。アンドロイドを無償で提供してきたグーグルが囲い込みに入るのか。特許を少ししか持たないグーグルはモトローラモビリティの特許が欲しかったのか。さまざまな憶測が飛び交う記事も出ており、セミコンポータルはできる限り真の狙いと事実に迫ってみたいと思う。

グーグルは15日付けでニュースリリース(参考資料1)を発行した。それによると、グーグルとモトローラモビリティは、グーグルがモトローラモビリティの株式を1株当たり40ドルで購入することで合意した。購入額は総計125億ドル。8月12日のモトローラモビリティの終値の63%高い金額で購入することになる。この買収案は両社の取締役会でそれぞれ満場一致で承認された。

モトローラモビリティは、2011年1月にモトローラ社が分割されて民生向けにスマートフォンやタブレットを設計製造するモトローラモビリティと、企業やインフラ系に通信機器やサービスを提供するモトローラソリューションズになったが、その民生部門である。モトローラモビリティは、アンドロイドベースのスマホであるDROID、ATRIXなどや、やはりアンドロイド3.0を搭載したタブレットXoomを開発・販売している。

グーグルがモトローラモビリティを買収したことで、アンドロイドグループのメーカーは、グーグルがアンドロイドを守りモトローラの特許を盾に、アンドロイドをオープンではなくしてしまうのではないか、という疑心暗鬼になったといわれ、アンドロイドはもはやオープンではなくなるという噂が飛んだ。これに対して、グーグルのCEOでLarry Page氏は自身のブログ(参考資料2)の中で、次のように述べている;

「今回の買収は、アンドロイドをオープンなプラットフォームとして継続するという約束はなにも変わらない。モトローラはアンドロイドのライセンス供与社の1社であり、アンドロイドはオープンのまま維持される。当社はモトローラモビリティを別のビジネスとして運営する。多くのハードウエアパートナーがアンドロイドの成功に貢献してくれた。これからも変わることなく、彼らがずば抜けたユーザー体験を提供してくれることを期待する」。

これを補足するかのように、グーグルのシニアVP兼CLO(最高法務責任者)であるDavid Drummond氏は電話会見の中で、「アンドロイドのエコシステムをグーグルは守る。またアンドロイドパートナーのトップ5社とも話をした。アンドロイドはオープンプラットフォームであり、わずか1社をグーグルに組み入れたとしてもこの状況は変わらないことを彼らに伝えた」と述べている。

Larry Page氏は、電話会見の中でも次のように述べた。「モトローラは私の尊敬する企業の一つだ。モトローラは最初のウエアラブル携帯としてのStarTACを開発した。2007年にアンドロイドを発表し、Open Handset Allianceを立ち上げた時の創設メンバーの1社である。モトローラは特許を多数保持しており、極めてイノベーティブな企業だ」。

「モトローラは2008年、アンドロイドにスマホを託した。これは賭けであったが、成功することを願っていた。モトローラの携帯事業はさらに上昇軌道を描き爆発的に成長することを信じている」と会長はブログの中で述べている。「当社はモトローラがアンドロイドに全面的に託したことを高く評価しており、このことが自然と今回の買収につながった。一緒になって私たちは、驚くようなユーザー体験を創り出す。これによって、アンドロイド全体のエコシステムを大きく底上げし(supercharge)、消費者もパートナーも開発者もみんなが恩恵を得られるようになるだろう」と続けた。

これに対してモトローラのCEOであるSanjay Jha氏は、電話会見の中で「モトローラは世界中に1万7000件もの特許を持ち、内7500件は特許を適用されている。これらの特許はアンドロイドのエコシステムをサポートできる」と述べた。グーグルはモトローラの特許が欲しかったのではないか、という質問に対してもその通りだとLarry Page氏は答えている。では、グーグルは特許を持つことでこの先どうしようとしているのか。

法務担当のDrummond氏は、8月3日に自身のブログ(参考資料3)の中で、特許戦略について述べているが、アンドロイドは今マイクロソフトやオラクル、アップルなどから攻撃されているという。具体的には特にWindows Phone 7というOSが今後伸びると見られているが、このOSはアンドロイドとは違い有料である。このため、アンドロイドも有料にすべきと言われたり、電話機メーカーにWindows Phone 7よりももっと高いライセンス料を取るようにけしかけられたりしているらしい。さらにアンドロイドフォンのメーカーであるHTCやモトローラ、サムスンなどが彼らから訴訟されている。同氏は「特許はイノベーションを鼓舞する意味があったが、今や技術を守るための武器としての意味になりつつある」と述べている。すなわち、グーグルは特許を盾にアンドロイドグループに何かを迫るのではなく、マイクロソフトやオラクル、アップルから身を守るために必要だと見ている。

参考資料
1. Google to Acquire Motorola Mobility
2. Supercharging Android: Google to Acquire Motorola Mobility
3. When Patents Attack Android

(2011/08/22)
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