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電力不足の懸念の一方で、モバイルインターネットが普及に弾み

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東京は10日が34℃という猛暑日一歩手前の暑さになり、今日11日は33℃という厳しい暑さになることが予想されている。夏の電力需要はいよいよピーク時期に入った。半導体、自動車産業が集中する九州地区では電力不足が懸念されており、半導体生産計画に支障が出るという報道がある。

7月8日の日本経済新聞は、ソニーセミコンダクタ九州が工場内にコージェネを備えているものの10〜15%の節電は無理、というコメントを紹介している。九州電力は原発再開に関して内部による「再開賛成やらせ」スキャンダルや、管直人総理の「ストレステスト発言」を巡る政治の混乱などにより、再開が遅れ、電力不足に陥る危険は大きい。経済産業省をはじめとする政府が、1日止めたら数日は稼働できない半導体産業の性質をどのように理解・判断し、日本のものづくり産業への影響を食い止められるだろうか。このような事態を迎えた時に政府の優先度をわれわれは知ることができる。半導体産業をないがしろにするなら、業界の声を政府へ伝える努力がわれわれにはもっと必要だということになる。同時に自衛するための創意工夫も必要だろう。

今後の電力需要を平坦化するためのテクノロジーである、スマートグリッドを家庭に導入する場合のHEMS(home energy management system)技術に関する標準規格を検討することで電機大手や東京電力、KDDIなどが合意した、と7月7日の日刊工業新聞は伝えている。HEMS技術を統一しておかなければ、各家庭のスマートセンサーや蓄電池、ソーラー発電システムなどを、異なるメーカー同士で接続できなくなる恐れがある。

ファブレス半導体のメガチップスが、節電効果を見える化する電力自動計測システムを発売するというニュースが7月6日の日経地方版に掲載された。メガチップスはファブレスでありながら、システムも設計製造できる能力を持っている。実は、ファブレスなりファブライトに求められるのは、システムを設計できる能力である。

通信技術はスマートグリッドにも重要となるが、世界の通信技術自体は、モバイルインターネット技術へと大きく動いている。これまで日本では光ファイバやADSLによる有線インターネットが主流であったが、スマートフォンやタブレットPC、電子ブックリーダーなどの新しいモバイルデバイスの登場により、モバイルインターネットへの流れも出てきた。欧州では街の美観を優先し電柱を規制するというポリシーを持つ国が多く、光有線インターネットが大きく遅れていた。モバイルインターネットはこの美観優先にマッチして急速に発展してきている。

世界共通の仕組みを持つWiMAXを一段と高速にするWiMAX2の実証実験をUQコミュニケーションズが始めた、と日経産業新聞が7月7日に報じた。WiMAX2の通信速度は150Mbpsと光ファイバの100Mbpsも凌駕するほどの速さ。東京大手町のKDDIビルにその基地局を置き、パソコンを載せたバスでビル周辺を移動しながら150Mbpsのデータレートを確認したと伝えている。この150Mbpsは現行のWiMAXの10倍の速度に相当する。実験を重ね、2013年以降にサービス提供する計画だ。

日本の市場調査会社、GfKジャパンによると、家電量販店における6月の携帯電話販売台数のうち、スマートフォンの割合が5割を超えたという。これは7月8日の日経が報じたもので、昨年6月にスマホは15.9%しかなかったが、1年後に54.4%に伸びたとしている。スマホはモバイルインターネットを推進する典型的なデバイスだ。

スマホの伸びは、7月8日付けの日経が報じた、DRAM価格の採算割れの記事と実はリンクしている。スマホやタブレットは32ビットシステムが中心でDRAM容量はもはや頭打ち。一方パソコンは32ビットから64ビットへと急速にシフトしているものの、パソコン自体の売り上げが今一つパッとしない。64ビットシステムではDRAM容量はいくら多くてもアドレッシングできるため、DRAM需要のけん引役となるはず。スマホやタブレットが普及してもDRAMへの影響はそれほど大きくはない。DRAM価格の低迷解消は、パソコン需要の回復を待つしかなさそうだ。

先週は国際ブックフェアが開かれ、電子ブックのコンテンツ配信サービスや規格統一などの動きが見られたと7月7日の日経や7月10日の日経MJ(流通新聞)が伝えている。電機メーカーは電子ブックの端末、出版社はコンテンツをそれぞれ提供するものの、コンテンツを表示するためのフォーマットがばらばらだと、一つの端末で全ての本を読むことができない。端末側とコンテンツ側がフォーマットを合わせる必要がある。フォーマットの標準化なしでは電子ブック産業は成り立たない。本のフォーマットは、競争力とも差別化とも全く関係ないため、電機業界、出版印刷業界などで早急に標準化を実現できるかどうかが、普及のカギを握る。

(2011/07/11)

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