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LED照明産業のエコシステムが強固になり、ファウンドリ企業の誕生を歓迎する

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先週も国内メディアが報道しないが、海外では大きなニュースになっているトピックがあった。それは米インテルのアリゾナ州チャンドラーの製造工場で爆発事故があり、7名が負傷したというニュースである。国内有力新聞はその詳細を確認中かもしれないが、全く報道していない。一方、国内はLED照明産業が活発になり、ファウンドリが生まれた。

国内のウェブニュースでは通信社のロイターからのニュースをそのまま流しているが、米国のEE TimesやEDNでは、ブルームバーグもニュースソースに追加している。6月8日のEDNによると、米国時間同日午後2時にウェーハプロセス工場に隣接するサポーティングビル(編集室注:ガスや純水等を製造しているファシリティ関係のビルと思われる)で爆発が起きた。Fab32のビルで作業していた従業員は避難したが、すぐにこのウェーハプロセスの工場に戻った。チップの生産には影響はないとしているが、爆発の原因などについては調査中だという。

LED照明に関わる材料メーカーが生産増強に乗り出しているという報道もあった。6月12日の日本経済新聞によると、住友化学は基板材料のアルミナの生産ラインを新設、生産量を倍増させる。三菱化学は蛍光体の生産能力を7倍に引き上げ、昭和電工はGaNのNの原料となるアンモニアガスの生産能力を7割アップ、コニカミノルタは導光板の新ラインを設けた。LED照明の生産量を上げ、低コスト化を推進することで普及に拍車をかけることになる。LED電球そのものを三菱化学メディアが国内販売するというニュースは6月10日の日刊工業新聞が報じている。化学企業がLED電球という消費者向けの製品まで手を広げてきたととれる。

6月8日の日刊工業新聞は、経済産業省が工業会やLEDメーカーと共にLED照明の性能評価方法の国際標準化に乗り出すと報じた。LED照明の明るさだけではなく演色性(暖かい光や冷たい光などを表現する)の評価方法の国際標準を推進することで日本のLEDメーカーを支援する。

有機材料を使ったLEDすなわち有機EL(海外名はOLED)照明についての動きも活発だ。東芝とソニーが携帯電話のディスプレイなどに使われている有機ELパネルの量産化のために統合する動きを6月8日の日経が伝えている。また、有機ELディスプレイの開発メーカーであるパイオニアと、有機EL材料の三菱化学が、有機EL照明の営業・マーケティング会社を共同で設立するというニュースを11日の日経が報じている。有機ELはLED照明ほど明るくはないが、表示やバックライト、暗い場所での照明など、明るさを追求しない分野への応用が始まっている。

次に、日本でも純粋のファウンドリビジネスが誕生したことを採り上げたい。イスラエルのファウンドリであるタワージャズ(Tower Jazz Semiconductor)が兵庫県西脇市にある米マイクロン(Micron Technologies)社の工場を買収した、と日経産業新聞が7日に伝えた。タワージャズは先端的な微細化プロセスを必要としないアナログや、ミクストシグナル等を手掛ける1.0〜0.13μmのファウンドリであり、今回の提携により8インチプロセスと95nmプロセス技術を手に入れた。

日本には優秀で経験豊富なプロセス技術者が多数いるのにもかかわらず、プロセスに力を注がなくなってきた最近の半導体メーカーでは、彼らのモチベーションが下がっていると聞く。こういったエンジニアを救い、日本の半導体ファウンドリビジネスによって半導体産業を活性化させるためにも、こういったファウンドリ企業が続々誕生することを期待する。

震災関係では、ルネサスエレクトロニクスは6月10日に、那珂工場の復旧を1カ月早め9月末にも震災前の供給量に戻すと発表した、と6月11日の日経新聞が報じているが、これは記者会見の場で明らかにしたもの。日経によると、ルネサスは下期には供給量を伸ばしたいが、関西電力や九州電力が電力制限をする場合には、西日本地区における代替生産に大きな影響を受ける。赤尾社長による「半導体は電力供給を止めると再稼働に何日もかかる。供給制限を少なくする特例措置などを認めてほしい」というコメントを紹介している。

富士通セミコンダクターは震災により、岩手工場(岩手県金ヶ崎)や会津若松工場(福島県会津若松市)など5工場が生産停止したが、6月9日から半導体製品の出荷を震災前の水準に戻すと、日経が報じた。

被災からの復旧は急ピッチで進み、今後の先端開発も同時並行で進められている。6月10日の日経新聞は、国内の半導体メーカーと海外の半導体メーカー、および国内のEUV(波長13.5nmを利用するリソグラフィ)開発に必要な材料を開発しているフォトマスクやレジストなどのメーカーが共同でEUVリソグラフィ技術を実用化する「EUVL基板開発センター」を設立したと報道した。EUVリソグラフィ装置そのものの開発はオランダのASMLが先頭を切っているが、マスクやレジストなどの材料は日本企業が強いため、日本メーカーと共同で開発することでEUVの実用化を早めるというメリットはある。つくばの研究開発センターに各社からのエンジニアを集めるとしている。

しかし、EUV開発はベルギーのIMECでも米国のSEMATECHでも開発しており、日本の材料メーカーもすでに参加している。今回の開発センターには、先端プロセスの開発が必要なNANDフラッシュの東芝に加え、インテル、サムスン、TSMCも参加する。EUVのような超微細加工技術が欲しい東芝の参加は理解できるが、先端技術開発はやめると宣言したルネサスの参加の立ち位置が今一つわかりにくい。材料メーカーにとって、インテルとサムスン、TSMCが第一線のエンジニアを日本に送り込んでくれるのであればメリットはある。

(2011/06/13)

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