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国内では扱いの小さなフォックスコンの爆発事故、どうなるiPad2の生産?

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海外の業界メディアは先週〜先々週最大のニュースとして、アップルのiPadを量産している台湾フォックスコン社の中国四川省工場における爆発事故を採り上げていた。国内メディアは、5月20日午後7時20分に死者3名重軽傷者15名以上を出したこの爆発事故そのものは、小さなベタ記事程度しか報じられなかった。

日経産業新聞は先週5月24日付けで、この事故の後追い記事を掲載した。海外メディアの大々的な報道に対する反省からだろう。海外メディアの視点は、iPadの生産には支障がないのか、である。iPad2の評判は上々で、さまざまな演算テストでこれまでのタブレットの中では最高のスピードを得ている。爆発を起こしたフォックスコン(Foxconn:台湾名 鴻海精密工業)の四川省成都工場ではiPadを生産し始めたばかりだった。昨年は深せん工場で自殺者が相次ぎ、抗議が殺到したことで労働者の賃金を上げ残業を減らす対策を打ったと同時に沿岸部から内陸部へとシフトさせたばかりの出来事だった。

IHSアイサプライはこの第2四半期においては50万台分のiPad2の損失になると見積もっている(参考資料1)。ほぼ一月分の生産量だ。フォックスコンの本社は、事故は限定的、とのコメントを発表しているが、海外メディアの中には長期的にみればそれ以上の損失になりかねないという記事も見受けられる。もう少し見守る必要がある。

国内企業における先週の大きな動きは、なんと言っても東芝の中期計画だろう。2011年度〜2013年度の3年間で設備投資、研究開発投資を合わせて3兆円と言う最大規模の投資計画を発表したからだ。2015年には、再生可能エネルギー、パワーエレクトロニクス・電気自動車、デジタルプロダクツ融合商品・サービスの3つの新分野に、昨年発表したNANDフラッシュメモリー、スマートコミュニティ、ヘルスケアも加わった6つの重点事業で合計売上高を5兆円に引き上げるというもの。これら6つの分野における2015年の売り上げ目標は、再生可能エネルギーからヘルスケアまでそれぞれ3500億円、8000億円、8000億円、1.1兆円、9000億円、1兆円である(参考資料2)。

この中で最も多い売上高は、NANDフラッシュメモリー事業である。19nm品の開発をはじめとする微細化投資に加え、NANDに変わる新型メモリーの開発、SSDの製品ポートフォリオの拡大や競争力を強化する。一方で、再生可能エネルギーの3500億円が最も小さいが、手掛けるのは太陽光、水力、地熱・太陽熱、風力の4つのエネルギー製造事業。いずれも最初からグローバルな受注・設計・生産・販売を行う。原子力はさらなる安定化を向上させ、直近および中長期的な課題に取り組み、さらに安全性の高い次世代原子炉の開発を推進していく予定である。

中期計画でのもう一つの柱はグローバル化。売上高、生産額、調達額の三つに渡ってそれぞれ最適地で事業を安定化させる。2010年度には海外比率は、売上高が55%、生産額は53%、調達額が60%という割合だが、2013年度にはこの比率をそれぞれ65%、60%、70%へと引き上げる。海外比率の中でも売上高は新興国売り上げを2010年度の24%から2013年度に31%へと大幅に引き上げることで高めていく計画だ。

参考資料
1. IHS iSuppli News Flash: Production of Half-Million iPads at Risk from Foxconn Plant Explosion (2011/5/23)

2. 2011年度経営方針説明会資料 (2011/05/24)

(2011/05/30)

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