セミコンポータル
半導体・FPD・液晶・製造装置・材料・設計のポータルサイト

好調な電子部品・重電企業の決算と、新聞に初登場した注目の半導体Tabula社

|

先週は、ルネサスエレクトロニクスの決算発表が5月18日にあった。ルネサスは今、那珂工場の再開に向けて全力を挙げて取り組んでおり、計画よりも前倒しで6月に部分的ながら再開する予定で代替生産も進めている。電子部品・重電企業の好調さも報じられ、注目の半導体ベンチャーTabula社が新聞に初めて登場した。

ルネサスの2011年3月期(2010年度)における連結決算は、最終損益が1150億円の赤字になったが、営業損益は145億円の黒字となっている。純損失1150億円のうちの東日本大震災による特別損失が495億円、リストラ費用などが約670億円などとなり、特別損失1118億円を計上したことが大きく響いた。

那珂工場の復旧に対しては、自社内の他工場(ルネサスの西条工場、ルネサス北日本の津軽工場、ルネサス山形の鶴岡工場)と外部のファウンドリ(グローバルファウンドリーズとTSMC)を活用すると共に、那珂工場自身も全面再開を進めていく。10月には全て合わせて震災前の生産能力に戻る計画である。ただし、10月時点で那珂工場の200mm/300mmラインの能力は震災前の半分にとどまる見込み。

半導体に対して、電子部品は業績が好調なようだ。5月23日の日刊工業新聞によると、電子部品34社のうち2011年度(2012年3月期)の業績見通しを公表した26社は6兆2298億円の売り上げになりそうだ。これは2010年度比5.9%の伸びに相当する。好調の要因は、スマートフォンの伸び。2011年のスマートフォン世界出荷台数は前年比50%増の4億5000万台に達する見通しだと米国の調査会社は見ている。京セラは国内と中国の生産を増強するほか、ベトナムのハノイにセラミックパッケージと携帯電話端末などの生産拠点を新設する計画である。太陽誘電もコンデンサやインダクタ、SAWフィルタの生産能力を上げるため320億円を投資する。東光も投資計画を従来通りか増額する予定だとしている。

三菱電機も2011年度は好調に推移するようだ。2010年度の連結決算では売上高が前期比で9%伸びて3兆6453億円となり、税引後の純利益は対前年比4.4倍の1245億円となった。5月17日の日本経済新聞によると2011年度も連結純利益は0.4%増の1250億円になる見通しだ。東日本大震災の復興需要によりエレベータや電力機器などの重電システムが伸びると見ている。

重電メーカーとして東芝はスイスのメータリング企業、ランディス・ギア(Landis+Gyr)社を23億ドルで買収すると発表した。L+G社は電力や水道などの自動メーターを製造する企業で、今後のスマートメーターの開発にも取り組んでいる。ここで、注意すべきことだが、新聞では、自動メーターをスマートメーターと書くことが多いが、欧州では現在普及している自動メーターはMeteringと言い、スマートメーターとは区別している。自動メーターは、1〜2カ月ごとに各家庭の電力や水道などの使用量を自動的に測定し、電力会社などへ電力量を無線などで送っている。日本の検針員の代用として使っているだけであり、スマートメーターではない。スマートメーターは、単なるメーターのデータを電力会社に1~2カ月ごとに送るだけではなく、リアルタイムにその時の電力量を測定、送信し、電力会社はそれに応じて電力量を増減させるために使う。まさにスマートグリッドと直結した通信ゲートウエイとしての利用となる。

スマートグリッドの実証事業が世界各地で始められているが、ハワイのマウイ島でも日立製作所やJFEエンジニアリングなど6社が実証事業を始める、と5月18日の日経産業新聞が報じた。NEDOが事業の委託先を決め、実行に移すもの。

もう一つ、注目が集まっている企業として米国のFPGAベンチャーであるタブラ(Tabula)社がある。5月18日の日経産業はこのTabula社のFPGAの価格を1/4に抑えられるとして紹介しているが、その理由は書かれていない。Tabula社のFPGAは、小さな実面積で従来のFPGAよりも実質的に数倍大きなゲート規模を実現するという技術である。このチップは、リコンフィギュアラブルなFPGAであり、ダイナミックに再構成する時間を非常に高速にしている。一つの実プレーンにあるFPGAを動作させた後、素早く次のロジックを組み変えていく。それを時分割で連続的に組み換え、n回ロジックを組み変え動作をさせていくことで「仮想的にロジック数がn倍増えた状態」となる。組み換えのクロックは数GHzと高速に動作させており、ダイナミックな再構成とメモリとのやり取りが実現のカギとなる。

こういった「賢い」技術を開発したTabula社の経営トップとしてDennis Segers氏がCEOを務めている。同氏は、かつてのメモリメーカーの雄、モステック社でスマートエンジニアと呼ばれ、XilinxでVirtexファミリを指揮し、3次元メモリのMatrix Semiconductor社でCEOを経験したあと、VC(ベンチャーキャピタル)も経験し、TabulaのCEOとなった。

(2011/05/23)

月別アーカイブ