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半導体製造用部材の供給も着実に回復、さらに攻めの増強も進む

先週は、東芝と日立製作所の2011年3月期決算の発表があった。共に今期は最高益で、東芝が連結の純利益が1400億円になる見込み、日立は同2388億円になったことを発表しているが、その中身は大きく違う。東芝がフラッシュメモリーの半導体事業で利益を伸ばしたのに対して、日立は新興国でのインフラ重要で利益を生み出している。

5月10日の日本経済新聞よると、東芝のフラッシュメモリーの利益率は20%と高く、フラッシュが半導体事業をけん引、営業利益が1400億円に達したとしている。日立は20年ぶりの最高益を更新したという。5月12日の日経は、日立建機のように新興国を対象とする海外事業が伸び、子会社の日立金属や日立ハイテクノロジーも好業績だったと伝えている。同日の日刊工業新聞によると、自動車機器や、HDDなどの電子部品部門の営業利益が急回復したことも奏功した。

東芝も日立も1〜3月は大震災の影響を受け、売り上げ・利益とも減少ではあったが、両社とも電力というインフラ事業を持つため、これからは復興需要を見込める。

産業界において震災からの復興は着実に進んでいる。ルネサスエレクトロニクスは、最大の被害を受けた那珂工場の生産再開スケジュールを5月11日にプレスリリースで発表した。これによると、200mmウェーハラインは当初予定の6月15日を早め6月1日に生産を再開し、300mmラインは6月6日に再開する。これを元に、ファウンドリや他工場での代替生産による供給量を加えると、被災前の供給レベルに戻る時期は、200mmライン、300mmラインとも7月下旬(ウェーハ投入)になる予定だとしている。

半導体製品や製造の供給だけではなく、サプライチェーンの上流となる材料や部材などの回復状況も明らかになってきている。供給量と深く関係するシリコンウェーハ価格は、4〜6月の大口取引価格として300mmウェーハが1〜3月と同じ1枚100〜140ドルで落ち着いた、と5月11日の日経は伝えた。すでに伝えたように(参考資料1)、震災によって信越半導体の白河工場が被災したものの、4月20日に一部操業を再開した。7月までには震災前のレベルに戻る見通しである。

石英メーカーのMARUWA Quartzは、5月3日からいわき工場を再開した、と5月11日の日経が伝えている。同社は、シリコンウェーハを拡散やアニールなどの熱処理するための炉心管を製造する。石英炉心管の製造に使うための水素ガスの供給が止まったためだが、5月2日からガスの供給が通常稼働に戻ったとしている。水素ガスは同社の工場に隣接する企業が製造している。

半導体シリコン基板や太陽電池の原材料となる多結晶シリコンを製造している、トクヤマは、多結晶シリコンの生産能力を徳山製造所における従来の増設計画のほぼ2倍になる3万1000トンに上げる計画だ。まず1000億円を投じ、マレーシアのサラワク州の工場に第2プラントを新設する。2012年4月に着工、15年1月稼働を目指し、年間の生産能力は1万3800トンになる。さらに110億円と投じて徳山製造所においてプラントを増設、13年春に生産能力を現在より2割多い1万1000トンに引き上げる。

半導体チップの封止材料であるエポキシ樹脂を合成する時の材料の一つであるエピクロルヒドリンの生産能力をダイソーが5割上げると5月16日の日経は伝えている。エピクロルヒドリンは、ビスフェノールAと合成することでエポキシ樹脂になる。2012年9月末までに80億円を投じて主力の水島工場を増強する。

太陽電池関連では、太陽日酸がCIGS(銅・インジウム・ガリウム・セレンの化合物半導体)太陽電池に使う、セレン化水素の生産を6月から三重県伊賀市の工場で始める、と5月13日の日経産業新聞は報じている。

参考資料
1. 震災からの復旧が進む半導体・材料産業、製造業全体でも7月までに9割復旧 (2011/05/02)

(2011/05/16)
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