Semiconductor Portal

HOME » セミコンポータルによる分析 » 週間ニュース分析

夏に向けLED照明、電力機器の需要高まる、パワーデバイスは間に合うか

スマートグリッドを中心とした再生可能エネルギーや蓄電池などの積極的な利用が中長期的なトレンドとして進むと見られていたが、東日本大震災の影響によって意外と早くやってくるかもしれない。震災後、初めての夏場を迎えるに当たり、電力消費の少ないLED照明、電力用蓄電池、無停電電源など電力関係のニュースが先週は多かった。

4月15日の日本経済新聞によると、大手コンビニエンスストアのセブンイレブンとローソンは夏場の25%節電に備えるためにLED照明を積極的に導入することを決めた。セブンイレブンは100億円強を投じ、東京電力管内の店舗5000店について店内照明や店頭の誘導看板をLED照明に切り替えるとしている。さらにビル内の店舗などを除いた約1000店には太陽光発電パネルも設置すると報じている。ローソンは全国1400店ですでにLED照明を導入済みだ。夏までに関東の3000店に、さらに来年2月までには1万店に広げていく予定である。コンビニの電灯を間引きした結果、消費者から店内が暗いというクレームが来たため、電力を使わずに明るくする方法の一環としてLED照明が注目されている。

日立アプライアンスがハロゲンランプ形のLED電球を4月18日に発売する。放熱板の面積を拡大することで温度上昇を抑え、寿命を3割増しの4万時間を定格とした。光を照らす角度を12度と狭くして輝度を上げることで店舗や美術館での応用を狙っているとしている。価格はオープンだが、店頭では6000円前後を想定しているという。日立アプライアンスは先行の東芝ライテックやパナソニックに比べ総合電機の中で出遅れていた。

家庭用の蓄電池の需要が高まっていると、4月14日の日経が報じた。大和ハウス工業やシャープなどが出資するエリーパワーは東日本大震災後の3月末、停止していた川崎工場の大型電池の製造ラインの稼働を再開したという。電力不足を見越して、サーバーを自社内に持つ企業や病院などからの引き合いが急増したためだ。コンビニエンスストアチェーンからは1000台単位で供給できないかとの要請もあったという。同社は今秋には家庭向けの販売も始める。太陽光発電システムベンダーからも蓄電池への要請は強いとしている。夏場の深刻な電力不足を乗り切るため、政府は補助金などで蓄電池の家庭への普及を後押しすることを検討し始めたと日経は報じている。

東京ガスは「エネファーム」というブランドで家庭用に販売している燃料電池システムと、太陽光温水器や太陽光発電システムと一緒にビル建物全体を省エネ化する、と4月11日の日経産業新聞が報じている。まず2011年に自社の社宅に導入し、2012年に外販する予定だという。

瞬停などの一時的な停電に対してサーバーなどのIT機器の電源を確保する無停電電源装置をサンケン電気が強化し、5月に3機種を新製品として投入すると、4月15日付けの日経産業が伝えた。これは、電力が停止している期間が数10秒から数分間まで対応できる。完全な停電の場合にはこの間に自家発電を稼働させる。

こういった電力用蓄電池や、太陽光発電、燃料電池、無停電電源などの電力システムにはパワーデバイスが欠かせない。思わぬ特需になる気配を見せている。しかし、パワーデバイスの基となるシリコンは入手できるのか。4月12日の日経によると、震災後、停止していた信越半導体の白河工場は1〜2週間後に一部生産開始する。この工場は300mmウェーハの世界需要の20%を賄っているといわれ、VLSIにはようやく救いの手がやってきたといえる。ただ、パワーデバイスは6インチあるいは8インチが主であったため、震災の影響はVLSIほど受けていないかもしれない。

(2011/04/18)
ご意見・ご感想