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東北地震;生産始める半導体工場が続出だが、Si結晶生産はいまだメド立たず

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先週も地震のニュースが支配的だった。東北太平洋沖地震による日本の半導体産業、さらにそれを使う製造業、自動車産業への影響などが次第に明らかになってきた。一部、生産が再開されつつある工場も出てきている。一方で、モノづくりの基礎となっているシリコンウェーハの生産が世界の25%を占め、世界の製造、特に自動車が生産できなくなるとも言われている。

3月24日の日刊工業新聞によると、半導体後工程の富士通インテグレーテッドマイクロテクノロジ宮城工場(宮城県村田町)の一部が再開した。また、CMOSイメージセンサーやASIC、液晶ドライバ、パワーMOSFETなどを生産している東芝の半導体子会社の岩手東芝エレクトロニクス(岩手県北上市)は3月28日から生産ラインの立ち上げを開始すると発表した。同時にASIC製品に関しては大分工場に、パワー半導体に関しては共に一部、姫路工場、加賀東芝エレクトロニクスですでに対応している、と日刊工業は伝えている。

半導体前工程のルネサス北日本セミコンダクタ津軽工場は20日、ルネサス山形セミコンダクタ鶴岡工場は22日から一部生産を再開した。ルネサスエレクトロニクス高崎工場と甲府工場は計画停電終了後、立ち上げ開始予定になった。那珂工場は照明が使用可能になり、クリーンルーム内の装置の被害状況を確認中で、生産再開時期は未定としている。半導体後工程担当のルネサスハイコンポーネンツとルネサス北日本セミコンダクタ米沢工場は19日から通電される範囲で生産し始めた。3月11日の地震発生以来、ルネサスエレクトロニクスは、200mmシリコンウェーハ換算で46万枚の生産能力のうち約5割を失ったという。

ルネサスの工場の中で最も大きなダメージを受け回復が遅れていた那珂工場でも、再開のめどが立った。3月26日の日本経済新聞によると、ルネサスの赤尾泰社長とのインタビュー記事を掲載、那珂工場は7月から量産を再開できる見通しになった。それまでは在庫品のほか国内他工場での代替や海外の生産委託先からの調達を急ぎ、自動車大手などへの供給維持を目指す。

復旧に合わせて11年内をめどに新たな事業構造改革計画を定め、収益性の高い製品を中核にした再編にも着手する。新計画では、マイコンとアナログ半導体を合わせた『マイコンソリューション』事業を中核に安定的に収益を出す世界トップ企業として復活を果たし、システムLSIは海外への生産委託比率を引き上げるほか、事業を絞り込むと語った、と伝えている。

3月21日に米市場調査会社のアイサプライが発表した、世界のシリコンウェーハの供給能力が東北地方を震源とする地震の影響で25%低下している、というニュースには世界中で衝撃が走った。世界のシリコンの20%を生産している信越半導体の白河工場と、同5%を生産しているMEMCの宇都宮工場の生産停止の影響が大きい。3月25日の信越化学工業のプレスリリースによると、25日13時現在、同社鹿島工場(茨城県神栖市)、および信越半導体白河工場(福島県西郷村)の2工場が操業を全面停止しているとしている。余震が多発するため、安全第一に点検作業を行わざるを得ず、時間がかかっている。 白河工場では未だ全面的な点検作業には至っていないが、これまでに製造設備での損傷が認められている。現段階では、それら設備等の損傷の復旧にどの程度の時間を要するか、明確にはなっていない。当面の間、限定された生産能力に基づく生産、出荷対応を余儀なくされる見込みだとしている。

自動車用のマイコンが強いルネサスの再開のめどを呼応するかのように、25日の日刊工業によると、トヨタ自動車が東日本大震災の影響で止めていた車両工場で生産を28日から再開する。しかし部品調達が難航し、堤工場(愛知県豊田市)とトヨタ自動車九州(福岡県宮若市)でハイブリッド車(HV)3車種を週4日生産する部分的な操業だと伝えている。

地震続報によって、大きな二つの買収劇の影が薄くなった。一つは以前、伝えていたアドバンテストの米ベリジー買収であるが、アドバンテストがベリジーの株式を1株15ドルで買うことで合意した。これにより元々メモリーテスターに強かったアドバンテストはシステムLSIのテスト分野も強化できるようになる。もう一つは、米国のAT&Tが米国市場第4位のTモバイルUSAを390億ドルで買収すると発表した。ベライゾンに抜かれたAT&Tが再び抜き返すことができるかに注目が集まる。

(2011/03/28)

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