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NECとレノボの提携から見えてきた、サービス事業への展開を迫られる半導体

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先週は、NECが中国のパソコンメーカー、レノボと合弁事業を始めるというニュースが飛び込んできた。1990年代前半のMS-DOS時代まではNECのパソコンは国内の市場シェア50%を超え断トツだったが、今や18.3%まで落ちてきた。いまだにパソコンにリソースを割かなくてはならなかったNECにとっては渡りに船。レノボも日本市場を拡大できる。

パソコンの世界市場では、携帯電話と同様、日本は「ガラパゴス化」している。ThinkPadブランドのパソコンを持つIBMがレノボにパソコン事業を売却したのは2005年。1999年にはIBMはポストPC時代を見据えて、IA(Internet Appliance)機器を提案していた。パソコンからの脱却を図り、常に次の手を考えていたIBMは、クラウドの提案、地球規模で環境にやさしい技術やサービスを利用するスマートプラネットの提案、など時代を先取りしてきた。それまでにもIBMは環境への取り組みを、工場が周辺地域を汚染する危険性というリスクの代償を考慮に入れて、環境対策は企業を守る、という視点で行っていた。

パソコンビジネスが象徴するように、マザーボード、HDD、CPU、キーボード、マウスなどの部品を集めてくれば誰でもパソコンを作れるようになった時代に、日本で参入バリヤーの低いこの産業を続ける意味は何だろうか、とNECはこれまで自問してこなかったのだろうか。タイミングは非常に遅いと思う。このような遅さでグローバル化に本当に対応できるのだろうか。心配である。

IBMがかつて、サービスビジネスへの展開、を標榜した時、国内メーカーの中にはサービス時代へ行くためにハードウエアを捨てた企業があった。しかし、IBMの本当の狙いを理解しないでサービスを強化した結果、企業の弱体化を招いた。IBMは、それまで築き上げたハードウエアとソフトウエアの資産を生かし、むしろ積極的に利用してサービス提供できないか、と考えたのだ。ハードを捨てるようなことではない。IBMはコンピュータ単体を売るのではなく、周辺機器までも含めて、顧客の望むシステム構築まで提案するソリューションビジネスへと移行したのである。この手法をIBMは半導体ビジネスにまで展開した。同社が中心となって最先端プロセスのコラボレーションを図ることで、半導体ビジネスをサービス事業として成立させ、アライアンスメンバーからの収入を得ていることは、まさに半導体ビジネスのサービス化の一環である。

半導体ビジネスもITビジネスと同様、サービス化に向かっている。IBMの半導体部門がコラボレーション、アライアンスという言葉で、プロセス開発を一緒にやろうと呼び掛け、サービス料金を稼いでいるように、これからはサービスをどう半導体ビジネスにとりこむかという視点が極めて重要になっている。先週のニュースの中では、米国のフェアチャイルドセミコンダクター社が製品単体売りではなくソリューションビジネスを念頭に入れた国内戦略を1月20日の日経産業新聞が紹介している。

これは、フェアチャイルド社が持つパワー半導体製品を日本の自動車メーカーと提携して共同開発に乗り出すという記事だ。顧客との共同開発の中で半導体に対する要望を吸い上げる技術者などを増やす。まさにマーケティングエンジニアを求めている。電気自動車の設計段階から参加し、パワー半導体の活用法や顧客の望む真のデバイスにまで食い込むことで、システム提案できるようにすることが狙いである。EV用のパワー半導体では、モジュールの得意な三菱電機、ディスクリートの東芝、といった他社との差別化がこのソリューション提案となる。フェアチャイルドは三洋電機を買収することでパワー半導体製品のポートフォリオを増やし、ソリューション提案ができるようになってきている。

製造装置メーカーにとってうれしいニュースもある。ファウンドリー企業のTSMCが昨年の投資額59億ドルを上回る投資を計画している。第2位のグローバルファウンドリーズも前年比2倍の54億ドルを投資すると1月20日の日刊工業新聞が伝えている。SEMIが昨年12月のSEMICON Japanで述べた時、台湾の投資額は前年の-9%と少し減らす方向だった。ここのところTSMCの動きを見ていると少なくとも前年並みの投資を行うかもしれない。

(2011/01/24)

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