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スマートフォンとタブレットはまさにグローバル競争時代の象徴

先週は、米国ラスベガスで恒例のCES(Consumer Electronics Show)ショーが開催されたせいか、どの新聞もアンドロイド、アップル、タブレット、スマートフォンなどの文字が躍っている。セミコンポータルは昨年9月の時点で、「はっきり見えてきた、ノートPCからタブレットPCへの大きなパラダイムシフト」(参考資料1)と題して、タブレットやアンドロイドの動きを先取りしてきた。この目で見ると今回のCESには新しさはない。

図 CESにおけるパネルディスカッション風景

図 CESにおけるパネルディスカッション風景

新聞だけではなく雑誌やウェブなどのメディアでもアンドロイドvsアップルOS、といった対立軸でのテーマが相変わらず踊っているが、この視点も新しさはない。民主vs野党といった政治の対立軸と何ら変わらない。問題なのは産業をどう発展させるかという視点が今のメディアにないことだ。

こういった対立軸ではなく、日本の携帯電話機メーカー、半導体メーカーにとって重要な動きは、スマートフォンではすでにグローバルな戦いが始まっているという認識である。台湾のHTCや韓国のサムスンなどのスマートフォンが日本市場にすっかり定着したということは、これまでの携帯電話のビジネスとは全く違う。これまでの日本の携帯電話市場には、世界チャンピオンの欧州ノキアでさえ、入り込めなかった。しかし、スマートフォンは台湾や韓国勢が日本の携帯電話機メーカーを押しのけ、いとも簡単に先に入ってきた。このことは、「日本の携帯電話は世界の先を行きすぎたからガラパゴスという表現は正しくない」とのんきな発言を聞いている場合ではない。スマートフォンでは台湾、韓国の後塵を拝している。

となれば日本のとるべき次の手段は、最初からグローバル市場へ食い込むことを考えることであろう。日本よりも上にいる台湾、韓国を追い抜くという決意がなければ無理である。

年明けの社長の挨拶のうち、ルネサスエレクトロニクスの赤尾泰代表取締役社長は、「2011年は、ルネサスが真にグローバルな会社としてスタートする元年としたいと思います」と社長年頭訓示で述べている。ただし、中国の販売会社のマイコン部隊に現地でタイムリーに意思決定できる権限を持たせた、とあるが、海外の現地法人を持つ日本企業はこれまでも現地法人に丸投げすることが多かった。現地の予算をしっかり管理し、ある程度以上の金額は本社決済不可欠、という米国や欧州の企業のやり方ではなかった。本当に丸投げで大丈夫か、という気持ちは中国ビジネスでは強い。中国をウォッチし続けて20年にもなるが、だまされたと思う経験をした企業がいまだに多いからだ。また、ルネサスモバイルの営業を開始したともあるが、これはLTEだけのこと。他のチップのグローバル化について触れていない点が気になる。スピード第一の時代だからこそ、心配の種は尽きないのかもしれない。

富士通の山本正巳代表取締役社長は、インテリジェントソサイエティの創出を中期目標に掲げ、そのためのクラウドコンピューティングに力を入れると年頭の挨拶で述べている。データセンターへのサーバーの納入、信頼性・セキュリティを構築するサービス、スパコン技術、そして人材育成を掲げている。ただし、経営陣のごたごたに対する答えは一切ないため、社長の思いは従業員の思いにうまく溶け込めるだろうか、これも心配である。

パソコンからタブレットやスマートフォンを利用するクラウドの時代に入ることは明らかであるが、それに向けた準備を着々と整えてきているというニュースは地味ながらしっかりと報道されている。例えば、クアルコムが802.11aのトップメーカーだったアセロスコミュニケーションズを買収するというプレスリリースが1月6日に発表された。3GやLTEなどの携帯電話ネットワーク一筋でやってきたクアルコムが無線LAN(Wi-Fi)技術を買うという意味を持つ。携帯ネットワークだけでは解決できない通信トラフィック問題、ユーザーの低コスト指向、などを解決するための無線LANはタブレットやスマートフォン用であることは明白だ。クアルコムが台湾にディスプレイ工場を建設することも1月5日の日経産業新聞が報じている。これもスマートフォンやタブレット向けの中小型ディスプレイMirasolを生産するためだ。このMEMSを利用するディスプレイを同社は、2004年に米Iridigm Displayを買収することで手に入れた。

1月6日の日経産業新聞では、インテルが51mm×30mmのSSDをサンプル出荷したことを伝えている。この大きさのSSDはHDDと互換性がないために狙う市場はタブレットしかない。

参考資料
1. はっきり見えてきた、ノートPCからタブレットPCへの大きなパラダイムシフト (2010/09/27)

(2011/01/11)
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