Semiconductor Portal

HOME » セミコンポータルによる分析 » 週間ニュース分析

新しいビジネスモデルの開発と、パートナーシップへの意識改革が成長のカギ

明けましておめでとうございます。最初のニュース解説です。当然のことながら、年末年始はメーカーもビジネスも動いていないためニュースという採り上げ方はできないが、正月に掲載された今年の動きを交えた新聞記事の中から、新しい動きを探ってみましょう。

1月1日の日本経済新聞では、「デジタル進化論変わる競争条件」と題した記事の中に、新しいビジネスモデルに注目した記述があった。シャープの片山幹雄社長は『売り切り型のビジネスモデルを捨てる覚悟で臨むように』という檄を飛ばしたという。ここ数年、ビジネスモデルの開発が重要であることを「津田建二の眼」で説いてきたが、アップルがそうであったようにメーカー自身がビジネスモデルを開発していくように変えていかざるを得なくなってきた。

もっとも典型的な例が携帯端末だ。携帯電話のビジネスモデルを大きく変えたのはアップルのiPhoneだった。iPadも新しいビジネスモデルを創造した。携帯端末では今後、ビジネスモデルの開発が活発になろう。その一端が表れている。

日経新聞の同じコラムで、KDDI (au)が昨年末に電子ブックリーダー「biblio Leaf SP02」を発売したが、EMS(製造専門の請負サービス)のトップメーカー、台湾の鴻海精密工業(ホンハイプレシジョン、外国名フォックスコン)が製造を受け持ったと述べている。これは、従来の日本のビジネスモデルを覆すやり方だ。これまでの携帯電話は、KDDIやNTTドコモ、ソフトバンクのような通信業者(キャリヤ)が携帯電話機メーカーに仕様書を出し、作らせていた。キャリヤは生産された携帯電話を全数引き取り、売っていた。ドコモショップやauショップ、ソフトバンクショップで消費者は電話機を選び購入する。今回、KDDIは日本の携帯電話メーカーではなく、EMSに直接依頼した。EMSはOEMではなく、設計もできるODM(original design manufacturing)としてビジネスを拡張している。これは携帯電話機メーカーにとっては素通りされたわけで、もはやキャリヤに頼って生きてはいけないことを教えてくれた。

携帯電話機メーカーにとっては、ガラパゴスから抜け出すチャンスでもある。ドコモやKDDIだけの仕様に基づいた製品を作る必要がなく、世界の標準品を相手に設計することになる。3GやHSPAから、新しいLTE、LTE-Advancedなどの仕様を世界に合わせて設計することで世界に携帯電話を売ることになる。そうなると、低コスト技術はここでも最重要課題となる。携帯電話だけではなく、タブレットPCも同様だ。

1月4日の日経新聞では同じコラムを連載し、年末にアップルがシャープと東芝に中小型の液晶工場に投資することを報じていたが、これも実は新しいビジネスモデルと考えてよい。これまでメーカーは顧客から注文を見込み、自ら工場に設備投資を行い、製品を生産してきた。ある意味では、下請けというような位置付けをされていた。しかし、アップルが資金を提供するのは、アップル製品の生産に遅れが生じないように部品を確保するためである。アップルは部品メーカーをパートナーとして見ており、彼らをしっかりつなぎとめるための資金を提供する。

同じような資金提供、あるいはパートナーシップの関係は他でも見られている。一昨年、エルピーダに資金を提供したDRAMユーザー企業は、エルピーダからのDRAM供給を確保するために資本を注入した。こういった手法は設備投資や資本注入などの高額投資にはリスク回避の意味もあり、これからの製造装置にも適用していくべきであろう。製造装置の開発を半導体メーカーとパートナーシップを組み、対等に行っていく。製造装置メーカーはその半導体メーカーを最優先して納入する。また、半導体メーカーは最先端の装置を最初に評価でき、生産立ち上げを早めることはでき、新しいビジネスチャンスに対応できる。

同じように半導体メーカーはユーザー企業とパートナーシップを組み、そのパートナーを最優先して半導体部品を供給する。エルピーダメモリはまさにこのやり方で、大変な時期を乗り切ってきた。

半導体メーカーと装置メーカーとのコラボこそ、日本の産業界が採るべき道ではないだろうか。というのは、半導体メーカーも装置メーカーもこれだけそろっている国は日本しかいないからである。これまでのような下請け意識、上から目線意識を共に捨て、共に助け合うパートナーシップ意識を持つことこそ、新しいビジネスモデルを構築する第一歩となる。日本のメーカーに欠けている意識は、まさにこれである。

(2011/01/05)
ご意見・ご感想