Semiconductor Portal

HOME » セミコンポータルによる分析 » 週間ニュース分析

市場の構造変化に対応、DRAMは減産、インテルはファウンドリ事業開始

ここ1〜2週間、各社の決算発表が一段落し、景気の回復基調が鮮明になってきたが、DRAM専業のエルピーダメモリが下降局面に入っている。DRAM単価の下落傾向が続く中、減産という手段をとり、DRAM市況の悪化に備えることを明らかにしている。先週のニュースを見ていると、半導体・エレクトロニクス産業の構造変化に対応する企業が見えてくる。

パソコン用DRAMの単価は下げ止まらない。エルピーダは、金融危機による不況時は採算割れを余儀なくされ、倒産の危機まで招いた。資本の増強によって乗り切ったが、今度は実はパソコンからタブレットPCへという流れがやってきた。この産業構造の大きな変化はDRAMビジネスを直撃する。パソコンと違い、タブレットPCに必要なRAMはそれほど大きくなくてよい。ひたすら消費電力が小さいことが必要とされる。フラッシュメモリーというストレージは大きければ大きいほど望ましいが、DRAMは大きくても32ビットシステムではアドレスできないため、4GB以上は無駄になるだけ。フラッシュは今後もますます成長する。

産業的なドライバがパソコンからタブレットPCへ、携帯電話からスマートフォンへと移っているということは、今後の半導体メーカーにとっては何に力を入れるかということが最大の関心事になる。少し前までネットブックがブームになりそうな気配があったが、ネットブックの仕様はノートPCに近づいており、ネットブックの優位性は薄れてきている。おそらくネットブックは消えゆく運命にあるだろう。代わって台頭してきているのはタブレットPCだ。

11月4日の日経産業新聞に掲載された、インテルがファウンドリサービスを始めたというニュースも実はこの産業構造の変化に対応するための実験だ。パソコンが産業ドライバであった時代はパソコン用マイクロプロセッサだけを設計製造していればよかった。しかしそのドライバが今替わろうとしており、パソコンほどの量産価値の高いドライバを製造しないのであれば、工場の生産能力は余ってしまう。インテルがIDMとしてファウンドリを行うのはまさにこのためだ。

11月5日の日本経済新聞では、サムスンがスマートフォンを2011年に4000万台以上製造する計画を報道したが、これはアップルのiPhoneに対抗する。サムスンはタブレットの「ギャラクシータブ」の発売も表明しており、市場の構造変化への対応を着々と進めている。

タブレットPCはアップルのiPadに象徴されるように、ユーザーインターフェースの革命が起きており、これが大きな不連続点となっている。タブレットPCに要求されるのはやはり消費電力。インターネットに常時つながっており、しかも丸1日電池は持たなければならない。そして楽しさを表現するユーザーインターフェース。ここにはタッチパネル制御ICが不可欠であり、複数本の指をほぼリアルタイムで検出、応答しなければならない。MEMSの加速度センサー、ジャイロセンサーでどのような楽しさを表現できるか、も重要な要素となる。

タブレットPCやスマートフォンに共通するのは楽しさ。見て触って、楽しくなければヒット商品になれない。ここにいかに知恵を盛り込む(インプリメント)するか、が勝負の分かれ目となる。その新しいデバイスを低消費電力で動かすためには、ICや電池などのハードウエア技術だけではなく、クラウドコンピューティングの利用という「ソフトウエア」も重要になる。CPUやグラフィックスなどの楽しさを表現する手法を強力にしながら、しかも消費電力を食わせないようにするためにクラウドを利用する。

例えば通訳や音声認識を十分使えるレベルのコンピューティングパワーで計算しようとすると携帯機器では消費電力が膨大になるため難しい。クラウドを使えば携帯機器はほとんどパワーを食うことなく、クラウドの向こうにある大型計算機で計算処理し、答えだけを携帯機器に送り返してくれば、ほとんどリアルタイムで結果が出てくる。スマートフォンやタブレットPCに通訳などの音声認識機能を載せて世界中で使えるようになるとさらに爆発的に伸びるはずだ。

クラウドコンピューティングの威力はこれだけではない。スマートグリッドネットワークにおけるリアルタイムでの電力量の計算と電力供給動作にも使えるだろうし、EV(電気自動車)の管理にも欠かせない。スマートグリッドの実験を伝える記事も日経なら11月5日の朝刊、日経産業なら11月4日付けの紙面にある。電力量を検出するセンサーとも言うべきスマートメーター用の半導体チップを米アナログ・デバイセズが発売したというニュースも11月4日の日経産業に掲載された。携帯機器、クラウドコンピューティング、スマートグリッドは、実は関連している。

(2010/11/08)
ご意見・ご感想