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ReRAMをDRAM量産メーカー、研究機関などが協力して開発する仕組みに注目

先週はビッグニュースがないものの、メモリーに関するニュースがいくつかあり、久しぶりにメモリーの新しい動きが見られる。DRAMは日本ではエルピーダだけになってしまったが、マーケットさえ正確に押さえれば十分ビジネスのできる分野ではある。一方、電力線通信PLCの日本の規格がIEEEで認められたというニュースはさほど大きく採り上げられていないが快挙である。スマートグリッドで化けるかどうか、期待したい。

DRAMは、コンピュータシステムだけではなく、組み込みシステムに使われるようになって来ているが、大容量化ではなくDDRからDDR2さらにDDR3へと高速化の道を進んでいる。しかし、高速化の要求が高くなる用途ではそれほど多くの数量は必要ない。となると、これまでのようにひたすら大容量化→微細化という公式が成り立たなくなる。DRAM以外のメモリーをビジネスとして模索することは当然の流れとなる。

このような状況下でエルピーダがシャープ、産業技術総合研究所、東京大学と共同開発を進めると、10月13日付けの日本経済新聞、10月14日付けの日経産業新聞が報じている。産総研は不揮発性メモリーReRAMの開発を数年間手掛けてきた。シャープは2月に産総研、アルバックと協力して128KビットのReRAMチップを試作した実績がある。DRAM専業のエルピーダはReRAMに目を付けたものの、自社では開発実績がない。そこで、開発で先行していた産総研、試作で先行していたシャープ、そして量産メーカーのエルピーダが手を組むという、相補関係の開発チームができたというわけだ。

お互いに強い部分を持ち寄ることで共同開発するため、各社の役割が明確で、プロジェクトはうまくいくと期待される。ReRAMは抵抗値の大小で1,0を対応させるメモリーであり、抵抗体に磁性体材料を使っているのが特徴。フラッシュメモリーと同様、電源を切っても記憶状態が保持される不揮発性のメモリーである。

これまでMRAM、PCRAMなどの新しいメモリーは名前こそ、RAMと名乗っているが、RAMというよりデータROMとしてフラッシュの置き換えを狙うような用途が主だった。ReRAMもRAMとしての用途よりはやはりデータROMとしての用途を探る方が当面の応用かもしれない。読みだし速度が例えば数十nsと高速ならば、現在使われ始めているハードドライブ(HDD)のキャッシュに使われているフラッシュを置きかえる用途が今の段階では最適だろう。

10月15日の日経新聞は、エルピーダが広島工場をスマートフォンやタブレットPCのような携帯端末向けのDRAMに全面的に切り替え、台湾の工場をパソコンDRAM専用にすると報じている。以前から坂本社長はそのような役割分担を伝えていたが、今後のDRAMはパソコンから携帯端末へのシフトがより鮮明になってくることから、広島工場をその先進工場とするのであろう。携帯端末ではビデオや音声ストリーミングなどマルチメディア応用がメインとなるため、DRAMの容量は1〜2Gバイトどまりで速度がDDR2やDDR3などの高速化が求められるだろう。携帯端末は32ビットシステムが主体となるためDRAMの大容量化は意味をなさない。

10月11日の日刊工業新聞はDRAM価格の下落について報じており、昨今のDRAMは特に下降局面に入ると一部のアナリストから言われていた。セミコンポータルでもやや要注意というシグナルを出してきたが、最近の取材ではその心配はどうやらなさそうだ。インテルの第3四半期の実績では前年同期比18%増の111億ドルと過去最高を記録したと発表していることも合わせ、今回のスローダウンは1四半期がややソフトになっただけに留まったようだ。

最後に、パナソニックが進めてきた高速電力通信規格HD-PLCがIEEEのP1901委員会で承認されたと10月11日の日刊工業新聞で報じられた。高速電力規格は世界各地で規格が乱立しているため、その中で米国規格のHomePlugと共に標準化規格が認められたことは喜ばしい。次は、日本のHD-PLCを欧州やアジア、そして米国に向けてどう展開していくかである。そのグローバル化がどの程度できるかどうかで、真の世界標準となれるかどうかが決まるだろう。

(2010/10/18)
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