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アンドロイドフォンvs iPhoneの戦いがいよいよ始まる、勝負の行方は?

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半導体産業にとって、先週はルネサスエレクトロニクスのSoCビジネスに関する発表会があったものの、新聞での扱いが小さいことに驚いた。セミコンポータルは記者発表のあった9日に報道した(関連資料1)が、新聞各社の動きは遅かった。これは記者がSoCビジネスとマイコンビジネスの区別がつかず、旧NECと旧ルネサスのCPUアーキテクチャの違いばかりについての質問が多く、SoCビジネスの本質を理解できなかったためだと思う。

新生ルネサスのニュースは関連資料1を読んでいただくこととして、実は先週、エルピーダメモリの低価格プロセスについての記事も9月8日の日経産業新聞で取り上げられているが、これもセミコンポータルがすでに8月13日の「津田建二の眼」(関連資料2)でレポートした通りである。

半導体プロセスよりは、半導体の応用ともいうべき報道が気になった。一つはスマートフォンの動き、もう一つは韓国の現代自動車が電気自動車に進出するというニュースだ。

スマートフォンに関してはニュースという訳ではないが、アンドロイドというソフトウエアプラットフォームを搭載したスマートフォンが出始めてきたことのレポートである。9月10日の日経産業新聞によると、日本市場で登場したスマートフォンはインターネットメール機能がイマイチだったらしい。NTTドコモならiモード、AUならEZwebというインターネットメールが使えなかったという。これを改善する試みが進んでいる。

アンドロイドやグーグルのクロムOSをベースにしたスマートフォンやタブレットPCはこれから、アップルのiPhoneやiPadと真っ向勝負になる。この勝負の行方は、パソコンが登場してきた1980年代の状況とよく似ており、オープン仕様のIBM PC互換機かアップルのMacかという戦いを彷彿とさせる。今の段階では、アップルが断然優勢だが、オープンスタンダードなアンドロイドやクロムOSはオープン仕様なため、試して使ってみる企業、消費者は続々とこれから間違いなく登場する。このままの状況だけを比較するならアップルは徐々に不利になっていくだろう。アップルはその時までに新たな戦略を構築することが必要となろうが、今回の状況がかつてのパソコン戦争とは違う点が一つある。

それは、アップルがハードやソフトだけではなく、App Storeなどのネットストアを構築しており、しかもネットストアには無料で陳列してくれるというビジネスモデルを確立している点だ。アップル向けにソフト制作者はいくらでも開発してくれる。ちなみにこの仕掛けを使えば、消費者がソフトをダウンロードするたびにソフト開発者側にもアップル側にもお金が入る。いわばビジネスモデルまで開発している点で、昔のIBM PCかMacかという競争とは異なるからこそ、勝負の行方は簡単には判断できない。

もう一つは、現代自動車が2013年から電気自動車を量産するというニュースだ。9月10日の日経新聞に大きく掲載された。電気自動車に対する認識は自動車メーカーの話を聞くと変わってくる。昨年まで、電気自動車を中国や台湾などこれまで作ったことのない企業が試作車を走らせるというニュースがあったが、こういった新興企業は残念ながら自動車市場でメジャーには決してなれない。自動車メーカーは消費者がとても乱暴な運転することを想定した上で、どのような乱暴な運転をしても安全に走行できるクルマを開発してきたからだ。

確かに、電気自動車はモーターと電池さえあれば、機械工学科の大学生でも組み立てられる。だから中国が脅威だという意見はある。しかし、中国へ行くと気が付くが、エンストしているクルマをそこら中で見かける。故障するのが当たり前の国では電気自動車市場ができるとしても、海外への輸出はできない。国内需要としても故障を減らさなければ企業は伸びて行かない。消費者に安全を保障した上で売れるクルマは、残念ながら新興電気自動車企業には作れないということになる。

日産自動車がこの12月に乗用車タイプの電気自動車『リーフ』を発売するが、日産の経営陣による講演を聞いた時、電気自動車を急発進、急加速すると、インダクタンスの影響でクルマがリンギングを起こすという。このリンギングを防ぐために技術的な苦労が大きかったと述べた。丁寧にゆっくり運転すればこういった問題はないが、消費者ドライバはどんな乱暴な運転をするかわからない。自動車メーカーはどのような場合でも安全性と運転しやすさを追求しなければならない。電気自動車産業は誰でも参入できるが、誰でも勝てる訳ではない。消費者目線で設計されたクルマが勝つ。

この点、韓国の現代自動車の参入はいよいよ、来たかという気がする。1980年代に現代は米国市場に参入した。最初は安さが受け入れられたが、品質が悪く、安かろう悪かろうということでたちまち売れなくなった。しかし、今米国で現代を見ない方が珍しくなったくらい、現代自動車の品質管理は行き届き、めったに壊れないクルマを提供できるようになった。むしろ現代自動車の方が日本のクルマメーカーにとってよほど脅威である。

関連資料:
1) 新生ルネサス、ノキアの先端通信技術をSoCに積極利用、成長戦略を明確に (2010/09/09)
2) 台湾、日本どこで作っても差は5%のみ、エルピーダが低コスト技術を証明 (2010/08/13)

(2010/09/13)

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