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パワーエレクトロニクスの話題が豊富になり、成長戦略の核に

先週は、太陽光発電、SiCパワー半導体、リチウムイオン電池など、パワーエレクトロニクスを巡る話題がたくさん出ている。パワー半導体はこれまでどちらかといえば地味な分野だったが、エネルギー問題が浮上して以来、今後の大きな成長分野の一つとして脚光を浴びるようになった。

8月25日に東芝が来年度中に欧州ブルガリアにおいて1万kW(10MW)の太陽光発電所を稼働させる計画について日本経済新聞が報じた。さらにイタリアと米国にも進出、太陽光発電所の建設に乗り出すという。東芝は発電所の運営には参加せず、建設のビジネスに集中するとしている。

現在の太陽光発電および風力発電ビジネスでは、ユーロ安の影響を受け、欧州向けの企業の不調、欧州企業の好調さが伝えられている。8月27日の日経新聞は、中国のサンテックパワーが2010年4〜6月期、赤字に転落、インドの風力発電メーカーのスズロンエナジーも同期赤字幅が拡大したという。一方、太陽電池のかつての世界トップメーカー、ドイツのQセルズ社は5四半期ぶりに黒字に回復し、同じくドイツのシーメンスは4〜6月期の受注額が26%増えたとしている。ただし、価格下落は続き、これまでのような先行者利益は得られなくなってきている。

国内の太陽電池の出荷も好調で、4〜6月期の出荷量は前年同期比2.4倍の19万7828kWとなったと太陽光発電協会が発表している。政府による補助金の申請再開が4月末にずれ込んだが、5月以降は大きく前年を上回っているという。欧州向けも好調で25万6008kW、欧米合わせて前年同期比1.8倍の35万5889kWに増えているとしている。ただし、輸出に関しては円高の影響が表れているが、それを凌ぐ勢い。7月以降を懸念する声もあるとしている。

パワー半導体関係では、三菱電機がエアコンのインバータにSiCショットキーバリヤダイオードを搭載し、そのエアコンを11月下旬に発売すると8月25日の日刊工業新聞は伝えている。インバータモジュールにSiCダイオードとSiのIGBTを3組集積した製品をエアコンに搭載する。三菱はSiC半導体からインバータモジュールまで手掛ける。2013~14年度を目途にSiC MOSFETの量産化を図り、インバータモジュールのフルSiC化を目指すとしている。

リチウムイオン電池の充電コントローラISL9220を米インターシルが開発したというニュースもあったが、これはパワーICの一種である。2Aを流せるバッテリーチャージャーコントローラであり、スイッチングレギュレータ方式を用いることで効率95%を実現したとしている。

これまで地味だったパワーエレクトロニクス。この分野に特化してきた新電元の新社長のインタビュー記事が日刊工業新聞に掲載されているが、同社のコアコンピタンスである電源、電装品、半導体といった分野がパワーエレクトロニクスの中核となっている。特にモビリティ市場(自動車やバイク、車両関係など)と新エネルギー市場を積極的に攻めていく、と新社長の森川雅人氏は抱負を述べている。半導体と電装品、電源のシナジー効果を狙っているという。

研究段階の話では、産業技術総合研究所が以前からダイヤモンド結晶の作製技術を研究してきているが、SOI(シリコンオンインシュレータ)構造にして、トランジスタ動作を確認したと日経が伝えている。ダイヤモンドは熱伝導率が高いため、パワー半導体に向いている。

リチウムイオン電池では、日本のアドバンスト・キャパシタ・テクノロジーズ(ACT)が蓄電池とキャパシタの中間の性質を持つハイブリッド型キャパシタを開発した、と日経産業新聞が伝えている。蓄電容量が従来のキャパシタの4〜5倍、充電回数はリチウムイオンの数10倍というが、絶対値については報道されていない。本来、キャパシタは電荷(電子)を貯めたり出したりするが、電池は電気化学反応を使ってイオンの出し入れによる可逆反応を利用するという違いがある。このため、今回の新デバイスは、充電回数に制限があるという意味ではキャパシタとしては出来損ないであり、容量は電池よりも悪い、と新聞からは読みとれる。使い方としてはキャパシタというよりもむしろ蓄電池ではないかと想像される。新聞情報には高周波特性もなければ、ESR(等価直列抵抗)も書かれていないため、ACT社に問い合わせるしか事実はわからない。

リチウムイオン電池に関しては、韓国のLGグループもエコカー向け電池をGMなど米欧韓中の7社から受注を獲得したと日経産業が伝えている。LGは自動車用に特化しており、市場シェア増大を狙っているとしている。

(2010/08/30)
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