Semiconductor Portal

» セミコンポータルによる分析 » 週間ニュース分析

NANDフラッシュを巡る明るいニュースと、自動車用半導体の新市場が登場

先週は、半導体産業にとって明るいニュースが続出した。エルピーダとスパンションの提携、東芝とサムスン電子との提携、クルマの半導体化の進展、という三つのテーマを採り上げる。3つとも半導体ビジネスにとっては極めて重要なポジティブな話で、今後の進展が期待される。

まず、エルピーダとスパンションの提携は、今年の3月にエルピーダがスパンションのミラノにある研究拠点とNANDフラッシュのIPを買収するというニュースの延長である。先週7月22日に発表された新しい内容は、3月に結ばれた協力関係を拡大し、NANDフラッシュメモリーのファウンドリサービスを行うことで合意したというもの。

マルチビットセル構造が容易なMirrorBit技術を用いる、スパンションのNANDフラッシュのIPライセンスを受けて、エルピーダの300mm広島工場でNANDフラッシュ製品を生産し両社の顧客にそれぞれ販売していく。MirrorBit技術は生まれながらに2ビット/セル技術でありNANDもNORも共に製造できる技術であり、プログラムメモリー、データメモリー、ストレージメモリーといった3つのジャンルをカバーできるようになる。しかもスパンションは、コモディティのメモリーではなく、カスタムメモリーへと舵を切り直し、しかもファブレスを目指した。

この提携は、スパンションにとってメリットは大きい。ファブレスを目指す以上、メモリービジネスではファウンドリを確保しておかなければビジネスはできない。カスタム対応とはいえ、メモリービジネスは自社でラインを持てるほど生産規模がロジックよりもずっと大きいため、ファブレスビジネスはかえって難しい。専用のファウンドリが必要になる。

一方、エルピーダにとってもメリットは大きい。エルピーダの主力製品であるDRAM、特に市場の大きな32ビット組み込みシステム向けのDRAMは大容量化が頭打ちになってくるため、DRAMの次の商品をエルピーダは欲しかったはず。PCRAMの市場は見えないし、不揮発性RAM市場は今一つだ。エルピーダが、NANDフラッシュを生産する意味は大きい。ファウンドリビジネスも推進するエルピーダにとっては、製品拡大だけではなく、ファウンドリの拡大にもなる。ビジネスを拡大できる大きなチャンスとなる。

こういったNANDフラッシュへの新規参入は、既存のプレーヤーにとっては目の前の蠅のように邪魔になる。NANDフラッシュメモリーの2大巨人である東芝とサムスン電子は、NANDフラッシュの高速データ転送向けのインターフェース「Toggle DDR 2.0」の標準化を協力して進めることを発表した。

サムスンは6月にToggleDDR(トグル・ダブルデータレート)という高速データ転送モードを使った512GバイトのSSD(ソリッドステートディスク)を発表していたが、その転送速度は最大133Mbpsどまりだった。今回、東芝も次の規格ToggleDDR2.0の標準化を共同で提案していく。ToggleDDR2.0はDRAMのDDRと同様に、クロック信号の立ち上がりと降下の二つの状態変化の時にデータを取り入れようというもので、データレートは2倍になる。


従来のSDR(左)とToggleDDRのタイミング(右)

図 従来のSDR(左)とToggleDDRのタイミング(右)


従来のシングルデータレートでは書き込みイネーブルWE、あるいは読み出しイネーブルREの変化の時だけデータを取り込んでいたが、DDRになって2つのデータを1回のクロックで取り出せるためデータレートは2倍になる。ただし、WEとREではなくクロック信号に匹敵するDQS信号の変化でデータを取り出す。サムスンの計画では今年後半に200MbpsのToggleDDR製品を出し、2011年前半に400MbpsのToggleDDR2.0を製品化していく予定だ。

今回、NANDフラッシュの両巨頭が標準化に向けて話し合い、JEDEC標準化委員会に提案することになっている。両社が提案すれば事実上のデフォルトスタンダードになる。東芝は高速NANDではサムスンに遅れをとっていたため、サムスンにインターフェース技術で追いけるようになる。さらにSATAインターフェースに載せるSSDにもToggleDDRを普及させることでパソコンからサーバーにもSSDが拡がっていくことを狙っているといえそうだ。

3つ目のトピックスは、これまで電気自動車に関してはあまり発言してこなかったホンダと、全く無言だったマツダが自動車に半導体を多用することを宣言した。ホンダはバッテリー主体のプラグインハイブリッド(PHV)と電気自動車を、2013年をめどに発売すると発表した。ガソリンのロータリーエンジンをコアコンピタンスとしてきたマツダは、ガソリンエンジン車の消費電力を減らす方針を固めたと日本経済新聞が7月25日に伝えた。

マツダは、LEDヘッドライトの採用や、エアコンなどの改善で低消費電力化を図ると新聞では伝えているが、インバータやヒートポンプなどの採用によると思われる。また、機械系の常識では油圧システムを、油圧+電動のハイブリッドあるいは電動システムに変えることで操作性も改善する。モータ制御をインバータ方式に変えると消費電力は激減するため、半導体メーカーにとっては、パワー半導体、ドライバ、制御用マイコンなどの半導体製品や半導体センサーなどを売り込むチャンスがやって来たといえよう。

(2010/07/26)
ご意見・ご感想