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若い力を活かす定年制度の在り方、製造装置の新市場について考える

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先週のニュースとしては、スパンションのこれからが見えてきたことがビッグニュースといえるが、すでに詳細を報道した。その他のニュースとして気になったのは、サムスングループがカーボンナノチューブを発明した元NECの飯島澄男名城大学教授らと共同で折り曲げ可能なディスプレイ用材料を開発した、というニュースだ。

5月25日の日本経済新聞によると、韓国のサムスングループは名城大学の飯島澄男教授らと共同で、平面状の導電性炭素繊維であるグラフェンをプラスチックフィルムに張り付け、印刷電極を形成、タッチパネル動作を確認した。フレキシブルなプラスチックエレクトロニクスでは、従来のITO(インジウム・すず酸化物)に代わる電極の開発が活発に行われている。今回、グラフェンによる配線電極を開発した。

飯島教授はNECを定年退職後、名城大のほか、産業技術総合研究所のナノチューブ応用研究センター長、韓国の成均館大学ナノテクノロジー先端技術研究所長などを歴任されており、いまだに現役生活を続けている。日本だけではなく韓国の技術の発展にも貢献している訳だ。グローバルに活躍しているといえる。

こういった状況に対して、次期ノーベル賞候補とも報じられている人物を一定年齢になったからと言って退職してもらうという日本の制度はいかがなものか。定年になるともう働きたくない、という人がいる一方で現役をまだ続けたい、という人もいる。働きたくない人に辞めてもらうことはどちらもハッピーだが、まだ働き続けたい人に年齢に到達したから辞めてもらう、ということは大きな損失となる可能性がある。現役で働き、しかも有能でそれに見合った報酬を得ることは日本の活力を決して奪わない。むしろ、働きと能力に見合わない報酬をもらっている人が若い人の活力を奪う。天下りが問題にされるのはむしろこの点だ。仕分けの席でまともに答えられない組織の長に数千万円もの報酬を与えていることはこの国の若い人たちの活力を奪う。企業はむしろ、誰もが納得する有能な人をどうやって残し、若い人の活力を盛り上げていくか、をきちんと議論すべきではないだろうか。

製造装置メーカーにとって、面白い市場を独占しているというニュースがあった。紫外線ランプの大手、ウシオ電機が回路の線幅/線間隔(L/S)が10μm、重ね合わせ精度が±10μmのプリント基板配線用のステッパ露光装置を発売、6月2日からのJPCAショーで公開する。プリント回路基板の世界では、実はプリント(印刷)といいながら印刷技術ではなく、リソグラフィ技術で回路をパターニングしている。携帯電話などの小型機器のプリント回路基板は75μm〜50μm程度まで微細化してきた。50μmのパターンは肉眼ではもはや確認できない。さらに、半導体チップを搭載するパッケージの基板は今やL/Sが15/15μmも珍しくない。例えばインテルのアトムプロセッサのパッケージ基板はこの程度に微細だと言われている。日経によると、ウシオ電機は半導体パッケージ用の露光装置で9割近いシェアを握っているという。

従来の印刷技術は100μmを切るような微細な回路パターンにはもはや使えない。リソグラフィ装置を使ってきた。JPCAショーを主催する工業会は、いまや日本電子回路工業会と名を変えている。かつてはプリント回路工業会と称していたが、プリント技術では加工しなくなり、現状にそぐわなくなってきたからだ。

プリント回路基板に使うフォトマスクは、巨大な写真フィルムを利用する。しかし、フィルムは伸び縮みが激しい。このため高価だがガラスマスクを使おうという動きもある。従来通りの安価なフィルムマスクを使いたいという動きが今回のウシオ電機が開発したステッパである。半導体における電子ビームによる直描に相当するのがレーザー直描技術だ。少量多品種の用途ではレーザー直描は生産現場で使われている。プリント基板回路のパターニングの分野も半導体製造装置にとっては十分魅力的な領域だろう。リソグラフィだけではなく、エッチングやメッキ技術、多層配線技術など半導体と共通する技術がプリント基板分野にはある。

このほか、パナソニックが32nmの開発をやめファウンドリを活用しファブライトへ転換するというニュースがあった。また、それほど微細化を必要としないアナログ半導体でさえ、ファウンドリ利用のファブライトに新日本無線も移行するというニュースもあった。特にアナデジ+パワーの混載LSIに台湾UMCのファブラインを活用するという。ファブライト戦略を打ち出してコストカットするのはいいが、ではどうやって売り上げを上げる成長、あるいは差別化の戦略をどうやって打ち出していくのか、残念ながら日本のメーカーからはこの成長するための戦略がいまだにどこからも見えてこない。

5月28日の日刊工業新聞は、政府の総合科学技術会議が「科学技術基本政策策定の基本方針案」をまとめ、環境と医療・介護を国家戦略の柱とすることをまとめた、と伝えている。医療・介護のエレクトロニクス、半導体を取材すると、真っ先に聞こえてくるのが、厚生労働省の規制が邪魔して動けないだろう、という懸念の声だ。海外では、医療・介護エレクトロニクスは病院・患者共にメリットがあり、しかもコストを下げられるため、注目されている。もし厚労省の規制が何かを邪魔しているのなら、それを撤廃することがまず行うべきことであろう。逆にこの方針案と受け付け始めたパブリックコメントにおいて、市場経済の邪魔をしている規制があればまず列挙していき、それらを取り除くことが成長につながるだろう。

(2010/05/31)

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