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スパンションが復活へ、TSMCが半導体製造の「マイクロソフト」になる可能性も

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先週のニュースはまず、経営再建計画を米国倒産裁判所へ提出していたスパンションが復活できることがはっきりしたという、うれしいニュースから始まった。これまで裁判所の元で再建計画を進めてきたが、裁判所の管轄から離れることになった。各社の決算が明らかになる一方で、TSMCがいよいよプロセスの「マイクロソフト」になることが見えてきた。

スパンションがチャプター11を適用された時にあった15億ドルという負債は、4億8000万ドルまで減少した。現在のキャッシュ2億3000万ドル、未利用の融資枠6500万ドルがあるとしている。スパンションの日本の活動がこれからどうなるのか、まだ明らかにされていないが、いずれはっきりするだろう。

旧NECエレクトロニクスとルネサステクノロジが合併したルネサスエレクトロニクスの2010年3月期(2009年度)の収支では、1378億円の損失を出したことを発表した。今回の経済不況は、2009年1~3月が底であったため、2008年度の決算が悪かったのはやむをえないが、4月以降回復基調だったのにもかかわらず、赤字に終わったことはこれからの前途が厳しいかもしれない。2009年における世界の半導体市場(1月から12月までで、最悪期の1〜3月を含む)の成長が前年比で9%減だったが、ルネサスエレクトロニクスの売り上げは13%減と、平均的な成長率よりも低かった。本来なら、1~3月の売り上げは含んでいないためもっと良い業績でなくてはならないのにもかかわらず、世界の半導体産業の業績からはほど遠いものに終わった。

5月15日の日本経済新聞は、台湾TSMCが総額5800億円を投じ、台中に300mmウェーハの新工場を設立すると伝えた。同会長兼CEOのモリス・チャン氏に同紙がインタビューしたときに明らかにしたとしている。TSMCは新竹と台南に月産10数万枚以上のメガファブを稼働させているが、それに続く第3のメガファブになる。既存の工場で、28nmプロセスを6月末に特定顧客向けに試験量産するとの予定だが、新工場は11年末の稼働を目指す。

日本のメーカーがファブライト方針を打ち出して以来、プロセスをTSMCに任せるということは、微細プロセスはすべてTSMCが握ることになりかねない。グローバルファウンドリーズも28nm以下の微細プロセスに特化する旨を表明しているが、TSMCと比べると工場の規模はまだかなり小さい。

「もしTSMCがグローバルファウンドリーズをつぶそうとすれば簡単だ。安い価格を提示し、グローバルファウンドリーズの顧客を横取りすればいい。モリス・チャンはそのくらいのことは知っている男だ」と、英国の半導体市場調査会社のマルコム・ペン氏は警告する。同氏は、「半導体メーカーがどこもかしこもファブライト宣言を打ち出せば出すほど、TSMCの思うつぼにハマり、TSMCがプロセスの価格や技術をすべてコントロールするようになる。すなわちプロセスのマイクロソフトとなり、半導体製造を支配するようになる」と警戒感を強める。

もう一つ見逃せない話題は、LEDのチップをシャープ、東芝がそれぞれ自社生産するというニュースだ。シャープはこれまで日亜化学と豊田合成からチップを購入してきたが、今後、福山第2工場と三原工場で青色発光ダイオードのGaNチップを生産するとしている。化合物半導体のGaNはMOCVD法などを使って多段のエピタキシャル成長で形成する訳だが、化合物半導体レーザーなどの技術を元々持っている同社がGaNに参入することはさほど難しいことではない。白色LEDはGaNの青色LEDに黄色い蛍光体を被せて白色にする訳だが、すでにLED照明でさまざまな黄色い蛍光材料をシャープは使ってきたことも参入障壁を低くしている。液晶テレビ事業を持っているシャープはLED照明とテレビのバックライトという二つの市場にも使えることがはっきりしているため、GaNチップの自社開発はむしろ当然といえる。

東芝も外からGaNチップを購入してきたが、かつてGaAs系化合物半導体を手掛けていたため、それほど大きな技術的な障壁はない。徳島のナイトライド・セミコンダクター社と共同開発すると日経新聞は伝えている。これは紫外線を蛍光塗料に当てて色を変換する方式を使うようだ。紫外線だと波長が短いため、発光すべき色を蛍光材料によって自由に選べるというメリットはある。

(2010/05/17)

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