日産の5人乗り乗用車タイプの電気自動車、予約好調、個人購入が2/3
先週のニュースで最も気になったニュースは、日産自動車が発表した電気自動車「リーフ」の予約が好調だというニュースである。電気自動車はカーエレクトロニクス半導体の市場を2倍以上に押し上げる。もう一つ明るいニュースはスパンションの復活である。
日産自動車のEV「リーフ」の販売予約好調
今年の12月に発売されるリーフの国内予約状況は、4月1日の受け付け開始以来、3週間で3754台を記録した。日産は2010年度の売り上げ目標を6000台としている。すなわち、2010年12月から2011年3月までの4ヵ月間で6000台の目標に対して、3週間で半分以上をクリヤーしたことになる。5人乗り乗用車タイプの電気自動車として国内で最初の販売となるだけにその売れ行きは注目されている。
これまで三菱自動車が発売した「アイミーブ」は4人乗り軽自動車タイプの電気自動車でその売り先は官公庁から法人へという市場であったが、リーフは最初から個人層が64%、法人36%であるから、最初から個人市場へと売り込みをかけることになる。エコ補助金の効果が個人市場には大きいが、電気自動車が官公庁相手ではなくなり、個人市場向けになるということは本格的な市場投入になって行くことを意味している。このことは半導体市場にとっても大きな意味を持つ。電気自動車に使われる半導体のコストはガソリン車の2倍以上になるからだ。
4月19日付けの日刊工業新聞によると、東芝がカーエレクトロニクス向けの半導体に力を入れるという記事があった。2015年までに現在の2.5倍となる2000億円の売り上げ目標を掲げている。東芝にはパワー半導体をはじめ、モーターやパワーインバータ、リチウムイオン電池などの製品がある。これらの製品は半導体を使って制御するものばかりだ。自動車だけではなく、産業機械はこういった製品の組み合わせが多い。最近は産業機械もデジタル化されており、この分野にも半導体が大量に使われるようになっている。
本来なら、産業用に強いはずの東芝が産業用の半導体ポートフォリオを揃えていれば産業用だけではなく自動車用半導体にも強いはずだった。なぜカーエレクトロニクスに弱いと言われているのだろうか。この分析から始めなければ、カーエレクトロニクスの売り上げ目標はクリヤーされない。残念ながら、新聞記事ではここまで突っ込んだ内容にはなっていないが、目標だけは記者に話したようだ。
NORフラッシュのトップメーカーでありながら経営破たんに陥ってしまった米スパンションが再建を図ってきたが、このほど米国倒産裁判所から再建計画案を承認されたと4月20日に発表した。4月6日にもスパンションは、再建計画に対して、多数の異議申し立てを却下するとともに、いくつかの未解決事項に対する指導を行うという決定を下したと発表していた。今回の発表はさらに進展させ、スパンションは蘇ることになる。
スパンションは富士通とAMDとの合弁企業として出発し、富士通からも大勢のエンジニアが移籍し、NORフラッシュメモリーを開発していた。高速の不揮発性メモリーを特長とするNOR型だったが、携帯電話需要が高速化からストレージ用の大容量化へと変わりつつあり、不利な立場に立たされていた。今後再建されるとなるとどのような製品戦略を展開していくのか、真の半導体ビジネス戦略の真価が問われることになる。