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パワーグリッドをはじめとする電力関係に半導体の新応用分野を見る

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先週のニュースは、その前の週のエルピーダのスパンション買収や富士通の社長辞任取り消し騒ぎのようなビッグニュースはなかったが、丁寧によく見てみると電力(パワー)関係のニュースが地味ではあるが出ている。ここでは、それらをもっと掘り起こしてみよう。キーワードはスマートグリッド、太陽熱発電、ドリームライナーだろう。

3月11日の日本経済新聞夕刊に、東京電力、新日本石油、三菱商事、NTTグループ、東京ガスの5社と東京工業大学が共同で、スマートグリッドに向けた実証実験を行うことが報じられた。5社が合計5億円を拠出し、東工大の先進エネルギー国際研究センターに共同研究組織を設立する。スマートグリッドは、太陽光や風力、燃料電池などの発電所と、リチウムイオンやNASなどの蓄電池、エネルギー消費者(家庭やオフィス)をつなぎ、需給バランスをとりながら最適なエネルギーを提供するもの。需給バランスがとれているかを検出し最適化していくのがIT技術、即ち半導体チップだ。今後5年間をかけて実証していくという。実は、こういった次世代電力網やネットワーク技術、発電技術の報道でごっそり抜けているのが、デジタル半導体に対する需要。電力分野ではSiCなどのパワー半導体の報道ばかりが目立つが、SoC半導体メーカーもこういったプロジェクトに参加し、次世代チップの開発(主にアルゴリズムやソフトウエアの開発)を進めるべきではないだろうか。

東京電力が今年度からスマートメーターの実証実験に乗り出すことを11日発表した。ただし、新聞を読む限り単なる電力メーターの置き換えにすぎず、何がスマート(賢い)なのかよくわからない。電力メーターの置き換えだけなら既にスペインやイタリアが無線のデジタルメーターを実用化しているが、こちらはお国事情で電気泥棒対策のためが主目的だ。スマートメーターは本来電力の平準化にも寄与すべきメーターのはず。太陽光、燃料電池(ガス会社)からの発電をスマートメーターで需給バランスをとりながら最適なエネルギーを供給する。新聞記事を読む限り、スマートメーターへの入り口にあたる双方向メーターとなるようだ。

日立製作所の中西宏明次期社長のインタビュー記事が日経と日刊工業新聞にそれぞれ載っており、情報通信と重電の融合分野が成長分野として挙げたと伝えている。その一方で、本来成長分野であるはずの半導体ビジネスを担っているルネサステクノロジ(4月からルネサスエレクトロニクス)の株式(30.26%)を今すぐではないが、全てか一部の売却を考えているという。事業領域が広すぎることが理由のようだ。

太陽の光を集め、その熱でタービンを回す太陽熱発電が欧州や米国で活発に建設が進んでおり、日本でもその産学協同開発プロジェクトがスタートした、と10日の日経新聞は伝えている。関連技術を持つ三井造船、コニカミノルタ、日産化学工業、日揮など12社が参加しているという。太陽光追尾精度の向上、数100度にも上がる温度の管理制御、太陽光の2次ビーム制御など半導体チップを使って制御すべき回路は多い。こういったプロジェクトにも半導体メーカーがオブザーバー的な参加はできないものか。半導体チップへの要求を知るためのよい機会となる。


米ボーイング社のドリームライナー787機

米ボーイング社のドリームライナー787機


中部地方の金属加工メーカーや機械メーカーなどが、米ボーイング社の次世代旅客機「ドリームライナー」(787機)の機体製作のため設備投資を行い、航空機事業部員の人も増やしているという、ニュースもあった。ドリームライナーは少ない燃費で飛行することが最大の特長の飛行機で、乗客数を争う時代ではなくなったことが象徴的だ。最近の飛行機には、Xバイワイヤー技術をはじめとするさまざまな最先端技術が使われており、その一部がカーエレクトロニクスに降りてきている。半導体メーカーも米国航空機産業に何とか入り込めないものだろうか。主契約者ではなくともサブコントラクタでもよいではないか。高い品質や信頼性を特長とする日本の半導体メーカーにとって、まさにうってつけの分野である。

(2010/03/15)

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