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トヨタ問題は他山の石、伝統的なモノづくりの基本から逸脱した経営にある

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先週のニュースでは、大きなニュースは半導体ではないがトヨタのニュースが気になる。半導体関連のビッグニュースはないものの、NECエレやルネサスがスマートグリッドにつながるメーター用半導体、車載用のマイコン並みに使われそうな小型のヒータ制御用パワーICなど新市場へ向けて着実に動き出しているニュースがあった。

トヨタの社長が米国議会で開催される公聴会に出席することが決まった。2月21日の日本経済新聞がこのことを解説している。この問題が世界的にこじれてしまったのには、海外における感情的な問題がある。それは、問題が発覚した当初のトヨタの対応だ。フロアマットの問題に対してトヨタの純性を使わなかったのが原因、という結論を出し、さも消費者が悪いと言わんばかりのイメージを植え付けたことにある。さらに問題はアクセルペダルにも拡がった。

日本においても、ブレーキの効き方が悪いというクレームに対しては、踏み方が悪い、ソフトウェアを書き換えれば済む、といった責任感のない対応に終始した。こういったトヨタの経営陣の態度に対して海外メディアは感情的に反応した。日本の専門メディアがこういった対応を批判的に書かなかったことと極めて対照的だった。

ただし、トヨタの言うようなタイミングの設定が少し甘かったということは、技術者としては決して許されるべき態度ではない。自動車メーカーは消費者がどのような無茶な運転をするかわからないからこそ、どのような運転をしても絶対安全な設計をする、とかつて取材の時にさんざん聞かされた。私がかつて半導体エンジニアの時も、現場では作業者がすぐに替わるから誰が来ても歩留まりが下がらないように設計しなさい、と言われた。消費者が乱暴な運転をしても絶対に壊れない、安全性を保つことがクルマの設計においても心がけることではないか。ソフトウェアのプログラムはこのクルマ設計の基本に則って作成すべきであった。この日本の伝統的なモノづくりの基本が崩れてしまったのが、今回のこじれにつながっている。

一方、経営陣の責任は重い。数年前、米国トヨタの社長がセクハラ問題で訴えられた時、本社の対応は素早かった。このためトヨタスキャンダルはさほど大きくならずにすんだ。今回の経営陣は問題を大きく広げてしまったのである。その責任は重いといえるだろう。

半導体関連ニュースでは、22日付けの日刊工業新聞には、NECエレクトロニクスがパワーMOSFETや保護回路などを集積したパワーICをランプや座席のヒータ制御などへの応用を狙い、月産500万個生産すると報じている。自動車用パワーICとなると電気自動車やハイブリッド車用のモーター制御用の大型パワーデバイスに注目が集まっているが、実はカーエレクトロニクス市場には、こういった小さな電流を流す応用が山のようにある。ここが狙い目である。こういった小電流のパワーICの制御にマイコンを使う。

自動車市場に使うマイコンの数は相当大きい。ECUの数以上に使うため、1台に数十個は使うことになる。この巨大市場を逃す手はない。マイコンだから数十個それぞれ違う動作を行う。マイコンの市場は自動車だけではない。全ての機械を電子制御に置き換えると市場はそこにある。TIもNECエレも新製品をそれぞれ強化している。

将来のスマートグリッドの一部に使われるスマートメーター市場を狙いルネサスは、中国向けにマイコンを2012年に5000万個/年、生産する計画だ。NECエレも中国において供給認定を得たと伝えられている。

一方、最先端の微細化ではNANDフラッシュが先頭を行く。22日付けの日経では、サムスンが27nmメモリーの生産を4〜6月期に始めるのに追従して、東芝も今秋20nm台のNANDを四日市工場で生産すると伝えている。

(2010/02/22)

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