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ソフトもハードもコンテンツもビジネスモデルも新しいアップルiPadの衝撃

先週のニュースは何といってもアップルが発表した携帯多機能情報端末「iPad」だろう。アップルが記者発表するというアナウンスがあると米国のメディアはあーでもない、こうでもないとさまざまな想像を巡らせたものの、結局はやや大きめのタブレットのようなタッチパネル方式の端末だった。別のトピックスでは半導体メーカーの業績が2009年10〜12月期に急回復している様子も報じられている。

アップルのiPad

アップルのiPad


iPadという名称を商標登録出願していた企業が富士通をはじめとして多数あり、アップルは今後、これらの企業との話会いに応じていくだろうと見られるなど、iPadは製品以上に話題性も多い。iPadは半導体とは切っても切れないほど強い関係の持つ半導体の応用製品だけにこのトピックスを外すわけにはいかない。

iPadは電子書籍という捉え方をしているメディアは多いが、アップルのホームページを見てみると、ウェッブやメール、地図を見ることができ、写真やビデオ、ユーチューブを楽しみ、iPodと同様の音楽を聴けて、iTuneやApp Storeからソフトウエアをダウンロードすることもできる。さらに書籍をダウンロードするiBookも楽しめる。もちろん、メモ帳やカレンダー、予定表、住所録などの手帳としても使える。文字を入力する時はスクリーン上にソフトキーボードを出せばよい。iPhone以来のマルチタッチ(2本以上の指で同時に操作可能)操作を使う。ディスプレイは9.7インチのLEDバックライトによるIPS液晶ディスプレイ。重さ680グラムで厚さが1.3cmとなっている。

アップルのすごさは、こういったハードウエアだけではない。きちんと稼げるビジネスモデルがしっかりしていることだ。iPadには12種類のアプリケーションソフトを搭載しているが、アップストア(App Store)やiTuneを通じてゲームをはじめとしてもっとさまざまなアプリケーションをダウンロードできる。このアップストアには14万本のソフトをはじめ、1100万曲の音楽、5万本のTV番組、8000本の映画などを置いてあり、好きなだけダウンロードできるが、今回は書籍もダウンロードするためにiBookstoreというネット書店を設置することを決めた。しかも、アップルがこれまで開発量産してきた製品、パソコンやiPhone、iPodなどとも完全に互換性があり、お互いにコンテンツを流通し合うことができる。日本の企業では社内の製品が一本化せずに似たような製品同士がつながらなかったり、作製したコンテンツをやり取りできなかったりしたことが多かった。アップルにはそのような不便さはない。これも大きな強みだ。

加えて、iPadなどのソフトウエアを外部の人たちに開発してもらうため、ソフトウエア開発キットも発売した。これをiMac上で新作ソフトのデバッグやシミュレーションができるようにしており、開発したソフトは、iPadだけではなく、iPhoneでもiPodでも使えるようになる。アップルはソフト開発のオープン化により、ビジネスをゆるぎないものにしようと狙っている。

さらにiPadには、無線LANだけのモデルと、無線LANと3Gネットワーク(7.2MbpsのHSDPA)を使えるモデルの2種類がある。3G通信ではiPhoneと同様、AT&Tと手を結び、プリペイドデータ通信プランを提案している。

もう一つの動きはこれまでの一連の市場の流れから容易に想像がついていたことであるが、半導体メーカーの業績が急速に回復していることがはっきりした。エルピーダは2009年10〜12月期の連結決算では営業利益が304億円と、過去最高の四半期の数字を得た。7〜9月期にようやく8億円の営業黒字にこぎつけたが、その後もDRAMの単価上昇に助けられ、増収増益となった。売り上げは1510億円で、昨年同期の2.4倍という。

東芝も10〜12月期はフラッシュメモリーの単価上昇に救われ、半導体部門は47億円の黒字となった。フラッシュだけなら利益はもっと高いはずだが、他の半導体が足を引っ張っているようだ。富士通も電子デバイス部門が29億円の黒字に転換したと報じられている。NECエレクトロニクスだけはいまだに赤字が続く。ただし、赤字幅は97億円と縮まってはいる。

一方、三井物産が、台湾の電子機器の製造を専門とするEMSメーカーに280億円を出資するというニュースも見逃せない。日本の商社としてというよりも台湾の儲かるEMSメーカーに出資して三井物産のビジネス拡大につなげることが狙いだと見られる。

(2010/02/01)
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