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アンドロイド・スマートフォンが続出する2010年、国内半導体も開発急げ

新年2010年を迎え、スマートフォンを巡る衝撃的な発表が先週あった。グーグルがアンドロイドベースの携帯電話機をネットで直販すると発表した。台湾の携帯電話メーカーHTCがグーグルと共に開発した新型スマートフォン「ネクサスワン」を米国・英国向けにネット通販する。一方、アップルも黙ってはいない。パソコンメーカーのデルもスマートフォンを売り出す。

HTCが発売するAndroidスマートフォン「ネクサスワン」

HTCが発売するAndroidスマートフォン「ネクサスワン」


先週、米国でコンシューマエレクトロニクスショーCESが開催されたが、これに合わせるようにスマートフォンを巡る動きが活発になってきた。台湾HTCのネクサスワンは実は12月にすでに発表されており、ネクサスワンそのもののホームページもある。アンドロイドそのものはOSにLinuxを使いミドルウェアや一部のアプリケーションまでも組み込んでいる一種のプラットフォームともいうべき基本ソフトウエアである。アンドロイドは開発したグーグルが開放している、誰でも使えるオープンなアーキテクチャをとる。携帯通信が基本機能として入っており、スマートフォンあるいはネットと接続できる小型パソコンに向く。

米国でアップルのiPhone通信サービスを提供しているAT&Tまでも、グーグルのアンドロイドおよびパームのWebOSをサポートすると発表した。現在はベライゾンに次ぐ第2位の携帯通信業者の地位を占めるAT&Tは2010年前半までに5機種のスマートフォンを発売すると発表した。この5機種の中にHTCやモトローラのスマートフォンが含まれるという。

パソコンメーカーであり液晶テレビまでも設計販売しているデルもAT&Tと組みアンドロイド型スマートフォンを発売すると発表した。

アップルのiPhoneは一つの国でナンバーワンの通信業者にしかサービスをさせないという方針だった。AT&TがiPhoneサービスを始めた時はまだトップの座にいた。アップルの唯一の例外が日本だった。日本は第3位の通信業者、ソフトバンクが手掛けている。ところが、英国では全ての通信業者がiPhoneのサービスをできるように広げた、とある英国人が語った。iPhoneはこれまでは独特の楽しいユーザーインターフェースを特長としてきたが、アンドロイドが本格的に普及するようになるとその特長が消えてしまう。アンドロイドも同じような楽しいGUIを備えているからだ。

通信業者でさえ、うかうかしていられない。AT&TがiPhoneに加えアンドロイドまで手を広げるのはそういった危機感の表れだ。AT&Tはアップルとの契約が今年の後半に切れてしまうため、もしアップルがAT&T以外の通信業者、つまりベライゾンやスプリントなどの通信業者にもiPhoneサービスを使えるようにするなら、AT&Tの優位性は消えてしまうからアンドロイドを出してくる、と業界筋では見ているようだ。米国ではスプリントがパームのPreとPixiの通信サービスを提供しているが、ベライゾンとも契約するかもしれないという見方もある。

このアンドロイドをスマートフォンに組みこむのに便利なツールの一つがテキサスインスツルメンツ(TI)の提供しているアプリケーションプロセッサOMAP35xであり、メンターグラフィックスが提供しているソフトウエア開発キットである。メンターのツールはアンドロイドを組み込み系全般に拡張しているため、スマートフォンだけではなく小型パソコンの開発も簡単にできるようになる。

迎え撃つアップルは、携帯インターネットの広告の仕組みを開発しているクアトロワイヤレスを買収したことを明らかにした。クアトロは、対象とするオーディエンス(読者や視聴者)にメディアや出版社がリーチしやすくするため、全てのインプレッションを最適化したり、広告出稿、トラッキング、分析したりするためのツールQ Elevationを開発している。

iPhoneだけではなく、アンドロイドベースのスマートフォンが世界で飛躍する年となりそうな2010年は日本の携帯電話機メーカーにとっても通信業者にとっても、本当のガラパゴス化を防ぐための正念場となりそうだ。国内半導体メーカーとしてもアンドロイドベースのSHマイコン、V850をコアとしたアプリケーションプロセッサと、その開発ツールの提供を急がなければならない。

(2010/01/12)
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