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メディアはもはや大きく採り上げなかったルネサスとNECエレの合併契約

先週の半導体関係の最大のトピックスは、NECエレクトロニクスとルネサス テクノロジの合併契約に正式に調印したことだと思うが、ほとんどのメディアは大きく採り上げなかった。この合併は親会社が決めた周知の事実であり、両社の社員は合併に向けた手続きを粛々と進めていることには変わりはないからだ。

記者会見の現場に居合わせたが、経団連の大ホールでの会場の広さに比べるとメディアの参加は少なく、空席が目立った。各メディアの記者たちの中には、この合併のやり方に対して否定的に見る向きが少なくないが、もはや止められないというのが彼らから聞こえてくる声である。だが、実際に合併に関わるさまざまな問題を処理している現場の社員の中には、外野からとやかく言われることに対して却って反発するものもいる。メディアがこの合併に対してもはやあれこれ言うべきことではない。

シャープは投資額のより大きな第10世代の堺工場を稼働させたが、投資負担のリスクを軽減させるためフィリップスと提携し、フィリップスの欧州、南米の工場に液晶パネルを供給する。半導体投資も大きくなりすぎて1社で生産体制を作ることはリスクが大きいが、液晶工場も同じである。堺の液晶コンビナートは数1000億円以上もかかる工場であるが、12月15日の日本経済新聞には韓国サムスンが第8世代の工場に370億円を投資するという記事があった。サムスンは中国に7.5世代のガラス基板を使った工場を新設するようであり、シャープに比べるとリスクの少ない投資額で競争しているともいえよう。シャープのコストダウンおよび利益の捻出はグローバル競争でどのように現れてくるのであろうか。

一方、何げないニュースであるが、グーグルが基本ソフトウエアプラットフォームであるアンドロイド(OSはリナックス)を用いたスマートフォンの開発を進めていると14日の日経新聞が報道した。これはグーグルという世界的な企業が台湾のHTCへアンドロイド端末を発注しているのである。グーグルは米国の企業ではなくもはやグローバルな企業という位置付けに相当する。日経によると、グーグルがこのアンドロイドフォンをネット端末で販売し、利用者が個別に通信会社と契約するという手法を採るという。こうなると、携帯電話メーカーでもない、通信事業者でもない、インターネット企業がスマートフォンを設計し販売するというビジネスが現れた、と見てもよい。すなわち誰でもスマートフォンを作り販売する時代に入ったといえよう。これまでの通信事業者が電話機の全てを支配していた時代が終わりを告げることになる。

トヨタがプラグインハイブリッドを2年後に販売するというニュースが15日の日経に掲載された。プラグインハイブリッド車は電気自動車に近く、ガソリンエンジンをついで、あるいは保険として使う程度にとどめ、電池がなくなると補完して電池ステーションまでガソリンで行くという、電池を多用する自動車である。家庭のプラグから充電できるように設計し、遠出しないクルマの市場を狙う。

最後に、業績不振の日立製作所やソニーが研究開発費の削減を一層強め、4〜5%に抑えることを表明した。一方で、半導体では後工程のディスコ、東京エレクトロンが当初計画よりも開発費を増額するというニュースも12日にあった。

最近メモリーが値上げするという傾向が続く中、エルピーダは財務状況が以前よりも改善されているはずであるが、この先を警戒し、PRAMの開発を中止したというニュースが17日の日刊工業新聞に掲載された。フラッシュよりも安価にすることが難しいことがその理由だ。しかし、PRAMと言いながらRAM用途ではなくむしろROMに近く、フラッシュメモリー的性格のメモリーになりうることが次第に明らかになり、RAM用途では今のところDRAM以外の代替品はあり得ない。MRAMがRAM的性格の最も強いメモリーではあるが、高集積化が難しく不揮発性RAMをどうしても使いたい用途以外には普及は進まないと見るべきではないだろうか。

(2009/12/21)
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