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電気自動車向けリチウムイオン電池を巡る活発な発表合戦

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11月2日の週は、自動車用リチウムイオン2次電池の記事が目白押しだった。日産自動車がフランスのルノー向けに量産するというニュースが11月3日に流れた後、7日には日産・ルノーのチームがフランス政府を巻き込んでリチウムイオン電池開発のための新会社を設立すると報じられた。

2009 人とクルマのテクノロジーに出展された日産のバッテリパック

2009 人とクルマのテクノロジーに出展された日産のバッテリパック


この新会社には日産とNECの共同出資会社オートモーティブエナジーサプライが技術ライセンスを供与するとしており、そのNECとNECトーキンは日産自動車向けに100億円程度投資し、年間10万台分のリチウムイオン電池向けの電極を2010年度中に生産する計画を打ち出した。

韓国勢も負けてはいない。現代自動車グループ傘下の現代モービスとLG化学はリチウムイオン電池のバッテリパックを生産する新会社を2010年初めに設立すると発表した。LG化学がセルを生産、新会社に供給するという。バッテリパックは、セルを直列に並べるだけではなく、セルを1個ずつ制御し、充放電状態を管理するバッテリマネジメントICや保護ICなどを搭載し、リチウムイオン電池を安全に扱えるように制御回路を組み込んだもの。リチウムイオン電池は、セル単体では通常は最終製品として売らない。

電池はモーターと並んで電気自動車の心臓にあたるため、自動車メーカー各社は独自仕様の電池を開発する傾向にあった。かつての液晶メーカーが画面サイズを標準化しなかったように。11月5日の日本経済新聞によると、経済産業省が開催した「次世代自動車戦略研究会」において、電気自動車やハイブリッド自動車用の電池について標準化を検討するという意見が出たと報じている。国際競争力を高めるためだとしているが、標準化するのであれば、何を標準化せずにIPとしてブラックボックス化すべきかをしっかり各社が握っておく必要がある。その上で、何を標準化すべきかを議論すべきであろう。

液晶テレビは単純な画面の大きさを標準化したくないと日本のメーカーは固執したために、逆に32インチ、42インチなどと標準サイズを作りコストダウンに成功した台湾韓国勢にじりじり負けていくという失態を演じた。画面サイズなど単純なパラメータはむしろ標準化すべきであった。この教訓を生かし、標準化するのであれば、何を標準化し、何をブラックボックス化すべきかを社内でしっかり議論しておくことが重要だ。

もう一つ、残しておきたい話題は、メモリー価格が戻ってきて、メモリーメーカーの財務が健全になる方向に向かってきたことだ。エルピーダメモリの2009年度第2四半期の決算が発表され、経常損益は55億円の赤字だが、営業損益が8億円の黒字に転換した。売上は959億円だからほとんどプラスマイナスゼロに近いが、前四半期の営業損失が423億円だったことを考慮すると、回復に向かっていると言える。

1GビットDDR2メモリー価格が1ドル前後だった1〜7月からじわじわ減産効果が表れ、価格が値上がりし2.5ドル程度まで上昇した。6月頃からユーザーの在庫が減り続け、10月には0.9カ月にまで減少した。同社CEOの坂本幸雄氏によると、8月くらいから良くなってきており、第3および第4四半期はプラス成長になるかもしれない、と期待している。

11月7日の日経新聞はNANDフラッシュも値上がりが継続していると伝えた。2009年1月の16Gビットの多値品が2.5ドル前後を推移したのに対して、5ドル程度にまで値上がりしている。東芝の財務状況はまだ発表されていないが、フラッシュメモリー部門はおそらく黒字に転換した可能性は高い。

7〜9月の出荷が前年同期比4%増と好調なのがiPhoneなどのスマートフォンだ。米国の市場調査会社IDCが発表したスマートフォンの出荷台数は4330万台となり、従来の携帯電話はまだ昨年並みに達していないことと好対照である。1位はノキアの37.9%、2位はブラックベリーを出しているRIM(リサーチインモーション)の19.0%、3位がアップルの17.1%であり、4位以下はぐっと落ちて台湾HTCの5.6%と続く。これら4社のシェアは全て昨年よりも伸ばしており、寡占化が進んでいることを示している。

(2009/11/10)

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