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4〜6月期の業績改善発表が相次ぐ、景気回復は着実に、しかしゆっくりと

8月10日の週は、いわゆるお盆休みにかかる週であり、ニュースとしては夏枯れ状態である。その中を見渡してみると、このところの景気の底からの脱出がはっきりしている様子がいろいろな指数や企業の改善状況などを通じて見えてきている。

市場調査会社のアイサプライ・ジャパンがまとめた6月のDGレシオは1.17と先月より0.01ポイント低下したものの、依然好調を維持していることを示している。DGレシオは半導体と電子部品の販売額に対する受注額の比である。好調の一因は中国における薄型テレビなど家電の需要拡大が受注増につながったとしている。

これを受ける形で、液晶パネル用の部材メーカーも回復基調にある、と8月14日付けの日刊工業新聞は伝えている。液晶用偏光板保護フィルムの2強メーカーの富士フィルムとコニカミノルタの出荷数量が戻ってきた。富士フィルムは09年4〜6月期に世界不況に入る前の9割まで数量が回復、コニカミノルタも前年同期レベルにまで回復した。カラーフィルタでも、大手の凸版印刷が4〜6月期は前四半期に対して売上高が倍増した。液晶パネル製造用のフォトマスクではHOYAの4〜6月期は前四半期に対して19.5%増加した。

8月15日付け日本経済新聞は、液晶用ガラス大手の旭硝子の4〜6月期の営業利益が、前四半期の59億円の赤字から一転、134億円の黒字になったと報じている。中国における液晶テレビの需要増を受け、主力の液晶用ガラスが急回復したためとしている。同社電子・ディスプレー事業の営業利益は293億円と前四半期の2.4倍にもなった。液晶用を主力とする日本電気硝子の営業利益も前期の4億円から4〜6月期は103億円に増加した。

JEITAが発表した携帯電話・PHS端末メーカーの出荷台数はまだ前年並みに回復していないが、下落率は着実に改善している。1〜3月累計は前年同期比44%減だったが、4〜6月累計では28.6%減に、そして直近の6月単月では24.2%減の396万5000台であった。メーカー各社の4〜6月の出荷台数を対前四半期でみると、シャープは37.6%増の274万台、パナソニックモバイルコミュニケーションズは12.9%増の184万台へと回復の兆しを示している。

8月14日付けの日経によるとパソコン用のDRAM価格も7月後半分は対前期比で8%高の単価1.28ドルで決着した。1月につけた過去最安値よりは88%高い。低価格パソコンの販売が好調だとしている。スポット価格も強い。5月下旬から7月下旬までは1〜1.2ドルだったが、8月13日時点では1.45ドルまで上昇した。

半導体アセンブリメーカーの新光電気工業は2009年度(2010年3月期)の設備投資額を期初予定よりも26%増やし171億円とする計画だという。増額分の35億円の大半を多層化に伴う工程の増加や微細加工装置の購入に充てるとしている。コンピュータ用CPUの半導体パッケージが伸びるとみている。

半導体製造装置メーカー各社の受注額も4〜6月に底入れしたと日経は伝えている。4〜6月期は前四半期と比べ各社軒並み、増加している。東京エレクトロンの液晶用も含めた連結の受注高は4〜6月期に前四半期に対して86%増の501億円と、期初の予想(30〜50%)を上回った。ただし、半導体メーカーの生産ラインは増強とまではいかない。東京エレクトロンの7〜9月期の見通しは前四半期比で横ばい、アドバンテストは同14%減と予想する。

これまで、生産拠点の統廃合することでコストダウンするという話題が多かったが、8月11日の日刊工業新聞の報道では、ルネサスの小諸工場でRFIDタグを導入することで年間8000万円のコストダウンを見込むと伝えている。まず携帯電話用パワーアンプの後工程に導入する。ロット番号や品種をRFIDで読み取ることで記帳作業の9割以上を削減できるとしている。後工程にITを積極的に活用することで人間の手間を減らすことができる。

(2009/08/17)
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