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発表相次ぐ電気自動車、期待される2〜3倍ビッグな半導体デバイス市場

7月最後の週におけるニュースを見ていたときに8月2日に日産自動車が2010年度までに発売、量産するといわれている電気自動車「リーフ」発表のニュースが飛び込んできた。加えて、サムスンとLGの提携というニュースも韓国では実は大事件だ。今回はこの二つのニュースを中心に、それ以外のニュースも交えて解説する。

日産自動車が8月2日に発表した電気自動車「リーフ」

日産自動車が8月2日に発表した電気自動車「リーフ」


先週末の7月31日にタイヤメーカーのブリジストンがSiCウェーハを2010年から量産するというニュースがあった。SiCやGaNは半導体のエネルギーバンドギャップが広いという性質を利用して、高温動作が可能、耐圧も高い、という特長がある。シリコンではできない「光る」という性質もある。LEDはこの性質を利用する。月産能力500枚前後(直径2〜3インチ)でスタートし、4インチへと広げていく。

SiCやGaNに過剰な期待をするアナリストや業界人がいるが、主流はあくまでもシリコンであることを忘れてはいけない。SiCやGaNはシリコンではできない性質を補うことはビジネスとして成り立つが、シリコンの市場を全部食うと考えてはいけない。利点はあるが欠点も多いからだ。ではどのような市場か。LEDがまず第一、次にパワー半導体。ただし、パワー半導体は今のところ、ショットキーバリヤダイオードに限られる。MOSFET、JFETなどに取り組む例もあるが、難題が山積している。IGBTは原理的にバイポーラ動作をさせるため大きなバンドギャップが逆に欠点となり、順方向電圧が高く、その分の損失は大きい。

日産自動車の「リーフ」は、5人乗りの普通乗用車タイプの電気自動車だ。先月末に納車を始めるといわれていた三菱自動車の「アイミーブ」や富士重工業の「スバルプラグインステラ」は4人乗りの軽自動車タイプの電気自動車であり、しかもまだ量産とはいかない。「ステラ」は2009年度に170台程度で生産し、官公庁を中心に納める計画である。これに対して日産の「リーフ」は、モーター性能が三菱・富士2社のほぼ2倍、リチウムイオン電池の容量がほぼ1.5倍と能力をあげている。そして、2010年度までに量産を始める。

電気自動車では半導体の搭載される量が内燃エンジン自動車の2〜3倍はありそうだ。ハイブリッドカーでさえ、内燃エンジン自動車の1.5〜2倍の半導体を使う。電気自動車ではエネルギー残量を知るためのシステム、さらにエネルギー残量に応じた到達可能エリアや充電ステーションの場所などを表示するシステム、リチウムイオン電池を直列接続するため1個1個安定にフィードバックして動かすシステム、など特有の半導体市場がある。さらに、今回発表された電気自動車に共通することだが、LEDをテールランプだけではなくフロントランプにも使っている。消費電力を減らしてバッテリーの動作期間をできるだけ長くするためだ。すなわちシステムの消費電力を下げるための半導体チップは狙い目になる。

モーター駆動回路はパワー半導体が主体だが、それ以外のECU(電子制御ユニット)はほとんどがシリコンの出番となる。市場は10兆円単位の規模になる。自動車のどこに使うICを設計すればいいのか、マーケティングをしっかり行えば大きなビジネスをとれる。

サムスンとLGの提携はこの先どうなるか

韓国サムスンとLGは昨年、LCDパネルの製造装置の共同開発に着手し提携しているが、半導体チップでも提携する。韓国ではお互い強いライバル意識を持ったメーカー同士の提携だけに、競争と協力という枠組みが韓国でも出来つつあることは画期的だ。

1990年代初めに韓国を訪れた時はお互いライバルむき出しの様子が読み取れた。サムスンは親日的、LGは反日的であった。サムスンは日本語でインタビュー、LGは英語でインタビューだった。サムスンが日本の半導体製造装置を導入していることに対して、あるLGのマネジャーは日本に魂を売る売国奴、という言い方をサムスンに向けた。一方で、「良いものは良いという客観的な見方をしないから、LGはサムスンに負けた」、という業界人もいた。

今回の提携は、LGがデジタル放送用のLSIチップを開発し、サムスンがファウンドリとしてそれを製造するというもの。LGはファブレスと共同で設計するとしているが、このようにアライアンスを組み、餅は餅屋で協力することこそ、生き残りの重要なビジネス戦略になっている。サムスンとLGの提携がうまくいくと日本企業の参考になる。

国内半導体メーカーの生産ラインの稼働が高まっている。ルネサスや東芝は夏休みを返上して操業を続けると報道されている。NANDフラッシュの需給バランスが改善し価格が上昇してきたため、ラインはフル稼働に近づいた。

ファウンドリビジネスでは、新参の米GlobalFoudriesが欧州STマイクロと40nm低消費電力プロセスの製品を作る契約を結んだ。AMDからスピンオフしたGlobalFoundriesは、これまでAMDがユーザーだったが、AMD以外のユーザーを早くも勝ち取ったことになる。


(2009/08/03)

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