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4〜6月決算、株価上昇傾向、資金調達額などから見えてくる着実なIT経済の回復

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7月19日の週のニュースは、世界経済、特にIT経済が回復してきたことを伝えている。株式市場、資金調達額、日本政府支援策の効果が見えてきたこと、など着実な経済回復に向けた動きがはっきり見えたといえる週であった。今回の世界同時不況は各国が協調して対策に乗り出したところが1929年世界大恐慌との決定的な違いだ。100年に一度の不況とグリーンスパン元FRB委員長が表していたが、わずか2年くらいで回復しそうだ。

米ハイテク企業の4〜6月期決算が相次いで市場の予想を上回ったとのことで、企業の業績への期待が膨らんできたと言える。日本経済新聞では、7月10日から23日までに世界の株価がどれだけ上昇したかについて一覧表を作っている。最も上昇率の高い市場は、ロシアの17%を筆頭にドイツの15%、インドとアルゼンチンの14%、イタリアとフランス、香港の13%、米国とスペインの10%へと続く。日本市場はまだ7%しかない。

前ドイツ証券副会長で現在、武者リサーチを運営しているアナリストの武者陵司氏が本日、発行した「武者リサーチコメンタリー」によると、2009年1月を1とする株価は3月に底を打った後、着実に上昇傾向になる。


株価トレンド(出典:武者リサーチ、Datastream)

出典:武者リサーチ、Datastream


それを反映するかのように、アップルやグーグルは、利益が前年同期比で2ケタ増という好成績を残した。インテルは売り上げが前年同期比で15%減ではあるものの、ネットブックに使われるAtomプロセッサは前期比65%増と伸ばした。サムスン電子は売上高が前年同期比でも12%増となる32兆5100億ウォンとなり、営業利益は2期連続赤字から2兆5200億ウォン(約1900億円)を計上した。LG電子も4〜6月期は売上は前年比13%増の18兆6600億ウォン、営業利益は1兆4100億ウォン(約1050億円)と黒字額を伸ばした。2008年10〜12月期は赤字だった。

一方で、急速な時代の変化についていけないマイクロソフトやAMD、ノキア、ヤフーなどは前年同期比でマイナスからまだ脱却できないままでいる。

企業が債券や株式の発行やシンジケートローンによる1〜6月の資金調達額は、2008年下半期の約3兆ドルから1兆6000億ドル増え、4兆6300億ドルになったと、米国調査会社のレポートから引用、報じた。米国のモルガン・スタンレーなどの金融機関が大幅な増資を行い公的資金の返済に踏み切ったことなども背景にある。本格的な回復とは言えないものの、回復基調にはあるといえそうだ。

国内では、政府の景気浮揚策が効果を表し始めた。JEITAが22日に発表した民生用電子機器の6月の国内出荷実績が5カ月ぶりに前年同月比を2.7%上回り1790億円となった。政府の「エコポイント制度」が奏功したと見られている。特に薄型テレビの販売台数が前年同月比で28.5%増の108万7000台に達した。高速道路の自動料金収受システム(ETC)割引に欠かせないETC機器が売れているという。ETC搭載車は6月時点で2500万台を突破した。主要カー用品店では3月のピーク時では前年比で数倍もの販売台数を記録した。これを受けて、ルネサスはETC用のマイコンが4月に前月比で2倍増え、40万個/月を記録、9月までに月産60万個へと増産する計画だとしている。

一方、企業運営のセーフティネットともいうべき、官民ファンド「産業革新機構」が905億円の資本金で動き出す。この機構は、ベンチャーなどの出資金に加え、金融機関からの借り入れに対して8000億円までの政府保証を付けられる。905億円の資本金のうち、政府出資が820億円、民間企業16社が85億円出資する。

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