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電気自動車に近いハイブリッド中心のカーエレは半導体には大きなビジネスチャンス

7月13日の週は、半導体業界においてビッグニュースというべきものはなかった。ただ、半導体の応用という点では自動車産業のハイブリッドカーへのシフトが顕著に表れたこと、ノートパソコン市場でいわゆるネットブックやスマートブックと呼ばれる超小型パソコンの売れ行きが好調であることがはっきりしたことを中心にとり上げ、最後にスーパーコンピュータ開発に富士通のみが参加することについて触れる。

ハイブリッドカーへの急速なシフトは、ハイブリッドカーで先行するトヨタ自動車がハイブリッドの基幹装置をマツダに供給する方向で協議している、と日本経済新聞が報道した。自動車産業は半導体産業以上に世界的な再編が進められている。アメリカの自動車メーカーと日本の半導体メーカーを似せて議論する人も現れているが、そのアナロジーはともかく、ハイブリッドカーや近未来の電気自動車を中心として産業再編が始まっている。

例えばプラグインハイブリッドカーは、家庭用電気からバッテリーを充電できるクルマであり、電気自動車への懸け橋となる。ここに使われるハイブリッド技術をしっかり確立しておけばその先の電気自動車への移行は楽になる。これまでハイブリッドカーはガソリン車から電気自動車へのつなぎ、と位置付ける企業もあったが、ハイブリッド技術はつなぎではなく、電気がメインのハイブリッドカーは電気自動車そのものに近い存在になる。ホンダが「インサイト」を発売、日産自動車もハイブリッドカーを開発している。

ハイブリッドカーの基幹装置とはモーター、電池とECU(電子制御装置)である。半導体産業にもっとも重要なのはこのECUであり、ECUは半導体の塊になっている。半導体メーカーにとっては大きなビジネスチャンスがこのECUにある。モーター制御、電池安定動作制御、モーター駆動回路、パワーマネジメント、マイコンや車内ネットワークとのインターフェース、それらを実現するソフトウエアなど、ECUの役割は大きい。コストに厳しい自動車応用では、いかに少ないソフトウエア行数でプロセッサを動かすか、標準インターフェースの活用、IPコアやICチップの再利用、など賢いソフトウエアが重要な鍵を握る。

加えて、ハイブリッドカー技術ではモーター制御や進角制御など、モーターの回転に合わせた微妙な精密制御が求められ、そのためにPWM(パルス幅変調)やデジタルあるいはアナログでいかに精密なフィードバック制御回路が効率や性能の向上に重要となる。いずれにしてもアナログ回路の出来不出来や、ソフトウエア技術がクルマの性能を決める。その意味で、マイコン開発に力を注いできたルネサスやNECエレは有利な立場にある。

さらに電圧の低いニッケル水素電池やリチウムイオンのセルは直列接続が当たり前であることから、電池1個1個の制御やツェナーダイオード、オペアンプなどのアナログ回路やパワーマネジメント回路も大きな市場だといえる。ここはアナログ技術者の出番であるが、効率、簡単な回路、などの新しいアーキテクチャを生み出す力が求められている。

パソコンの出荷台数は落ち込み少ない

米国市場調査会社のIDCが発表した4〜6月期のパソコンの出荷台数がまとまった。3四半期連続の前年同期割れではあるが、その比はわずか3.1%減の6629万台。6.3%減という当初の予想を上回り、個人向けのネットブックなどの超小型低価格パソコンが予想以上の検討をした。なかでも台湾のエイサーは出荷台数において2位のデルにわずか1ポイント差の12.7%にまで追い上げた。

日経新聞はさらに翌日も超小型低価格パソコンの動きを伝え、エイサーに加え、アサステックも出荷台数が対前年20%を超える伸びを見ているとしている。先週も伝えたが、超小型パソコンはOSがアンドロイド、リナックス、クロムなどが使われるようになっており、脱Windowsの動きが大きい。

スーパーコンは市販技術の組み合わせで

NECと日立製作所がスーパーコンピュータ市場から手を引いたことで富士通1社が残った。文部科学省などの国家プロジェクトに参加するのは富士通のみになった。スーパーコンピュータはコンピュータの最高峰であることは今でも間違いないのではあるが、マーケットはさほど大きくはない。技術そのものも変わってきている。プロセッサを独自に開発するのではなく、プロセッサには市販のデバイスを使い、接続バスとして高速インターフェースを使って標準化し、できるだけ市販デバイスでも競争できる性能は出せるようになっている。

富士通はプロセッサとしてSPARCチップを持っており、これをマルチコア、クワッドコア化することで消費電力をさほど上げずに性能を上げている。クレイなどのメーカーは市販のAMDのクワッドコアOpteronプロセッサを使い、高速のHyperTransportインターフェースでデータのやり取りをし、超並列動作によって性能を上げている。独自のプロセッサを開発するよりも市販のプロセッサを使ってデータのボトルネックを解消する方法の方が、システム全体の低コスト・高性能が得られる。

富士通が今回日本原子力研究開発機構から受注したスーパーコンは、PCサーバーの超並列アーキテクチャを使いながら演算性能は181.6TFLOPS(テラフロップス)と高い。PCサーバーは富士通製のSPARCチップを使っており、サンマイクロシステムズにも納めている、いわば市販のプロセッサをベースにしたPCサーバーといえる。

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