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インテルとノキアの提携にみる、半導体メーカーをより強くする方法

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先週におけるニュースとして取り上げたいのは、インテルとノキアの提携、である。半導体メーカートップのインテルと、携帯電話メーカートップのノキアが一緒に組み、将来の小型携帯機器を作ろうとしている。違う分野の強いもの同士が組む、という将来の勝ちを意識した提携である。インテルはもはやパソコンだけのプロセッサチップの会社では生き残れないことをよく知っている。別の話題はエルピーダへのリスクである。

今回、23日の海外からのニュースレターでこの提携話を知ったのだが、日経は24日の夕刊ですぐ報道した。ブルームバーグによると、インテルはこの提携の電話記者会見を開くと述べたあと、インテルの株は17セント上がり15.85ドルになったと報じている。インテルのこの前向きの提携は企業価値を上げた訳だ。この提携を通じ、インテルは携帯電話市場に本格参入できる画期的な出来事だと位置づけている。

将来の半導体市場がやはり携帯と携帯通信技術、すなわちワイヤレス技術を中心とした通信技術であることにはどのメーカーも異論はないようだ。インテルは最近ワイヤレス技術の基本の一つとなるRF技術について極めて高い関心を寄せている。昨年訪問したDAC(Design Automation Conference)でもインテルのRFセッションにおける発表が多く、パネルディスカッションでもインテルが壇上に上ることもあった。事実、インテルのワイヤレス分野への参入を予測するエンジニアはいた。

今回の提携において、OSにはリナックスを使うことを表明している。パソコンではマイクロソフトと長い間提携してきたが、今後のスマートブックはリナックスのようだ。ただし、ノキアは携帯電話用にはシンビアンOSを使うことをコミットしている。リナックスを使ってミドルウエアやアプリケーションを組み込むためウインドリバーを買収したのかもしれない。ウインドリバーはリアルタイムOSだけではなく、リナックスにも最近は力を入れているからだ。

半導体メーカーが通信機器メーカーと提携する動きはすでにある。STマイクロエレクトロニクスがスェーデンの通信機器メーカー、エリクソンと合弁会社、STエリクソンを設立したが、その成果の第一歩として、中国独自の3G規格TDA-CDMA方式の携帯電話キャリヤであるチャイナモバイルへ食い込むことに成功した

もう一つの話題にも触れる。6月20日の日経新聞に「エルピーダ支援2000億円」という記事が掲載され、日本政策銀行から出資300億円、融資100億円、間もなく発足する産業革新機構からも数百億円規模の出資、その他国際協力銀行やメガバンクからの融資などで3年間にわたり合計2000億円を調達する旨が伝えられている。この記事が掲載された20日土曜日の朝8時40分に、エルピーダの広報室から「当社から発表したものではありません」というプレスリリースが流れてきた。

新聞社がエルピーダの動きをすっぱ抜くたびに毎度、このような言い訳じみたプレスリリースをエルピーダは出してくる。どこから発表されようが記事を受け取る側はどうでもよく、事実かどうかだけ知りたい。このプレスリリースが事実ではないとすれば「これは事実ではない」と発表するはずだから、今回の出資・融資の話はほぼ事実に違いない。エルピーダは自己責任を回避し言い訳だけが得意な「大企業病・官僚病」に侵されているのかもしれない。

しかもDRAM製品の将来はかつてほど明るくはない。市場はパソコンや携帯電話に支えられているため、高集積度はもはやさほど要らない。アドレス空間4GBの限界が存在する以上、32ビットプロセッサにそれ以上高集積のRAMは必要ない。DRAMは重要な産業ではあるが、昔ほどの重要性は少なくなっている。大量のビット容量が必要とされたRAMという使い方に変化が見られるようになってきた以上、DRAMへの過度の投資は危険を伴う。それも大企業病にかかっている患者を救うためのリスクは大きいかもしれない。

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